中小企業だからできる健康経営の取り組み。推進するうえでの課題やポイントとは

中小企業だからできる健康経営の取り組み。推進するうえでの課題やポイントとは


少子化の進行によって生産年齢人口の減少が進むなか、働き手を確保することは企業経営に直結する重要な課題の一つとなっています。なかでも中小企業においては、事業者の約7割が慢性的な人手不足の課題を抱えています。

心身の不調を防ぎ、生き生きと長く働き続けてもらうためには、健康経営®を通じて従業員の健康保持・増進に取り組むことが求められます。

この記事では、中小企業が健康経営に取り組む重要性やメリット、課題、取り組みの始め方、参考にしたい事例について解説します。

なお、健康経営に関する資料はこちらからご確認ください。

  健康経営お役立ち資料 ルネサンスならではの健康ソリューションに関する詳しい資料は当ページからダウンロードいただけます。スポーツ事業に長年従事して培ったノウハウとスキルを活かし、企業の健康経営を支援するさまざまな健康ソリューションを提供します。 株式会社ルネサンス

※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。


目次[非表示]

  1. 1.中小企業が健康経営に取り組む重要性
  2. 2.中小企業が健康経営に取り組むメリット
  3. 3.中小企業における健康経営の現状と課題
  4. 4.中小企業が実施したい!健康経営の取り組み例
    1. 4.1.①健康施策を通じた企業理念の実現
    2. 4.2.②早期の悩み解決による離職の防止
    3. 4.3.③従業員ファーストの職場づくり
    4. 4.4.④コラボヘルスの実施
  5. 5.中小企業の健康経営の始め方
  6. 6.中小企業の健康経営に役立つルネサンスの支援サービス
  7. 7.まとめ


中小企業が健康経営に取り組む重要性

中小企業の深刻な人手不足が進むなかで、従業員への健康投資を行うことは持続的な経営基盤を整えるうえで重要といえます。

近年、少子高齢化によって日本の総人口は減少の一途を辿っており、生産年齢人口の減少とともに、働き手の高齢化比率も高まってきています。


▼人口減少の進展

人口減少の進展

画像引用元:厚生労働省『中小企業における従業員の健康増進に関する現状と課題


中小企業においても、経営上の問題として「人材の量・質の不足」が上位に挙げられています。


▼中小企業における経営上の問題(%)

中小企業における経営上の問題(%)

画像引用元:厚生労働省『中小・小規模事業者の経営課題と健康増進への活動及び「一般健康診断」の項目に関する考え


人材の質が不足している企業は48.4%、量が不足している企業は39.2%となっており、人材の確保・定着化への対応が急務となっています。

また、中小企業では慢性的な人手不足に加えて、高齢者や女性就業者が増加している傾向が見られます。


▼高齢者・女性就業者の推移

高齢者・女性就業者の推移

画像引用元:厚生労働省『中小企業における従業員の健康増進に関する現状と課題


2022年における高齢就業者(65歳以上)の人口は約912万人、女性就業者(15~64歳)の人口は約3,024万人となり、いずれも過去最高を記録しました。

これらの状況を踏まえると、現役世代の従業員に対する健康投資のほか、今後増加する高年齢従業員や女性特有の健康問題への対応についてもこれまで以上に重要となると考えられます。


出典:厚生労働省『中小企業における従業員の健康増進に関する現状と課題』『中小・小規模事業者の経営課題と健康増進への活動及び「一般健康診断」の項目に関する考え



中小企業が健康経営に取り組むメリット

経営戦略の一環として従業員への健康投資を行うことは、組織の活性化をもたらし、中小企業の業績向上や価値向上に結びつくと考えられます。


▼メリット

  • 企業イメージの向上
  • 自治体・金融機関によるインセンティブの提供
  • 優秀な人材の確保・人材定着率の向上
  • 生産性の向上 など


▼健康経営で期待できる効果

健康経営で期待できる効果

画像引用元:経済産業省『健康経営の推進について


従業員の健康づくりは、人という資源を資本として考え、企業にとって将来的な価値を生み出すための投資を行うことと意味づけられます。

健康経営を通じて積極的な人的質本投資を行うことで、企業イメージが向上して消費者や投資家などからの信頼を確保しやすくなります。自治体や金融機関からも、社会的な評価が高い企業としてさまざまなインセンティブを受けることが可能です。

また、心身ともに健康で働ける職場環境を整備することは、採用ブランディングにも効果的に働きます。「従業員を大切にする企業」として認知されると、人材の確保や定着を促進できると期待できます。

さらに、心身の健康保持・増進は、仕事のパフォーマンスにも影響します。疾病の予防や健康的な働き方を促進することにより、仕事に対する意欲・活力が生まれてパフォーマンスの向上、ひいては生産性の向上につながると考えられます。


出典:経済産業省『健康経営の推進について』『健康経営オフィスレポート



中小企業における健康経営の現状と課題

健康経営に取り組む中小企業は、近年急速に拡大しています。


▼健康経営優良法人認定制度の申請数(中小規模法人部門)

健康経営優良法人認定制度の申請数(中小規模法人部門)

画像引用元:経済産業省『第1回健康経営推進検討会事務局資料②(今年度調査等の状況報告と今後の方向性について)


2016年度に397法人だった中小規模法人部門の健康経営優良法人認定制度の認定申請数は、2024年度には2万280法人に増加しており、社会への浸透が進んでいることが分かります。

一方で、予算や人員のリソースが不足していることが原因で健康経営の推進に取り組めていない中小企業も少なくありません。


▼中小企業における健康経営の課題

  • 予算が限られており、健康施策への十分な投資が難しい
  • 人手不足のために専属の担当者を配置できない
  • 業務に忙しく企画の策定やフォローアップの負担が大きい など


リソースが限られやすい中小企業が健康経営を推進するには、少ない予算でもアイデアレベルで実施できる施策を考えることや、支援事業者と連携して効率的に取り組むことが重要です。 

なお、近年では事業者と協会けんぽや健康保険組合などの保険者が連携して、加入者の健康づくりを実施する“コラボヘルス”が推進されています。保険者に蓄積された健診データ・レセプトデータを健康経営に活用することで効率的・効果的な健康づくりを行えます。

※優良な健康経営に取り組む法人を顕彰する制度。


出典:経済産業省『第1回健康経営推進検討会事務局資料②(今年度調査等の状況報告と今後の方向性について)』/厚生労働省『コラボヘルスガイドライン



中小企業が実施したい!健康経営の取り組み例

中小企業はリソースが限られるため、健康経営のハードルが高いように思えますが、大企業と比べて経営層との距離が近いことによって生まれる強みもあります。


▼大企業にはない中小企業の強み

  • 顔と名前を把握できる従業員数のため、経営者の声が届きやすい
  • 経営層が従業員の潜在的な健康課題や不調に早く気づきやすい
  • 経営層の理念・ビジョンを共有して職場の一体感をつくりやすい
  • 低予算でもアイデアの工夫で健康経営の施策を実施しやすい(経営層からの声掛けや仲間意識の醸成でイベント参加率を高められる) など


ここからは、『健康経営優良法人2024 中小規模法人部門』において、中小企業ならではの強みが活かされた健康経営の取り組み例を紹介します。


①健康施策を通じた企業理念の実現

企業理念を実現する取り組みの一環として健康施策を実施した事例です。


▼概要

業種
従業員数
生活関連サービス業
6人


【目的】

健康と関わりの深いサービスを提供する会社では、離職・休職する従業員が増えていました。そのなかで、「従業員こそ健康的なライフスタイルの実現が必要」と考えて健康経営の取り組みが開始されました。

【課題】

「時間の確保が難しい」といった理由で日常的な運動頻度が低下している従業員が多く見られていました。

【取り組み】

社内にトレーニング・ストレッチができるエリアを整備して、日常的な運動を促すとともに、運動の質を高めるための外部講習が実施されました。

【成果】

「運動している」と回答した従業員が前年度の50%から100%になり、週3回以上の運動を実施する従業員は90%になったとのことです。


▼まとめ

“健康でライフスタイルを豊かにする”というビジョンを実現する手段として取り組んだことで、健康経営が浸透しやすい組織風土が形成されました。その結果、従業員の自発的な運動習慣が生まれたと考えられます。


②早期の悩み解決による離職の防止

従業員の悩みを早い段階で解決する仕組みにより、離職の防止につなげた事例です。


▼概要

業種
従業員数
製造業
35人


【目的】

代表交代をきっかけに“人の力”を伸ばすための働きやすい職場環境の整備を目指すこととなり、「長く元気に働ける職場づくりには健康経営が不可欠」との考えのもとで取り組みが開始されました。

【課題】

慢性的な腰痛・肩こりに悩む従業員が多く、体調不良による突発的な欠勤が多く発生していたほか、毎年一人は離職者が出ている状況でした。

【取り組み】

外部講師を招いて心と体による不調の関係性や、元気な体・心づくりに関する研修が月1回ペースで開催されました。外部の専門家チームと連携した体調不良のヒアリング・指導なども実施されました。

【成果】

毎年一人の離職が出ていましたが、取り組みの開始後は離職者が出なくなったとのことです。


▼まとめ

外部の支援事業者や専門家と連携して、従業員の健康管理をチームで行える体制を構築したことで、離職につながる心身の悩みを早い段階で相談・解決できるようになったと考えられます。


③従業員ファーストの職場づくり

従業員の健康を第一に考えた社内制度の導入により、採用活動にもよい影響がもたらされた事例です。


▼概要

業種
従業員数
情報通信業
25人


【目的】

「従業員に体によいものを食べてほしい」という経営者の思いから始めたおにぎりの提供をきっかけに、心身の健康を保つための健康経営が実施されました。

【課題】

社内において健康経営がどこか他人事で重要視されておらず、概念に関する理解にも差が生じていました。

【取り組み】

各部署から1名ずつ選定した担当者によって、健康経営の情報発信や積極的な取り組みが行われました。


  • 健康的なおやつの提供、定期的な姿勢改善、ポスターでの情報共有 
  • 個人が体調や睡眠時間などを記録できるシステムの導入


【成果】

同じ部署の身近な人物を健康経営の担当者に選任したことで、皆で取り組む雰囲気が醸成されたとのことです。また、社外に健康経営の取り組みをアピールしたことにより、採用活動での応募数増加にも成果が見られたようです。


▼まとめ

各部署の担当者が主体となって、勤務中に気軽な健康づくりができる取り組みを行ったことで、健康への意識向上や浸透につながったと考えられます。


④コラボヘルスの実施

保険者と民間企業が連携して、加入企業における健康づくりを推進するコラボヘルスを実施した事例です。ルネサンスでは、複合スポーツクラブの経営で培ったノウハウとスキルを生かして、保険者の保険事業をサポートしています。


▼概要

実施
対象事業所
協会けんぽ宮城支部
職場健康づくり宣言に登録している事業所


【目的】

職場で働く人々の健康づくりを応援したいという思いから、スポーツクラブ『ルネサンス』と契約いただき、対象の事業所に健康づくりに関する出張講座の案内を行いました。

【課題】

健康課題を抱えている事業所では、従業員自身で運動習慣を身につける機会がないことが多くありました。

【取り組み】

専門のスタッフが直接対象の事業所に出向き、健康に関するセミナーやストレッチ・体操などの講座を行いました。また、直接の案内が難しい場合は、オンラインでも開催しました。

【成果】

費用を保険者が負担することから事業所の積極的な参加を促しやすくなり、従業員の健康意識の向上につながったと考えられます。


▼まとめ

協会けんぽとルネサンスが連携した健康づくりの出張講座をきっかけに、加入企業による健康経営を推進する一助になったと考えられます。


なお、ルネサンスでは健康づくりの出張講座だけでなく、保険者の加入事業所を対象としたスポーツクラブの法人契約を受け付けております。従業員とその家族が運動習慣を身につける手助けになると期待できます。



中小企業の健康経営の始め方

「健康経営を何から始めてよいか分からない」という中小企業は、『健康経営優良法人認定制度(中小規模法人部門)』で定められた認定項目を基準にして、自社に必要な施策を実施することが有効です。


▼中小企業による健康経営の始め方

流れ
概要
1.経営層からの情報発信
健康経営に取り組む意義や目的、目標などを社内に発信して共有する
2.健康宣言事業への参加
加入している健康保険組合・全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康宣言事業に参加する
3.健康経営の実践
認定要件(中小規模法人部門)の各項目を確認にして施策を立案・実行する
4.申請
認定制度の申請ページから、指定の申請書と提出書類を期間内に提出する
5.認定
認定要件を満たした場合に、事務局からメールで認定通知が配信される


中小規模法人部門では、健康宣言事業への参加が必須です。認定要件については、大規模法人と中小規模法人で項目が異なります。

認定を受けたあとも各施策の振り返りを行い、さらなる健康維持・増進につなげるための改善策を実施することが大切です。

なお、地域産業保健センターや企業の加入保険者が運用する保険事業サービスでは、中小企業による従業員の健康づくりを支援するさまざま制度があります。


出典:経済産業省『健康経営優良法人認定制度』『健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)認定申請書』/ACTION!健康経営『はじめよう!「健康経営」



中小企業の健康経営に役立つルネサンスの支援サービス

ルネサンス』では、中小企業の健康経営を推進するさまざまな支援サービスを用意しております。


▼健康経営に役立つ支援サービスの例

支援サービス
概要
健康経営優良法人の認定要件の多くの項目にも活用可能!月300本以上の豊富な健康プログラムをオンライン配信で利用できるサービス
法人・健康保険組合の担当者が利用できる、職場の健康づくりのための実践的なプログラム
毎日の食事や運動などのデータを記録して従業員が自己管理を行えるアプリケーション
日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)とルネサンスが共同開発したEラーニングサービス
従業員と家族に運動の実施機会を提供
協会けんぽをはじめとした法人契約により利用可能なケースもあり


定期健康診断の結果をはじめとするデータの見える化や、従業員の健康リテラシーを高めるための健康教育への投資は、外部の支援サービスを活用してでも意義のある取り組みといえます。

ここからは、ルネサンスが健康保険組合による健康経営セミナーの開催をサポートした事例を紹介します。


【導入の背景】

健康保険組合の加入企業さまによる健康経営を推進するために、オンラインセミナーの開催を検討していたものの、何から始めればよいか悩まれていました。

【サポート内容】

加入企業さまの興味・関心が高いと予想される健康経営セミナーの開催を提案して、取り組みレベルに合わせたテーマを3部構成で策定しました。また、リアルタイム配信だけでなく、オンデマンド配信も実施して担当者さまの負担軽減を図りました。

【導入後の効果】

ライブ配信では毎回約40名の担当者さまが参加され、“自分ごと”として健康経営を捉えてもらえる有意義な情報を提供できたとのことです。また、開催後のアンケートでも、次年度への開催に期待の声が得られたと評価をいただきました。


詳しくは、こちらをご確認ください。

  参加者に合わせて『健康経営セミナー』をアレンジ。2ヶ月の準備期間で、多くの参加者から高好評! 大阪薬業健康保険組合様 株式会社ルネサンス



まとめ

この記事では、中小企業の健康経営について以下の内容を解説しました。


  • 中小企業が健康経営に取り組む重要性
  • 中小企業が健康経営に取り組むメリット
  • 健康経営の現状と課題
  • 中小企業における健康経営の取り組み例
  • 中小企業による健康経営の始め方
  • 中小企業の健康経営に役立つルネサンスの支援サービス


慢性的な人手不足の課題を抱える中小企業にとって、健康経営を通じて従業員の健康保持・増進に取り組むことは、持続的な経営を目指すうえで不可欠といえます。

従業員が生き生きと健康で働ける職場環境を整備することで、人材定着化や生産性の向上、採用力の強化などにつながり、組織としての価値向上にも結びつきます。

健康づくりのための企画策定や運用などを行うリソースに課題がある方は、外部の支援事業者と連携して取り組むこともポイントです。

ルネサンス』では、企業の健康経営を推進するさまざまな支援サービスを提供しております。健康教育のプログラムや施策の継続支援、データの見える化に役立つアプリケーションまで、課題・目的に応じてご活用いただけます。

詳しくは、こちらの資料をご確認ください。

  健康経営お役立ち資料 ルネサンスならではの健康ソリューションに関する詳しい資料は当ページからダウンロードいただけます。スポーツ事業に長年従事して培ったノウハウとスキルを活かし、企業の健康経営を支援するさまざまな健康ソリューションを提供します。 株式会社ルネサンス

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