【2025年度】両立支援等助成金6コースを紹介|企業が両立支援を行う意義と合わせて解説

企業が両立支援を行う意義とは。具体的な取り組みや助成金制度について

少子化による人口減少によって多くの企業で人手不足が見られるなか、企業が持続的な成長を続けるには経営の基盤となる従業員の存在が欠かせません。

しかし、心身の病気に対する治療や家族の介護などを理由に、今までどおりの働き方では就業を続けられなくなり、やむを得ず離職してしまう人もいます。

優秀な人材を失うことは、企業にとって大きな損失につながる可能性があります。病気の治療や家族の介護が必要になっても働き続けられる職場を目指すには、企業が両立支援に取り組むことが重要です。

この記事では、企業が両立支援を行う意義や具体的な取り組み、活用できる助成金について解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.企業が両立支援を行う意義
    1. 1.1.人材不足への対策
    2. 1.2.健康経営の推進
  2. 2.企業に求められる両立支援に関する取り組み
    1. 2.1.➀相談窓口の設置
    2. 2.2.②定期的な情報提供
    3. 2.3.③アンケートや個別面談の実施
    4. 2.4.④柔軟な働き方ができる制度の導入
  3. 3.健康経営の助成金
  4. 4.企業が利用できる両立支援等助成金
    1. 4.1.①出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
    2. 4.2.②介護離職防止支援コース
    3. 4.3.③育児休業等支援コース
    4. 4.4.④育休中等業務代替支援コース
    5. 4.5.⑤柔軟な働き方選択制度等支援コース
    6. 4.6.⑥不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース
  5. 5.まとめ

企業が両立支援を行う意義

企業による両立支援は、従業員が自身のキャリアを継続することだけが目的ではありません。人材不足への対策や健康経営®の推進を図るうえでも意義のある取り組みといえます。

※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

健康経営と両立支援の取り組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。



人材不足への対策

少子化によって生産年齢人口の減少が続く日本では、多くの企業が慢性的な人材不足の問題を抱えています。

コロナ禍から経済が立ち直りつつあるなか、人手不足に関連した倒産件数は近年上昇傾向にあり、労働力の確保が深刻な課題となっています。

▼人手不足に関連する倒産件数の推移

人手不足に関連する倒産件数の推移

画像引用元:厚生労働省『人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて

しかし、病気の治療や介護の悩みについて職場で相談できる窓口がなかったり、仕事との両立を支援する制度がなかったりすると、やむを得ず離職を選択してしまう従業員もいると考えられます。

企業が両立支援を行い、病気の治療や家族の介護が必要になっても仕事を続けられる環境を整備することは、離職を防止して優秀な人材の定着化を図るうえで重要な取り組みといえます。

出典:厚生労働省『人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて

健康経営の推進

健康経営とは、経営戦略の一環として従業員の健康づくりに関連する投資を行うことです。従業員の高年齢化が進むなかで、病気の治療や介護と仕事の両立支援に取り組むことは、健康経営に取り組む重要なテーマとなってきています。

▼両立支援が健康経営の推進につながる理由

両立支援の内容
健康経営の推進につながる理由
病気の治療
業務による疾病の悪化や再発を防止する
治療に対する配慮によってワークライフバランスを確保する
就業継続のサポートによる精神的な安心感を醸成する
家族の介護
介護疲れによる心身の不調を防止する
介護に対する不安や悩みの軽減を図る

健康経営を通じて“人”への投資を行い、心身ともに元気に働ける職場環境を実現することは、離職の防止につながるだけでなく、個々のパフォーマンスやエンゲージメントの向上、ひいては企業価値向上に直結すると考えられます。

また、経済産業省からも、経営者に向けて、『仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン』が発信されています。このガイドラインでは、企業がビジネスケアラーの支援に取り組む意義について述べられています。

なお、病気の治療と仕事との両立支援については、健康経営度調査の必須項目にも含まれています。令和6年度における健康経営度調査は、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

健康経営に関する資料も併せてご確認ください

※健康経営の取り組み状況と経年での変化を分析するために、専門家による委員会で実施される調査。健康経営銘柄および健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定時にも活用される。

出典:経済産業省『令和6年度健康経営度調査票』『仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン

企業に求められる両立支援に関する取り組み

企業が両立支援に取り組む際は、相談窓口の設置や情報提供を行うとともに、個別の事情に合わせて働き方を柔軟に選択できる制度を導入することがポイントです。

➀相談窓口の設置

従業員が抱える治療や介護の悩み・不安にいち早く気づけるように、専門家や人事労務担当者が対応する相談窓口を設置して周知することが重要です。

▼両立に関する相談窓口の例

両立の課題
相談窓口
病気の治療
産業医・産業保健スタッフによる相談窓口
外部の専門医と連携した相談窓口
社内カウンセラーの設置 など
家族の介護
ファイナンシャルプランナーによる相談窓口
産業ケアマネジャーの設置 など

職場に相談窓口がないことで、活用できる公的な保険・休業制度や企業の両立支援を知るきっかけを得られない場合もあります。

相談窓口を設けて上司や管理者の声かけによって活用を促すことで、悩みを相談しやすい職場風土の醸成につながります。

また、社内の窓口だけでなく、病気の治療や介護について相談できる自治体または支援機関の窓口・連絡先についても周知しておくことが欠かせません。

②定期的な情報提供

従業員に対して両立に関する定期的な情報提供を行うことも重要です。

▼両立支援に関する情報提供方法

  • 社内研修の実施
  • 社内報やリーフレットの配布
  • 労働組合を通じた周知活動の実施
  • 制度利用に関するガイドブックの作成
  • 社内ポータルサイト内での制度関連のコンテンツやQ&Aの掲載 など

介護は、育児と異なり直面する時期を予測することが困難といえます。問題に直面する前から両立支援制度に関する情報提供を行っておくと、就業を継続する選択肢を提示でき、安易に「辞める」「長期休業を取る」といった判断につながることを防げます。

病気の治療に関する両立支援についても、企業の方針・休業制度・職場復帰の手順などの情報を共有しておくとともに、周囲の理解を深められるように社内全体の意識啓発を行うことが求められます。

なお、介護に関する両立支援については、2022年4月の育児・介護休業法改正において個別の周知・意向確認を行うことが義務づけられています。

出典:厚生労働省『育児・介護休業法 改正ポイントのご案内

③アンケートや個別面談の実施

個々に最適な情報提供や支援策を展開するためには、定期的にアンケートまたは個別面談を実施して、仕事と病気の治療、介護を両立している従業員の実態を把握することが欠かせません。

経済産業省の健康経営推進検討会が掲載している『第1回健康経営推進検討会 事務局資料②』で、2024年度における「従業員の現在・将来的な介護の実施状況、課題等を把握仕事と介護の実態把握の割合」は41.1%と発表されました。昨年度より27.2%向上しているものの、まだ十分な状態とは言えません。

▼仕事と介護の両立支援の実態

仕事と介護の両立支援の実態

画像引用元:経済産業省『第1回健康経営推進検討会 事務局資料②

従業員のニーズや両立支援の課題などを踏まえて個別のフォローを実施したり、支援制度の見直しを行ったりするためにも、実態を把握することが重要です。

▼アンケートまたは個別面談で把握すること

両立の課題
相談窓口
病気の治療
病状や治療の状況・経過
業務や就業形態に関する悩み など
家族の介護
介護に従事している・または可能性のある従業員
介護で直面している課題(心身の不調や働き方など)
介護保険制度や両立支援制度の認知・活用状況 など

出典:経済産業省『第1回健康経営推進検討会 事務局資料②

④柔軟な働き方ができる制度の導入

両立支援を必要とする従業員のニーズに応じて、企業では休業制度・勤務制度の面で支援を行うことが求められます。

両立に関する就業上の課題や生活の悩みなどは従業員によって異なるほか、上司・管理者が十分に問題を把握できていない可能性もあります。画一的な制度だけでなく、個別の相談対応を行って事情を踏まえた働き方に調整する必要があります。

▼両立支援に関する休業制度・勤務制度の例

両立に関する制度面の支援
制度
休業制度
時間単位・半日単位の有給休暇
法定外休業(介護休暇、傷病休暇)
所定労働時間の免除 など
勤務制度
時差出勤制度
短時間勤務制度
在宅勤務制度
復職時の試し出勤制度 など

また、従業員が複雑な手続きを踏まずに利用できるように簡易的な申請方法を準備するとともに、周囲の理解を促すためのフォローを行うことも重要です。

健康経営の助成金

健康経営の推進には、健康診断の強化、メンタルヘルス対策、生活習慣の改善プログラムなど、多様な取り組みが求められます。

しかし、これらの施策を運用するコストや初期投資に負担を感じる企業も少なくありません。

そこで、厚生労働省などが提供している助成金を活用することで、コストを抑えながら従業員の健康促進、働きやすい職場づくりを進めることができ、結果的に企業価値向上にも繋がります。

企業が利用できる両立支援等助成金

両立支援等助成金とは、厚生労働省が育児や介護と仕事を両立するための職場環境づくりを行っている企業を支援するための制度です。助成対象は『中小企業事業主』であり、大企業は対象外とされています。 中小企業の範囲は業種によって異なりますので、事前に確認しておく必要があります。

▼両立支援等助成金における「中小企業の範囲」

産業別

要件(AまたはBに当てはめれば「中小企業」に該当)

A.資本額または出資額
B.常時雇用する労働者数
小売業(飲食業含む)
5千万円以下
50人以下

サービス業

5千万円以下
100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

その他

3億円以下

300人以下

※育休中等業務代替支援コース(手当支援等)のみ、Bの要件は全産業一律300人以下

参考:厚生労働省『両立支援等補助金支援申請の手続きパンフレット(2025年度版)

▼両立支援等助成金

コース名
概要

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金) 

育児休業を取得しやすい雇用環境整備などを行い、男性労働者が育児休業を取得した場合に受給できる助成金

介護離職防止支援コース

介護支援プランの作成による支援や柔軟な就労形態の導入を助成する制度

育児休業等支援コース 

労働者の円滑な育児休業の取得・職場復帰に取り組み、育児休業を取得した場合に受給できる助成金

育休中等業務代替支援コース 

育児休業取得者や短時間勤務者の業務を代わりに行う労働者に手当を支給、または代替要員を新規雇用(または派遣で受入)した場合に受給できる助成金

柔軟な働き方選択制度等支援コース 

柔軟な働き方選択制度等を複数導入した上で、対象労働者が制度を利用した場合に受給できる助成金

不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース 

不妊治療、月経や更年期といった女性の健康課題に対応するための両立支援制度を、利用しやすい環境整備に取り組むとともに労働者の相談に対応し、適した両立支援制度を利用した場合に受給できる助成金

出典:厚生労働省『団体経由産業保健活動推進助成金のご案内』『障害者介助等助成金』『2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内』『仕事と家庭の両立に関する助成金(両立支援等補助金)

助成金の対象となる企業の規模や申請要件、支給額などは制度によって異なるため、事前に確認しておく必要があります。

なお、ルネサンスでは仕事と治療の両立支援の一環として『がん運動支援プラン』を提供しています。このプランでは、がん専門運動士が一人ひとりの状態にあわせて、がん専門運動士がプログラムを作成し、適切な運動指導で悩みの解決の手助けを行います。プランの詳細はこちらからご確認いただけます。

①出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)

育児休業を取得しやすい雇用環境整備などを行い、男性労働者が育児休業を取得した場合に受給できる助成金です。

種別
要件

支援額

第1種
男性の育休取得

対象労働者が子の出生後、8週間以内に育休開始

1人目 20万円
2・3人目 10万円

第2種
男性の育休取得率の上昇等

育休取得率が30%以上UP&50%達成 等

60万円

※第2種は1事業主につき1回限りの支給です。
※第2種申請後の第1種申請および同一年以内に第1種・第2種両方の申請はできません。
※第1種の対象となった同一の育児休業取得者の同一育児休業について、育児休業等支援コース(育休取得時等)との併給はできません。

参考:厚生労働省『2025(令和7)年度両立支援等助成金のご案内

主な要件は厚生労働省『2025(令和7)年度両立支援等助成金のご案内』をご確認ください。

②介護離職防止支援コース

労働者の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組み、労働者が介護休業を取得した場合や、介護両立支援制度を利用した場合などに受給できる助成金です。

種別
要件

支援額

介護休業

対象労働者が介護休業を取得&職場復帰

40万円

介護業率支援制度

A:制度を1つ導入&対象労働者が当該制度を利用

20万円

B:制度を2つ以上導入&対象労働者が該当制度を1つ以上利用

25万円

業務代替支援

(1)新規雇用

介護休業取得者の業務代替要員を新規雇用または派遣で受入

20万円

(2)手当支給等

A:介護休業取得者の業務代替者に手当を支給

5万円

B:介護短時間勤務者の業務代替者に手当を支給

3万円

※支給額は、休業取得/制度利用者1人当たり。①~③それぞれ1事業主5人まで。制度利用期間に応じて増額あり。

参考:厚生労働省『2025(令和7)年度両立支援等助成金のご案内

主な要件は厚生労働省『2025(令和7)年度両立支援等助成金のご案内』をご確認ください。

③育児休業等支援コース

労働者の円滑な育児休業の取得・職場復帰に取り組み、労働者が育児休業を取得した場合に受給できる助成金です。

種別
支給額

育休取得時

30万円

職場復帰時

30万円

※①②とも1事業主2人まで(無期・有期1人ずつ)。

参考:厚生労働省『2025(令和7)年度両立支援等助成金のご案内

主な要件は厚生労働省『2025(令和7)年度両立支援等助成金のご案内』をご確認ください。

④育休中等業務代替支援コース

育児休業取得者や短時間勤務者の業務を代わりに行う労働者に手当を支給、または代替要員を新規雇用(または派遣で受入)した場合に受給できる助成金です。

種別
要件

支援額

手当支給等
(育児休業)

育児休業取得者の業務代替者に手当を支給

最大140万円(A+B)うち最大30万円を先行支給
A.業務体制整備費:最大20万円
B.業務代替手当:最大120万円(手当支給総額の3/4)

手当支給等
(短時間勤務)

短時間勤務者の業務代替者に手当を支給

最大128万円(A+B)うち最大23万円を先行支給
A.業務体制整備費:最大20万円
B.業務代替手当:最大108万円(手当支給総額の3/4)

新規雇用
(育児休業)

育児取得者の業務代替要員を新規雇用または派遣で受入

最大67.5万円(代替期間に応じた額を支給)
〇最短(7日以上14日未満):9万円
〇最長(6か月以上):67.5万円

※①~③全て合わせて1年度10人まで、初回から5年間支給。その他要件あり。

参考:厚生労働省『2025(令和7)年度両立支援等助成金のご案内

主な要件は厚生労働省『2025(令和7)年度両立支援等助成金のご案内』をご確認ください。

⑤柔軟な働き方選択制度等支援コース

柔軟な働き方選択制度等を複数導入した上で、対象労 働者が制度を利用した場合に受給できる助成金です。

支給要件
支給額
制度を2つ以上導入し、対象者が制度利用

20万円

制度を3つ以上導入し、対象者が制度利用

25万円

※1事業主1年度5人まで。

参考:厚生労働省『2025(令和7)年度両立支援等助成金のご案内

主な要件は厚生労働省『2025(令和7)年度両立支援等助成金のご案内』をご確認ください。

⑥不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース

不妊治療、月経(PMS(月経前症候群)含 む。)や更年期といった女性の健康課題に対応するために利用可能な両立支援制度を利用しやすい環境整備に取り組むとともに、不妊治療や女性の健康課題に関する労働者の相談に対応し、それぞれに対応する両立支援制度を労働者が利用した場合に受給できる助成金です。

支援要件
支給額

A

不妊治療のための両立支援制度を5日(回)利用

30万円

B

月経に起因する症状への対応のための支援制度を5日(回)利用

30万円

C

更年期に起因する症状への対応のための支援制度を5日(回)利用

30万円

※それぞれ1事業主当たり1回限り。

参考:厚生労働省『2025(令和7)年度両立支援等助成金のご案内

主な要件は厚生労働省『2025(令和7)年度両立支援等助成金のご案内』をご確認ください。

まとめ

この記事では、両立支援制度について以下の内容を解説しました。

  • 企業が両立支援を行う意義
  • 企業に求められる両立支援に関する取り組み
  • 健康経営の助成金
  • 両立支援等助成金

病気の治療や介護を行う従業員が就業を継続できるように両立支援を行うことは、継続的な人材の確保と健康経営の実現につながります。

日頃から両立支援に関する情報発信を行うとともに、悩み・不安を相談できる窓口を設置したり、仕事を辞めなくて済むような柔軟な働き方を導入したりすることが重要です。また、業務の継続による病気の悪化・再発や、介護疲れによる心身の不調などを予防するには、日頃から健康保持・増進に取り組むことも欠かせません。

ルネサンス』では、従業員の健康づくりに役立つさまざまなサービスを用意しております。健康経営優良法人認定制度の要件に沿ったカリキュラムや、従業員一人ひとりのニーズに合わせたプログラムの提供により健康づくりを支援いたします。

詳しくは、こちらの資料をご確認ください。

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