健康経営®の“指標”を正しく設計する。成果を生むKGI・KPI設計と測定方法

健康経営®(※)を推進するうえで欠かせないのが、企業が目指す成果に応じた“指標設計”です。とりわけ、最終的に到達すべき成果を示す「最終アウトカム指標(KGI:Key Goal Indicator)」と、その成果に至るまでの実行状況を測る「主要プロセス指標(KPI:Key Performance Indicator)」の設計は、健康経営の効果を高めるうえで極めて重要です。
多くの担当者は「どのKPIを設定すべきか」に悩みがちで、“すべての企業に当てはまる万能のKPIリスト”を探してしまいます。しかし、実際にはそのようなリストは存在しません。なぜなら、企業ごとにKGIが異なり、そのゴールが違えば、追うべきKPIも必然的に変わるからです。
この記事では、経済産業省と健康経営優良法人認定事務局が協力して作成した『健康経営ガイドブック』を参考に、自社に合ったKGI・KPIをどう設計するかを解説します。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
目次[非表示]
- 1.健康経営で活用される代表的な評価指標
- 2.指標を評価する測定方法
- 2.1.運動習慣者の割合
- 2.2.睡眠の質・休養満足度
- 2.3.朝食欠食率
- 2.4.アブセンティーズム
- 2.5.プレゼンティーズム
- 2.6.ワーク・エンゲイジメント/従業員エンゲージメント
- 3.指標を定める前に健康経営の目的を考える
- 3.1.KGIとKPIの関係
- 3.2.KGIを立てる2つのアプローチ
- 3.2.1.経営課題起点のアプローチ
- 3.2.2.理想像起点のアプローチ
- 4.『健康経営ガイドブック』が示す戦略マップ
- 5.健康経営の指標設計ステップ
- 6.ルネサンスの事例から学ぶ「KGI×KPI」設計の考え方
- 7.まとめ
健康経営で活用される代表的な評価指標
健康経営の成果を客観的に評価するには、「何を」「どの段階で」測定するのかを整理することが重要です。『健康経営ガイドブック』では、評価指標を次の4つに分類しています。
- インプット指標施策を実施するために投入した資源(人・時間・予算・制度・仕組みなど)を測る指標
- プロセス指標健康経営の施策が、計画どおり実行されているかを測る指標
- アウトプット指標施策の直接的な成果(参加率・利用率・受診率・満足度など)を測る指標
- アウトカム指標施策によって生じた最終的な変化を測る指標
▼代表的な評価指標の例
※評価指標は企業によって異なり、以下は参考例になります。
区分 | 指標例 |
インプット指標 |
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プロセス指標 |
|
アウトプット指標 |
|
アウトカム指標 |
|
経済産業省『健康経営ガイドブック』を基に作成
この四層構造に沿って指標を整理すると、“インプット(資源投入) → プロセス(施策実施) → アウトプット(成果) → アウトカム(行動・状態の変化)”という因果関係が明確になります。
ただし、ここで紹介している指標は“正解リスト”ではありません。自社が目指す目的を定め、その目的を定量化したKGI(アウトカム指標)を設定します。そのうえで、KGIに至る途中のプロセス指標やアウトプット指標をKPIとして選ぶことが重要です。
指標を評価する測定方法
健康経営の指標は、項目ごとに異なる測定方法が存在します。ここでは、代表的な測定方法を例示し、どのように数値化するのかを紹介します。
指標を“客観的な数字”として把握することが、施策の効果検証や経営層への説明に不可欠です。
運動習慣者の割合
厚生労働省の『標準的な健診・保健指導プログラム』では、「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上続けていますか」という設問に対し、「いいえ」と回答した従業員をリスク因子としてカウントします。
この割合を定期的に計測することで、運動施策(ウォーキング企画、ポイント制度など)が行動定着につながっているかを評価できます。運動イベントへの参加者数(アウトプット)を追うだけでなく、“習慣化”という質的な変化(アウトカム)を捉えることが重要です。
睡眠の質・休養満足度
睡眠・休養状況は、ストレスチェックや従業員アンケートで「睡眠で十分な休養が取れていますか」と質問し、「いいえ」と回答した従業員の割合をリスク因子として把握します。
この指標は、残業削減や有給取得促進、メンタルヘルス対策などの施策が、従業員の疲労回復にどれだけ寄与したかを評価するために用いられます。心身の状態に直結するため、生産性やアブセンティーズムとの関連性も高い重要な測定項目です。
朝食欠食率
食生活に関する指標は、従業員アンケートで「朝食を抜くことが週3回以上ありますか」という質問を設け、「はい」と回答した従業員をリスク因子として集計します。
朝食欠食は集中力低下やパフォーマンス低下につながるため、社員食堂での健康メニュー提供や食育施策の効果測定として活用できます。数値の推移を追うことで、食生活改善施策が生活習慣の定着にどの程度影響しているかを検証できます。
アブセンティーズム
アブセンティーズムは、疾病やメンタル不調などによって発生する欠勤・休職を測定する指標です。「健康問題が勤務日数にどれだけ影響したか」を数値化し、企業における労働力損失を把握するために用いられます。
測定には、人事データ(欠勤・休職情報)や従業員アンケートを活用し、欠勤日数・休職期間を基に損失額(人件費・代替要員コストなど)を算出します。
『健康経営ガイドブック』では、主に以下の3つの測定方法が紹介されています。
▼アブセンティーズムの主な測定方法
情報 | 測定方法 |
従業員アンケートによる自己申告 | 「過去1年間に、自分の病気で何日仕事を休んだか」を質問し、従業員が欠勤日数を自己申告する方法。有給休暇内の病欠も把握可能。 |
人事情報(欠勤・休職日数)を使った測定 | 企業の欠勤・休職データを利用して病気による休業を把握する方法。有給休暇内の病欠は含まれず、実態より過小評価になる可能性がある。 |
人事情報(疾病休業者数・日数)に基づく測定 | 「疾病休業開始後、有給休暇を除き暦30日以上の疾病休業者」を人事データから把握する方法。長期休業者の傾向把握に有効。 |
アブセンティーズムの削減は、生産性向上に直結するだけでなく、企業の安定的な事業運営にも不可欠です。
プレゼンティーズム
プレゼンティーズムは、従業員が出勤しているものの、健康問題などによりパフォーマンスが低下している状態を測定する指標です。
測定には主に従業員アンケートを用い、業務遂行度や機能障害の程度を自己評価してスコア化します。
▼プレゼンティーズムの主な測定方法
ツール | 測定方法 |
WHO-HPQ | 過去4週間の自己申告に基づき、理想的なパフォーマンス(100%)に対する実際の業務遂行度を質問し、スコア化する |
SPQ(東大版) | 1問の簡易設問で「体調不良による業務への支障度」を自己評価し数値化する |
WFun | 7つの質問に回答し、健康問題による労働機能障害の程度を7〜35点で評価。21点以上を中程度以上の障害とみなす |
企業は、自社の健康課題や施策目的に合わせて適切なツールを選定し、定期的に測定することで、施策による生産性改善効果を定量的に把握できます。
プレゼンティーズムは「効果が見えづらい」領域だからこそ、数値による可視化が健康経営の成果説明に欠かせません。
ワーク・エンゲイジメント/従業員エンゲージメント
ワーク・エンゲイジメントおよび従業員エンゲージメントは、従業員が仕事や組織に対してどの程度、活力や熱意、愛着などを感じているかを評価する指標です。これらは、生産性向上・離職防止・メンタルヘルス改善など、企業の持続的な成長に密接に関わる重要な評価軸です。
測定は主に従業員アンケートを使用し、心理的状態をスコア化して経年比較を行います。「満足度」とは異なり、自発的な貢献意欲を捉える点が特徴です。
▼ワーク・エンゲイジメント/従業員エンゲージメントの主な測定方法
指標 | 測定方法 |
ワーク・エンゲイジメント(UWES) | 「活力・熱意・没頭」の3尺度を、ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度で評価する |
従業員エンゲージメント | 組織・仕事への思い入れを、多面的なアンケートで測定する |
指標を定める前に健康経営の目的を考える
健康経営の指標設計で陥りやすいのが、KPIを先に決めてしまうことです。しかし、KPIはあくまで“手段”であり、企業のKGI(目的を数値で表した指標)が明確でなければ、施策をどれだけ実施しても本質的な成果には結びつきません。
健康経営を戦略として機能させるには、次のような問いを経営レベルで整理し、その目的に基づいてKPIを設計することが不可欠です。
- なぜ健康経営を進めるのか
- 企業として何を最終的に達成したいのか
KGIとKPIの関係
KGIとKPIは、健康経営の目標達成プロセスのなかで役割が異なります。
▼健康経営におけるKPIとKGI
指標 | 定義 | 代表例 |
KGI | 目的を数値で表した指標 | 離職率の改善、運動習慣者の割合、ストレス改善率 |
KPI | 施策の進捗や効果を可視化する中間指標 | 健康診断の受診率、メンタルヘルス研修の開催数、スポーツイベントの参加率 |
健康経営の指標設計では、同じ指標でも企業によって「KGI」にも「KPI」にもなり得る点が重要です。
例えば「高ストレス者の割合を20%未満に抑制する」という指標は、次のように扱われます。
- メンタルヘルス不調の軽減を最終指標に掲げる企業ではKGIになる
- 生産性向上をKGIとする企業では、その達成に向けたKPIになる
このように、同じ「高ストレス者割合」という指標でも位置づけが変わります。
指標の役割は企業の目的によって変動するため、指標設計では「何を測るか」よりも先に、「なぜ測るのか」を明確にすることが不可欠です。
KGIを立てる2つのアプローチ
KGIを設定するときは、いきなり指標や数字から入るのではなく、まず“会社としてのあるべき状態”を定義することが出発点になります。ここでいう“あるべき状態”とは、健康経営で実現したい目的と目標が、どのような状態になっていれば達成と言えるのかまで具体化することを指します。
健康経営は単独で成立するものではなく、経営方針とつながった取り組みである以上、下記の順番で考え、経営方針に即した目的からKGIを逆算することが重要です。
- 経営方針(会社がどこを目指すか)
- 健康経営の推進方針(健康をどう位置づけるか)
- 目標・KGI(そのために健康面でどんな状態を実現するか)
そのうえで、KGIの立て方には大きく2つの入口があります。ただし入口がどちらであっても最終的にやることは同じで、「あるべき状態」と「現状」のズレを特定し、その差を埋めるためのKGIを置くという考え方になります。
経営課題起点のアプローチ
現在抱えている経営課題の解決をKGIとして設定する方法です。生産性、人材定着、健康関連コストなど、結果が定量で説明しやすい領域で効果を発揮します。
▼アプローチ例
- プレゼンティーズムによる労働損失額を◯%削減する
- 高ストレス職場の割合を50%改善する
このアプローチは、成果が数字で追えるため、投資対効果や経営インパクトを説明しやすい点が強みです。
理想像起点のアプローチ
企業が中長期的に目指す「望ましい組織の姿」から逆算してKGIを設定する方法です。企業理念やビジョンと結びつきやすいため、組織の土台や文化を変えていきたい場合に有効です。
▼アプローチ例
- 理想像:全社員が心身ともに健康で、イキイキと働ける組織を実現する
- KGI例:プレゼンティーズム損失を〇%改善/アブセンティーズム(欠勤日数)を〇%削減
- 理想像:ワーク・エンゲイジメントを高め、イノベーションが生まれる風土をつくる
- KGI例:ワーク・エンゲイジメントスコアを〇点以上にする/従業員エンゲージメント指標を前年差+〇%
- 理想像:心理的安全性の高い職場を構築し、挑戦が促される文化を育てる
- KGI例:心理的安全性尺度を〇%向上/高ストレス職場の割合を〇%改善
理想像は定性的ですが、達成度を判断するためには、上記のように「健康状態・生産性・心理指標」など測定できるKGIへ置き換えて設計します。
『健康経営ガイドブック』が示す戦略マップ
『健康経営ガイドブック』では、健康経営を場当たり的に行わず、因果関係に基づいて整理するための“戦略マップ”が示されています。
戦略マップは、“インプット(資源投入) → プロセス(施策実施) → アウトプット(成果) →アウトカム(行動・状態の変化)”という4段階で構成され、「どの施策がどの成果につながるのか」を見える化できます。
▼戦略マップイメージ

経済産業省『健康経営ガイドブック』を基にルネサンス作成
重要なのは、戦略マップを「施策の整理図」として見るだけでなく、①経営方針 → ②健康経営の推進方針 を踏まえ、③健康経営の目標とKGIを逆算して設計するための思考モデルとして理解することです。
つまり、健康経営の目的やKGIは、企業として目指す方向(経営方針)に即して設定されるべきであり、戦略マップはその因果関係と道筋を可視化する役割を担います。このマップを活用することで、“どのフェーズに課題があるのか”を切り分けることができます。
- 高ストレス者向け施策の参加率が低いのは周知不足ではないか(=アウトプットの課題)
- 運動習慣者は増えているのにプレゼンティーズムが改善しないのはなぜか(=アウトカムの因果)
指標の分類は、この戦略マップの各フェーズに対応しており、両方を組み合わせることで、短期的な施策効果から中長期の経営成果まで一貫して測定できるようになります。
戦略マップに基づく指標設計は、健康経営を単発施策で終わらせず、“企業文化として根付かせる”ための土台となります。
健康経営の指標設計ステップ
健康経営の指標設計は、「何をどの順番で決めるか」を誤ると全体の設計が崩れやすくなります。先にKPIのリストを探すのではなく、企業の目的から逆算し、インプット→プロセス→アウトプット→アウトカムの4層で因果関係をつなぎながら指標を整理していくことが基本です。
なお、KGIは「目的そのもの」ではありません。企業が目指す姿(目的)を数値化した指標がKGIであり、KGIに至るまでの実行状況や途中の変化を測る指標がKPIです。この整理で考えると、指標体系が明確になります。
①経営方針に沿った推進方針・目標とKGIの明確化
まずは、健康経営を通じて何を実現したいのか、推進方針と目的(目指す姿)を明確にします。
健康経営は従業員の健康づくりを「投資」と捉え、経営方針と連動させて戦略的に進める取り組みです。そのため、企業理念や経営課題を踏まえて目的と目標を言語化し、社内で共有します。
目的を数値化した指標がKGIであり、生産性・離職率・エンゲージメント・プレゼンティーズムなどをアウトカム指標に設定します。
▼製造業における経営方針からKGIまでの設定イメージ

画像引用元:経済産業省『健康経営ガイドブック』
例えば、上記の製造業で見ると、経営方針(例:快適な生活環境の実現)をそのままKGIにせず、「従業員が健康で安心して力を発揮できる職場づくり」という推進方針に落とし込みます。
そこから「心理的安全性の担保」「心身の健康保持」「パフォーマンスの最大化」といった目標を置き、2027年度までに2024年度比で心理的安全性尺度+10%、特定保健指導対象者比率-10%、ワーク・エンゲイジメントスコア+10%といったKGIを設定するイメージです。
KGIは達成年限とセットで設計し、推進方針・目標とともに社内外へ示して浸透させていきます。
②健康課題の抽出と推進計画の具体化
ステップ①で目標とKGIを定めたら、次はそれを実現するための推進計画を具体化します。
まず、定期健康診断の結果やストレスチェックの集団分析、労働時間の状況など社内にあるデータを確認し、対応すべき健康課題を抽出します。業態平均と比較できる健康スコアリングレポートなどを活用し、健康保険組合などの保険者と情報共有しながら課題の所在を整理するのも有効です。
課題が見えたら、それに対応する施策を検討し、優先順位、実施時期、担当者、必要な予算・体制を決めて計画に落とし込みます。
計画の立て方に唯一の正解はありませんが、個別施策だけに目を向けるのではなく、推進計画全体がKGIと整合しているか、課題設定や施策選定が妥当かを俯瞰して調整しながら進めることが重要です。
③KGIに向けた進捗を測るKPI設定
次はKPIを置いて「施策がKGI(アウトカム)に向かって進んでいるか」を可視化します。健康経営では、可視化イメージのように健康経営の推進方針・目標・KGI → KPI → 施策のつながりが一貫していることが重要で、KPIはその途中経過を示す指標です。

画像引用元:経済産業省『健康経営ガイドブック』
KPIは、推進計画全体を俯瞰しながら、施策ごとに“測るべき成果”を決めて設定します。例えば、次のように施策の種類に合わせてKPIを置くと整理しやすくなります。
▼施策別のKPI例(※)
- 健康課題に基づく対策のKPI:健康診断の受診率、再検査受診率、ストレスチェック受検率 など
- 組織の土台づくり施策のKPI:研修参加率、制度利用率、職場改善の実施状況 など
- 健康づくり施策のKPI:運動習慣者比率、禁煙継続率、睡眠満足度 など
設定するKPIは、できるだけ定量で追えて、結果から改善策につなげられるものが望ましいです。また、KPIを測るためのデータ取得方法や確認頻度も決めておくことで、施策の評価と見直しがスムーズになります。
※運動習慣者比率や禁煙継続率、睡眠満足度などは、企業の最終目的によってKGIにもKPIにもなり得る指標です。ここでは、“施策の進捗を測る指標”としてKPI例に挙げていますが、自社のKGIとの関係で役割を整理してください。
④達成状況を踏まえた評価・改善
健康経営は短期間で成果が出にくいため、継続的に評価し、次の打ち手へつなげることが重要です。
KGIは年1回など一定期間ごとに達成状況を確認し、計画終了時点で目標に届く見込みがあるかを判断します。もし達成が難しい場合は、計画期間の延長、新規施策の追加、効果の薄い施策の優先度見直しなど、KPIの結果も踏まえて調整します。
併せて、施策参加率や従業員アンケート等を通じて、健康経営が現場に浸透しているか、形だけの取り組みになっていないかも定期的に点検します。
最終的には推進責任者がKGIと浸透状況をレビューし、経営方針との整合を確認したうえで、次の推進計画へ反映させていきます。
出典:経済産業省『健康経営ガイドブック』
ルネサンスの事例から学ぶ「KGI×KPI」設計の考え方
KGIとKPIを戦略的に設計するためには、最終成果につながる“途中の指標(KPI)”を見極めることが重要です。
ここでは、株式会社ルネサンスの取り組みを例に、KGIとKPIのつながりを整理します。
【KGI】健康のプロフェッショナルとしての自信(70%以上)
ルネサンスは、中長期ビジョンとして「人生100年時代を豊かにするための健康ソリューションカンパニーの実現」を掲げています。お客さまの健康づくりに伴走するためには、従業員が心身ともに健康な状態であることが前提となるため、「プロフェッショナルとしての健康」を健康経営宣言でも打ち出しています。
また、従業員のヘルスリテラシー向上を通じて「健康のプロフェッショナル」の育成を目指しており、その達成度を測るKGIとして「健康のプロフェッショナルとしての自信(70%以上)」を設定しています。
なお、2024年度からスタートした健康アンケートでは、58.8%の従業員が「健康のプロフェッショナルとして自信がある」と回答しました。一方で、健康診断の有所見率にはまだ課題が残っており、より自発的な健康行動への取り組みが必要な状況です。
【KPI】健診有所見者の再受診率(100%)と脂質異常者割合の削減(重点目標)
KGIに至る主要な行動・中間成果として、「健診有所見者の再受診率(100%)」と「脂質異常者割合の削減」をKPIに設定しています。
定期健康診断の受診率は2017年度以降8年連続で100%を継続し、異常所見者には再検査を促し、完了報告を義務化する仕組みを整えています。
また、脂質代謝異常など生活習慣に関わる項目の改善も重点KPIとして位置づけ、脂質異常者割合の削減に継続的に取り組んでいます。定期健康診断結果の維持・改善に向けて、専門職の知見を活かした仕組みづくりを進めている点も特徴です。
コロナ禍で一時的に落ち込んだ2020年度の再受診率も、その後の継続的な働きかけにより2024年度には93.5%まで改善しています。今後も再受診率と脂質改善を重要KPIとして運用しながら、従業員が主体的に健康行動を続けられる環境づくりを進めていく方針です。
事例から読み取れるポイント
ルネサンスの取り組みは、健康経営における「KGI×KPI設計」を行ううえで分かりやすいモデルケースになっています。
- KGI(最終成果)
- 健康のプロフェッショナルとしての自信(70%以上)
- KPI(行動・中間成果)
- 健診有所見者の再受診率(100%)
- 脂質異常者割合の削減(重点目標)
- 施策(How)
- 健診結果の見方セミナーなど、ヘルスリテラシー向上の学習機会
- 再受診を促すルール・運用の徹底
- 専門職の知見を活かした生活習慣改善の仕組みづくり
このように、“KGI → KPI → 施策”の因果関係が明確であるほど、健康経営の成果は説明しやすくなり、評価・改善にもつなげやすくなります。
事例詳細はこちらをご覧ください。
まとめ
この記事では、健康経営の指標について以下の内容を解説しました。
- 健康経営で活用される代表的な評価指標
- 指標を評価する測定方法
- 指標を定める前に健康経営の目的を考える
- 『健康経営ガイドブック』が示す戦略マップ
- 健康経営の指標設計ステップ
- ルネサンスの事例から学ぶ「KGI×KPI」設計の考え方
健康経営の指標は、「これを測れば正解」という万能リストは存在せず、自社のKGI(目的を定量的に翻訳した指標)から逆算して設計することが重要です。指標の四層構造や、戦略マップを使うことで、施策と経営成果のつながりを整理できます。
『ルネサンス』は、多様な健康課題について学ぶセミナーや実践プログラムを提供しており、健康経営をサポートしています。従業員のヘルスリテラシー向上や各種支援制度の活用促進のためにご活用いただけます。
「自社に合った指標設計がわからない」「成果を経営層にうまく説明したい」などの課題があれば、ぜひルネサンスのノウハウをご活用ください。



