個別機能訓練計画書の書き方と作成のコツを解説
個別機能訓練計画書とは、介護サービス利用者の自立支援を促進するための書類です。
機能訓練指導員が、利用者の心身の状況や自宅環境を考慮し、目標設定とプログラムを立案します。また、利用者本人とその家族に対する説明資料・同意書となるほか、機能訓練のすり合わせや職員間の認識の統一に役立てることができます。
しかし、個別機能訓練計画書の作成にあたって「書き方がよく分からない」「もっと効率よく書きたい」とお悩みの担当者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、個別機能訓練計画書の書き方と効率的に作成するコツを解説します。
なお、個別機能訓練加算については以下の記事で詳しく解説しています。こちらも併せてご覧ください。
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目次[非表示]
- 1.個別機能訓練計画書の作成手順
- 2.個別機能訓練計画書の書き方
- 2.1.①基本情報
- 2.2.②個別機能訓練の目標
- 2.3.③個別機能訓練項目の設定
- 2.4.④機能訓練実施後の変化
- 3.目標設定のポイント
- 3.1.長期目標設定のポイント
- 3.2.短期目標設定のポイント
- 4.個別機能訓練計画書作成のコツ
- 4.1.生活機能チェックシートの活用
- 4.2.興味・関心チェックシートの活用
- 4.2.1.活動欄の目標の書き方
- 4.2.2.参加欄の目標の書き方
- 5.まとめ
個別機能訓練計画書の作成手順
個別機能訓練計画書は以下の共通の手順に沿って作成を行います。
- 利用者の居宅訪問・生活状況の確認
課題分析・評価の実施
個別機能訓練計画書の作成
利用者・家族への説明と同意
個別機能訓練の実施
進捗状況の評価と見直し
作成の際、居宅訪問では利用者の身体状況や生活環境を確認します。利用者本人だけではなく、ご家族やケアマネージャーからの情報も参考にしましょう。
また、提供した訓練の効果を定期的に評価するため、3カ月に1回以上の更新が必要となります。
個別機能訓練計画書の書き方
個別機能訓練計画書は、サービス開始時および3ヶ月ごとに1回以上、サービスの評価を行ったうえで作成する必要があります。
ここでは主に記載する4項目について、作成方法を解説します。
①基本情報
基本情報は、ケアマネージャーから提供されるケアプランと、居宅訪問により利用者と家族から得た情報を基に記載します。
1.作成日
初回作成の場合は、初回利用日、もしくは初回利用日より前の日付を記載します。2回目以降の作成の場合は、前回作成日より3ヶ月以内の日付になります。
2.介護認定
利用者の要介護度(要介護1~5)を記載します。認定結果が出ていない場合は、“申請中”と記載してください。
3.計画作成者
計画作成者は、主に担当している機能訓練指導員の名前を記載します。生活相談員や管理者などの名前でも問題ありません。
4.障がい高齢者の日常生活自立度
障がい高齢者の日常生活自立度は、寝たきり度に応じて、ランクJ(生活自立)、ランクA(準寝たきり)、ランクB・C(寝たきり)の段階に分けられています。ケアプランを基にいずれかを記載します。
5.認知症高齢者の日常生活自立度
認知症高齢者の日常生活自立度は、ランクⅠからランクMまでの7段階に分けられています。ケアプランを基にいずれかを記載します。
6.利用者の基本情報
事前の居宅訪問で得た情報を記載します。
▼居宅訪問で得た基本情報の記載例
項目 |
記載例 |
本人の希望 |
痛みを緩和して、少しでも長く歩いて買い物を楽しみたい |
家族の希望 |
一人で出かけられるようになってほしい |
利用者の社会参加の状況 |
家に閉じこもっていることが多く、他者との交流が少ない |
居宅環境 |
立ち上がりにおける屈曲相の動作時に課題があるため、便座からの立ち上がる際に見守りが必要 |
7.健康状態・経過
ケアプランの情報を基に、病名や治療経過、既往歴などの医学的情報を記載します。
②個別機能訓練の目標
利用者の状況を踏まえたうえで、実施する機能訓練の目標を設定します。3ヶ月の短期目標と長期目標に分けて、それぞれ機能・活動・参加について記載します。
▼個別機能訓練目標の記載例
短期目標(今後3ヶ月) |
長期目標 |
|
機能 |
立ち上がりにおける屈曲相の動作時の動作向上 |
トイレ動作における“便座からの立ち上がり”動作時の動作向上 |
活動 |
週に1回、自宅の周辺(400m)を、杖を使用して1人で散歩する |
月に1回、近所のスーパーへ1人で買い物に行く |
参加 |
月に1回、家族と外食することで生活意欲の増進を図る |
月に1回、1人で映画鑑賞をすることで生活意欲の増進を図る |
③個別機能訓練項目の設定
実施するプログラム内容、留意点、頻度、時間などを記載します。設定した短期目標を達成できるようなプログラムを、具体的に設定することが大切です。
▼個別機能訓練項目の記載例
プログラム内容 |
留意点 |
頻度 |
時間 |
|
1 |
筋力強化エクササイズ
(腸腰筋筋力向上のため)
|
バイタルサインに留意して実施 |
週5回 |
5分 |
2 |
筋力強化エクササイズ (抗重力筋群筋力向上のため) |
疼痛に留意して実施 |
週5回 |
5分 |
3 |
立ち上がり-屈曲相エクササイズ (座位にて立ち上がり動作ができるようにするため) |
転倒に留意して実施 |
週5回 |
10分 |
4 |
歩行-立脚相エクササイズ (座位にて移乗動作ができるようにするため) |
転倒に留意して実施 |
週5回 |
10分 |
④機能訓練実施後の変化
プログラム実施後の、利用者の身体機能と日常生活能力の変化を記載します。
▼機能訓練実施後の変化の記載例
- 前回評価時と比べ、立ち上がり動作が安定してきています
- 前回(初回)計画作成時と比べ、屋外で10分程度の見守りで歩行できるようになってきています
目標設定のポイント
長期目標設定のポイント
長期目標設定のポイントは、以下の3つの目標を具体的に記載することです。
①心身機能(身体・精神の働きや状態)
②活動(日常生活動作・ADL・家事・職業能力・外出などの生活行為全般)
③参加(家庭や社会での役割を果たすこと)
「心身機能・活動・参加」をバランスよく含めて設定し、単に「座る・立つ・歩く」などの身体機能面の内容を記載すれば良いわけではない点に注意しましょう。
短期目標設定のポイント
長期目標設定後は、長期目標を達成するために必要な行為ごとに細分化し、短期目標を整理していきます。同様に以下3つの目標構成を含めるとよいでしょう。
①心身機能→例:下肢筋力・耐久性の向上により歩行が安定する
②活動→例:自立した屋外歩行で近くのお店まで歩けるようになる
③参加→例:家族や友人と買い物や散歩が楽しめるようになる
目標設定がブレていると利用者に適切なプログラムを提供できないので、長期短期のゴールを確実に固めておきましょう。
個別機能訓練計画書作成のコツ
個別機能訓練加算を取得するためには、興味・関心チェックシート、生活機能チェックシート、個別機能訓練計画書の3つが必要です。
興味・関心、または生活機能チェックシートに記載した内容を、個別機能訓練計画書の項目に当てはめることで作成効率が上がり、書類に一貫性を持たせることができます。
生活機能チェックシートの活用
生活機能チェックシートの状況・生活課題の欄に記載した内容は、個別機能訓練計画書にある利用者の居宅の環境欄に、そのまま転記することが可能です。
また、起居動作、ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)の状況、生活課題の内容についても、個別機能訓練計画書の短期・長期目標の項目にある機能欄へ反映できます。
興味・関心チェックシートの活用
興味・関心チェックシートは、利用者の目標を設定するための参考書類として活用できます。チェックシートの項目は、ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類)の活動・参加の項目に分けられます。
チェックシートの「してみたい」「興味がある」にチェックが入った項目を活動・参加に分類することで、個別機能訓練計画書の短期・長期目標にある活動・参加欄への記載が可能です。
活動欄の目標の書き方
活動欄に目標を記載する際は、短期・長期目標にかかわらず、頻度・自立度・目的を明確にします。
目的には、散歩や買い物など、生活活動動作の項目を記載します。頻度を増やしたり、自立度を高めたりすることで、短期目標と長期目標が連動して関連性が持てるようになります。
生活活動動作として挙げられる例は、以下のとおりです。
▼生活活動動作の例
行為 |
移動 |
管理 |
|
|
|
参加欄の目標の書き方
参加欄に目標を記載する際は、手段と目的を明確にします。
手段には、他者交流または生活意欲増進に関する内容を記載します。また、語尾は「他者との交流を図る」「生活意欲増進を図る」で統一します。
他者交流または生活意欲増進として挙げられる例は、以下のとおりです。
▼他者交流・生活意欲増進の例
他者交流 |
生活意欲増進 |
|
|
個別機能訓練加算については、こちらの以下の記事でも詳しく解説しています。
併せてこちらの記事もごらんください。
まとめ
この記事では、個別機能訓練計画書について、以下の項目で解説しました。
- 個別機能訓練計画書の書き方
- 個別機能訓練計画書作成のコツ
個別機能訓練計画書は、介護サービス利用者の身体機能や日常生活能力の維持・向上を図るために重要な書類です。
また、個別機能訓練加算の算定にも不可欠であるため、取得する際は漏れなく記載する必要があります。
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