口腔機能向上加算の算定要件と口腔・栄養スクリーニング加算の新設について
人の口腔機能は年齢とともに徐々に低下します。多くの高齢者が利用するデイケア・デイサービスでは、口腔と摂食嚥下(えんげ)の機能を維持・向上するための対策が必要です。また、健康な歯を守るほか、飲み込みに関連する筋・器官の機能低下を予防することも大切です。
デイケア・デイサービスでは、利用者の口腔機能の予防・改善策に加えて、収益向上の方法として口腔機能向上加算に取組めます。しかし、「仕組みについて詳しく知らない」「加算取得の要件が知りたい」という事業者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、口腔機能向上加算の基本と算定要件、口腔・栄養スクリーニング加算の新設について解説します。
なお、口腔機能向上加算のほかに、個別機能訓練加算も算定しやすい加算といわれています。基本概要と算定要件はこちらの記事をご覧ください。
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目次[非表示]
- 1.口腔機能向上加算とは
- 1.1.口腔機能向上加算の目的
- 2.口腔機能向上加算の該当する介護サービス種別
- 3.口腔機能向上加算の算定要件
- 3.1.①取得単位数
- 3.2.②サービス対象者
- 3.3.③人員配置
- 3.4.④計画の作成
- 3.5.⑤サービスの実施・記録
- 3.6.⑥定期的な評価の実施
- 4.口腔機能向上加算の留意点
- 5.口腔・栄養スクリーニング加算の新設
- 5.1.①単位数・算定要件
- 5.2.②スクリーニング項目
- 6.口腔・栄養スクリーニング加算の留意点
- 7.まとめ
口腔機能向上加算とは
口腔機能向上加算とは、利用者に対して口腔機能改善の取組みを行った際に算定される加算のことです。
口腔機能の低下、または低下のおそれがある利用者が対象で、誤嚥(ごえん)や肺炎などのリスクを防止することが主な目的です。そのため、要介護状態への重度化防止や、要支援状態からの改善を目指した取組みが求められます。
▼口腔機能向上加算を算定する流れ
- 利用者の口腔機能を把握する
- 口腔機能改善管理指導計画を作成する
- 口腔機能向上サービスを実施する
- 定期的に評価する
一方、加算には個別機能訓練加算もありますが、口腔機能向上加算のほうが算定しやすいといわれています。その理由や算定状況などについて、こちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。
口腔機能向上加算の目的
口腔機能向上加算は、高齢者や要介護者の口腔機能を改善し、健康を維持するための重要な施策です。主な目的は次の3つです。
【口腔機能の維持・改善と全身の健康維持 】
嚥下、咀嚼、発声、口腔清掃などの口腔機能を維持・改善し、全身の健康維持にも寄与します。これに より、高齢者の生活の質が向上します。
【誤嚥性肺炎の予防と栄養状態の改善 】
適切な口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎のリスクを減少させ、食事摂取を支援し、栄養状態を改善、維持することが期待されます。
【生活の質の向上 】
口腔機能の向上により、高齢者の食事やコミュニケーションが円滑になり、生活の質が向上します。これにより、高齢者の満足度や幸福感が高まります。
このように口腔機能の管理は高齢者にとって身体的・心理的な健康や日常の生活にも影響を与える重要な要素です。定期的な口腔ケアやサポートが欠かせません。
口腔機能向上加算の該当する介護サービス種別
- 通所介護
- 通所リハビリテーション(介護予防)
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護(介護予防)
看護小規模多機能型居宅介護
口腔機能向上加算の算定要件
2021年度の介護報酬改定により、口腔機能向上加算はⅠとⅡに分かれました。それぞれで要件や取得単位数が異なりますので、以下で算定要件を詳しく解説します。
①取得単位数
口腔機能向上加算ⅠとⅡの取得単位数と回数は、利用者の介護度により異なります。ⅠとⅡは併用して算定できないため、注意が必要です。
区分 |
単位数・回数 |
口腔機能向上加算Ⅰ |
|
口腔機能向上加算Ⅱ |
|
口腔機能向上加算Ⅱは、Ⅰの取組みと科学的介護情報システム(以下、LIFE)へのデータ提出が前提条件です。
また、Ⅰ・Ⅱどちらも、総合事業者は自治体によって単位数が異なる場合があるため、確認が必要です。
②サービス対象者
口腔機能向上加算のサービス対象者は、以下の1~3のいずれかに当てはまる利用者です。
- 認定調査票における嚥下、食事摂取、口腔清掃の3項目のいずれかにおいて①以外に該当する場合
- 基本チェックリストの口腔機能に関連する質問No.13~15のうち、2項目以上で「はい」と回答する場合
- そのほか、口腔機能の低下している、またはそのおそれのある場合
▼1.嚥下・食事摂取・口腔清掃の項目
項目 |
回答 |
嚥下 |
①できる/②見守り等/③できない |
食事摂取 |
①介助されていない/②見守り等/③一部介助/④全介助 |
口腔清掃 |
①介助されていない/②一部介助/③全介助 |
▼2.基本チェックリスト(No.13~15)
- 半年前に比べて硬いものが食べにくくなりましたか
- お茶や汁物などでむせることがありますか
- 口の渇きが気になりますか
③人員配置
口腔機能向上加算を算定するには、言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員のいずれかを1名以上配置しなければいけません。
常勤・非常勤は関係なく、兼務でも算定要件に該当します。
④計画の作成
利用者の口腔機能の状態を把握して、口腔機能改善管理指導計画書の作成が必要です。
言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員などの職種の職員が共同で計画を作成します。個別機能訓練加算と異なり、1種類の帳票の作成で算定できる点が魅力です。
⑤サービスの実施・記録
口腔機能改善管理指導計画に従い、要介護状態への重度化防止や要支援状態からの改善を目指して、以下のようなサービスを提供します。
▼実施サービス
- 口腔機能向上の必要性についての教育
- 口腔清掃の自立支援(摂食・嚥下機能を支えるための口腔清掃、食事環境の整備)
- 摂食・嚥下機能などの向上支援(咀嚼機能、嚥下機能、構音・発声機能、呼吸機能、表出機能)
また、サービス開始時に各職員が把握した利用者の課題を記録して、今後解決が必要な課題として設定します。
⑥定期的な評価の実施
口腔機能改善管理指導計画に従ってサービスを提供する場合、3ヶ月に1回以上の評価と見直しが必要です。
サービスの効果や利用者の口腔機能の改善具合などを評価することで、リスク把握や今後のサービス提供の有無を判断できます。
なお、加算算定の仕組みや、PDCAサイクルに必要な科学的介護情報システム(LIFE)についてはこちらで解説しています。こちらをご覧ください。
併せて、LIFEの基本情報と活用方法について解説している こちらもご覧ください。
口腔機能向上加算の留意点
- 口腔機能向上サービスは、利用者ごとに行うケアマネジメントの一環として行います。
- 歯科医療を受診している場合であって、医療保険における「摂食機能療法」を算定している場合、または「摂食機能療法」を算定していない場合にあって介護保険の口腔機能向上サービスにおける「摂食・嚥下機能に関する訓練の指導若しくは実施」を行っていない場合は、加算を算定できません。
口腔・栄養スクリーニング加算の新設
介護報酬改定では、口腔機能向上加算がⅠとⅡに分かれたほか、口腔・栄養スクリーニングも新設されました。利用者の口腔機能の低下を早期に発見して、重症化の防止につなげることが目的です。
①単位数・算定要件
口腔・栄養スクリーニング加算はⅠとⅡに分けられており、それぞれで単位数・回数、算定要件が異なります。
項目 |
口腔・栄養スクリーニング加算Ⅰ |
口腔・栄養スクリーニング加算Ⅱ |
単位数 |
20単位/回 |
5単位/回 |
回数 |
6ヶ月に1回が限度 |
6ヶ月に1回が限度 |
算定要件 |
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|
②スクリーニング項目
口腔スクリーニングと栄養スクリーニングを行う場合、利用者に対して以下の項目を確認する必要があります。そして、確認した情報を介護支援専門員に提供します。
区分 |
項目 |
口腔スクリーニング |
|
栄養スクリーニング |
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口腔・栄養スクリーニング加算の留意点
- 利用者が他の事業所で既に口腔・栄養スクリーニング加算を算定している場合は、重複して算定はできません。利用者や家族の意向も踏まえ、どこの事業所でスクリーニング実施・評価をするのかについて、サービス担当者会議で決定しましょう。
口腔・栄養スクリーニングは利用者ごとに行われるケアマネジメントの一環として実施されます。
まとめ
この記事では、口腔機能向上加算について以下の内容を解説しました。
- 口腔機能向上加算とは
- 口腔機能向上加算の該当する介護サービス種別
- 口腔機能向上加算の算定要件
- 口腔機能向上加算の留意点
- 口腔・栄養スクリーニング加算の新設
口腔・栄養スクリーニング加算の留意点
口腔機能向上加算は、要介護状態への重度化防止・要支援状態からの改善を目指して、口腔清掃の自立支援や摂食・嚥下機能の向上支援などを行います。
事業者にとっては、個別機能訓練加算よりも算定しやすいというメリットがありますが、実際に算定を行っている事業者は少ないのが現状です。
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口腔機能向上加算でお困りの介護施設管理者の方へ。しくじり事例から学ぶ成功の秘訣とは?算定するための改善ポイントについて解説しています。こちらの記事をご覧ください。
口腔機能向上加算に関する詳細な資料は以下よりダウンロードいただけます。