口腔機能向上加算の算定ができない? 意外な落とし穴と改善のポイント
食事や会話を行うための口腔嚥下機能は、自立した生活を送り、生活の質を向上させるうえで欠かせない機能です。
介護施設では、バランスの取れた食事や体重・筋力を維持するために、利用者の口腔嚥下機能の維持・改善に取り組むことが求められており、介護報酬における加算の一つにも“口腔機能向上加算”が設けられています。
しかし、介護施設の管理者のなかには「口腔機能向上加算の算定に失敗した」「口腔嚥下機能の維持・改善に取り組んでいるものの、十分な効果が得られていない」などとお悩みの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、口腔機能向上加算の算定に関する失敗談を踏まえたうえで、算定するための改善のポイントについて解説します。
口腔機能向上加算についてのノウハウやプログラムをお探しの方へおすすめ
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口腔機能向上加算とは
口腔機能向上加算とは、介護サービスの利用者に対して、口腔機能の低下を予防して改善を図る取り組みを行った際に算定できる介護報酬加算のことです。
口腔機能向上加算を算定するには、一定の要件を満たす必要があります。
▼口腔機能向上加算の算定要件
- 月の算定回数について、総合事業者・要支援(1~2)であれば月1回、要介護(1~5)であれば月2回の上限を超えていない
- サービス対象者が認定調査票や基本チェックリストの口腔機能に関する項目に該当している、もしくは口腔機能の低下やその可能性が認められる
- 言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員(以下、専門職)のうち、いずれか一名以上が配置されている
- 専門職が口腔機能向上改善指導計画を作成している
- 専門職によるサービス提供と定期的な記録が行われている
- 利用者ごとの定期的な評価が実施されている
- 利用者に計画の説明を行い、同意を得ている
介護報酬加算にはほかにもさまざまな種類がありますが、口腔機能向上加算はほかの加算と比較して算定しやすいことが特徴です。
なお、口腔機能向上加算に関する詳しい算定要件については、こちらの記事をご確認ください。
出典:厚生労働省『口腔機能向上マニュアル』
口腔機能向上加算の算定は同意をもうらのが難しい
介護報酬加算のなかでも、口腔機能向上加算は比較的簡単に算定しやすいといわれています。しかし、ルネサンスが調査したデータでは、実績がある介護施設は12.2%にとどまっており、8割以上が算定していない状況となっています。
▼介護施設における口腔機能向上加算の実績
画像引用元:ルネサンス『口腔機能加算は 〝R-Smart〟にお任せ! ✔初めて ✔誰でも ✔安心の導入サポート』
算定を難しくしている要因の一つには、利用者による口腔嚥下サービスの同意が得られないことが挙げられます。
口腔機能向上加算を算定するには、口腔機能向上の計画について説明を行ったうえで利用者から同意を得る必要があります。しかし、以下の原因によって口腔嚥下サービスの同意を得られないことがあります。
▼口腔ケアの同意を得られない原因
- 利用者の口腔嚥下に対する問題意識が低い
- 口腔嚥下に関する問題は顕在化しづらい
- 歩行などの生活に直結する機能が着目されやすい
口腔内は敏感で、普段は人に見られたり触られたりすることがない場所となります。そのため、介護現場では利用者が口腔嚥下に関するケアを拒否したり、非協力的だったりするケースが多く見られます。
また、利用者の認知機能が低下している場合は、問題意識を持ってもらうこと自体が困難になるほか、ケアマネージャー側で口腔嚥下の問題は目につきづらいため、ケアの重要性が伝わらないケースも考えられます。
口腔嚥下サービスを受けることに同意してもらうには、十分な説明を行い、利用者自身の口腔への問題意識を高めることが重要となります。
口腔機能向上加算の算定に関する“しくじり”事例
ここからは、口腔機能向上加算の算定に失敗したルネサンスの事例を紹介します。
事例①口腔嚥下のプログラムに対する利用者の低い満足度
1つ目は、介護施設で実施していた口腔嚥下のプログラムに関する満足度が低く、利用者からの同意を得られなかった事例です。
加算算定の取り組み当初は、パタカラ体操や唾液線マッサージのような一般的なプログラムを主に実施していました。すると、「テレビでもやっていた」「家でもできる」「お金を払ってやってもらう意味はあるの?」「よくなってる実感がない」などの厳しい意見が届くことが増えました。
その結果、口腔嚥下機能の改善も認められず、利用者の満足度低下を招いてしまった為
プログラムに関する同意が得られず算定ができなくなりました。
事例②ケアマネージャーからの不信感
2つ目は、ケアマネージャーからの不信感によって同意が得られずに、算定率の低下を招いてしまった事例です。
利用者に対して問診で口腔機能のヒアリングを行っていましたが、その尺度に信頼性がないことから、「口腔機能に困ってる対象者が見当たらない」という結果となりました。
また、ほかのデイサービスと同様のパタカラ体操だけで算定を開始しているケースがあり、プログラムの工夫が見られないためにケアマネージャーの同意が得られず、結果的に算定率の低下につながりました。
取り組みの改善を図るポイント
口腔嚥下に関する取り組みの改善を図るには、プログラムを一新して利用者とケアマネージャーの口腔機能に関する問題意識を高めるとともに、質の高いサービス提供を行うことがポイントです。
▼取り組み例
- 口腔嚥下機能の重要性を伝えるケアマネージャー向けのセミナーを開催する
- 口腔嚥下の筋肉へのアプローチに特化したプログラムを実施する
- エビデンスの高いEMSを用いたプログラムを採用する
ケアマネージャー向けのセミナーを開催して、口腔嚥下機能の重要性と効果的なプログラムについて情報提供を行うことによって、関心と問題意識を高められます。
また、口腔嚥下に関する筋肉の活動や姿勢を評価して問題点を明らかにすることで、一人ひとりに必要な機能の向上を図るためのプログラムを検討できます。
さらに、電気刺激で口腔嚥下に関する筋肉を活性化させる“EMSアプローチ”は、学会で効果が立証されており、即時的な効果が期待できます。一般的なパタカラ体操だけでなく、エビデンスの高いEMS療法を用いた個別プログラムを実施することで、口腔嚥下機能の改善を図り、利用者の満足度向上につながると期待できます。
ルネサンスでは、姿勢を含めた口腔嚥下機能の評価をはじめ、専門家によるグループプログラム、EMS療法による個別プログラムなど、一人ひとりの課題に合わせたプログラムを提供しています。
▼ルネサンスが提供する口腔嚥下機能に特化したプログラム例
プログラム |
取り組み内容 |
グループプログラム |
口腔嚥下の機能に特化した評価とプログラムを提供することで、利用者の満足度向上にもつながります |
EMS療法による個別リハビリプログラム |
口腔周辺の筋肉に中周波~高周波の電流で刺激を与えて、筋肉を活性化させます |
▼EMS療法による個別リハビリプログラムのイメージ
効果的な新しいプログラムの提供によって、利用者やケアマネージャーからの嬉しい声も届いています。
▼利用者やケアマネージャーからの嬉しい声
- 「身体はお元気でも、口腔嚥下機能がここまで衰えていたとは知りませんでした。」
- 「一般的な口腔プログラムではなく、ここまで専門的なプログラムを用意しているのは『ルネサンス』だけです。これからもよいプログラムを提供してください。」
- 「実際にムセが減ってきているのを感じます。」
- 「プログラムもよいですが、ここまでしっかり評価してくれていると私たちも安心です。」
まとめ
この記事では、口腔機能向上加算について以下の内容を解説しました。
- 口腔機能向上加算の概要
- 口腔機能向上加算の算定に関する問題
- 口腔機能向上加算の算定に失敗した事例
- 取り組みの改善を図るポイント
口腔機能向上加算は、介護報酬加算のなかでも簡単に算定しやすいといわれています。しかし、利用者やケアマネージャーによる口腔嚥下に関する問題意識が低かったり、専門的な知識が十分でなかったりすると、同意を得られずに算定できないケースも少なくありません。
口腔機能向上加算を取得するには、口腔嚥下機能の重要性を理解してもらうとともに、質の高いプログラムを提供して利用者の満足度を向上させることが重要です。
『ルネサンス』では、介護施設向けの加算取得支援サービス『R-Smart』を提供しております。加算算定の業務にお困りの方や、口腔機能に関するプログラムを工夫して利用者の満足度向上と加算の取得につなげたいとお考えの方は、こちらをご確認ください。