令和7年度版・健康経営度調査の改訂ポイント

令和7年度(=2025年度実施、2026年認定)版の健康経営度調査/健康経営優良法人制度は、KGI・KPI定義に沿った設問整理、経営会議での議題化の明確化、性差・年齢に配慮した職場づくりの評価追加、そして保険者連携(40歳未満の健診データ提供)必須化といった“実務の見える化”が進みました。
出典元:令和7年度 健康経営優良法人認定事務局の活動 及び 申請認定に関するご報告(日本経済新聞社)
特に、中小規模法人では選択要件の達成数が「17項目中8項目」に引き上げられ、テーマ別(A/B/C)での達成個数の指定が明文化。女性の健康・高年齢従業員・仕事と育児/介護の両立など、属性配慮の取組みを“証跡とともに”説明できるかが評価のカギになります。
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- お役立ち記事 | 【初めてでもわかる】健康経営優良法人の申請ガイド
目次[非表示]
- 1.まず押さえる:今年のスケジュールと申請フロー
- 1.1.申請スケジュール及び認定フロー図
- 2.大規模(調査票):今年の主な変更点(KGI→KPI→検証の一体化)
- 3.大規模(調査票):経営ガバナンスと社外開示(Q23/Q18・SQ3)
- 4.大規模(調査票):データ連携とPHR(Q28/29/Q40・SQ2)
- 5.大規模(調査票):属性配慮・評価枠の整理/アウトプット評価/受動喫煙
- 5.1.【Q50】高年齢従業員への配慮(新規要件化)
- 5.2.【Q58】 「心の健康保持・増進」へ評価枠を整理—設問名・説明文を見直し
- 5.3.【Q36/Q37/Q39/Q46/Q54/Q55】アウトプット指標のみで評価—該当設問を明示
- 5.4.【Q63】受動喫煙対策—“全事業場で適合”が前提、判断例を提示
- 6.中小規模法人向けの改訂点(A/B/Cブロックと達成数の考え方)
- 6.1.【全体】選択達成数の見直し—合計 6 → 8 に引き上げ
- 6.2.【Aブロック(Q10〜Q13)】健康課題の把握と目標—達成数は「2」据え置き
- 6.3.【Bブロック(Q16〜Q22)】達成数1→2へ/範囲を拡大—新設・移動が明記
- 6.4.【Cブロック(Q23以降)】達成数3→4へ—「心の健康保持・増進」へ名称・枠組みを整理
- 6.5.【必須要件(中小)】は継続—受動喫煙対策は別枠の必須、証跡保存も明確化
- 7.職場環境とコンプライアンスで落としやすいポイント
- 7.1.【Q63】受動喫煙対策—全事業場の適合が前提。1か所でも未適合で不認定
- 7.2.【調査対象範囲】「常時使用」者の扱い—非正社員・出向・派遣(派遣元)も分母に含む
- 7.3.【健診受診率の計算】100%判定に効く“例外”の整理—入退社・育介休・海外赴任 等
- 8.FAQ(よくある質問)
- 8.1.Q1. 40歳未満の健診データ提供は必須ですか?
- 8.2.Q2. PHRは「導入していればOK」ですか?
- 8.3.Q3. 中小は「今年いくつ」達成が必要?A/B/Cの内訳は?
- 8.4.Q4. 受動喫煙対策は一部の事業場が未対応でも申請できますか?
- 8.5.Q5. ホワイト500で特に重視されるのは?(経営会議/社外開示)
- 9.まとめ
- 9.1.今年の焦点(大規模)
- 9.2.今年の焦点(中小)
- 9.3.共通の落としやすい点
まず押さえる:今年のスケジュールと申請フロー
大規模は調査の回答が、 中小は申請書の提出がベースです。受付日程と費用、フィードバック時期を最初に固めましょう。
また、こちらの記事では具体的な申請の流れや注意点についてご紹介しています。あわせてご確認ください。
- 受付期間
- 大規模法人(健康経営度調査の回答期間):2025年8月18日(月)〜10月10日(金)17:00。
- 中小規模法人(認定申請期間):2025年8月18日(月)〜10月17日(金)17:00。
- 認定・選定時期の目安:2026年3月頃。
- 申請料
- 大規模法人:88,000円(税込)/件。
- 中小規模法人:16,500円(税込)/件。
- フィードバック(大規模)
- 速報版が12月ごろにメールで送付(郵送なし)。評価結果と要件適合状況が記載。
申請スケジュール及び認定フロー図
出典元:令和7年度 健康経営優良法人認定事務局の活動 及び 申請認定に関するご報告(経済産業省)
取組みのポイント
- 社内段取り:申請主体(法人)・対象範囲(従業員区分)・保険者窓口を先に確定(中小は申請書、⼤規模は調査票)。
- 費用・期日の確認:申請料と年内(12/31)入金期限の社内承認ルートを明確化(大規模/中小の案内スライド)。
- 証跡管理:提出後の確認に備え、回答根拠資料を2年間保存(提出要求時は1週間以内に提出)。
大規模(調査票):今年の主な変更点(KGI→KPI→検証の一体化)
【Q17】方針とKGIの明確化
健康経営の目的・方針と、到達指標であるKGIを最初に明示します。以降のKPI設定・施策・社外開示・検証と一本のストーリーで接続する前提に整理されました。
【Q33】KPI(進捗指標)の設定と施策のひも付け
KGI達成に向けたKPI(受診率・参加率・実施率など)を領域別に設定し、どの施策と結びつくかを明示します。アウトプット指標のみで評価される関連設問群(Q36/37/39/46/54/55)との整合が求められます。
【Q71】回答に用いる年度の指定
回答は「2023年度または2024年度」の取り組みに基づいて入力します。Q73の検証やQ18/SQ3の社外開示との年度整合が取りやすくなっています。
【Q73】KGIと経営課題の改善状況の検証
設定したKGIが経営課題の改善にどのように寄与したかを検証します。Q17→Q33→Q73の流れと、Q23(経営会議での議題化)/Q18・SQ3(社外開示)の内容を相互に裏づける構成です。
参考:健康経営の実践手順とポイント
①【経営理念・方針】経営方針に基づく健康経営の推進方針・目標と KGI の設定
②【組織体制】経営層のコミットメントと専門性を担保した組織体制の構築
③【制度・施策実行】目標を達成するための具体的な推進計画策定・実行
④【評価・改善】目標達成状況を踏まえた次のアクション・計画の検討
出典元:健康経営ガイドブック
大規模(調査票):経営ガバナンスと社外開示(Q23/Q18・SQ3)
【Q23】経営会議での議題化—ホワイト500の必須に
【Q23】は、経営レベルの会議体(取締役会等)で健康経営の推進方針やKGI等を審議・決定しているかを確認し、未実施の場合はホワイト500の認定要件を満たさないことが明示されました。決定・報告事項の例示も加わっています。
【Q18・SQ3】社外開示の“基準未満”例を明示—目的・体制・測定基準の不足は不可
【Q18】では、「目的」と「体制」の両方の開示が必須である点を強調し、基準を満たさない例(目的が健康として捉えられていない、体制説明がない 等)が表形式で明示されました。さらに【SQ3】ではパフォーマンス指標(例:アブセンティー、プレゼンティー、ワーク・エンゲージメント等)の“直近の実績値と測定基準”の開示がホワイト500の必須とされ、URL提出も求められます。
大規模(調査票):データ連携とPHR(Q28/29/Q40・SQ2)
【Q28/Q29】保険者連携の強化—「40歳未満データ提供」が必須に
健保組合等の保険者と協議(Q29)していることに加え、40歳未満の従業員の健診データ提供(Q28)が新たに必須要件となりました。提供形式(例:CSV、XML 等)の明記や、保険者側の指定形式への対応が案内されています。
出典元:ACTION!健康経営「令和7年度 健康経営度調査 今年度の概要と主な変更点」
【Q40・SQ2】PHR(パーソナルヘルスレコード)の環境整備と集計活用を分けて評価
【Q40】では、従業員がPHRサービスを使える環境をどの程度整えているかを問います。昨年度からの差分として、対象データの範囲(健診情報やライフログ等)と提供形態まで説明が追補され、選択肢も整理されました。
また、【SQ2】ではPHRの集計データを分析・活用できているかを段階評価で回答する形式が提示されています。
導入の有無だけでは足りず、「使える環境」と「活用」の2軸で捉える設計です。
大規模(調査票):属性配慮・評価枠の整理/アウトプット評価/受動喫煙
【Q50】高年齢従業員への配慮(新規要件化)
高年齢従業員の健康課題に配慮した具体的な取り組み(装置・設備の配慮、勤務設計、配置転換、教育・評価、機能チェック等)を確認する設問が新規で要件化されました。年代配慮を制度・運用の双方で示すことが前提です。
【Q58】 「心の健康保持・増進」へ評価枠を整理—設問名・説明文を見直し
【Q58】は、不調の予防だけでなく能力発揮・復職支援や就業両立までを含めた枠組みに整理され、設問名と説明文が見直し。関連するハラスメント対策や外部資源の活用等との関係も注記されました。
【Q36/Q37/Q39/Q46/Q54/Q55】アウトプット指標のみで評価—該当設問を明示
受診勧奨、ストレスチェック、健康教育、コミュニケーション促進、食生活、運動習慣の各設問は、実施有無ではなく“実施率・参加率等のアウトプット指標のみ”で評価することが明示されました(該当Qを一覧で提示)。入力欄の考え方や分類(従業員参加型/環境整備型)もサンプル化されています。
【Q63】受動喫煙対策—“全事業場で適合”が前提、判断例を提示
【Q63】では、屋内・屋外の双方で適合要件を満たしていることを全事業場に求め、テナントや工場・病院・学校等の施設類型ごとの可否例が提示されました。未適合の事業場が1つでもあると不認定となる扱いが図示されています。
中小規模法人向けの改訂点(A/B/Cブロックと達成数の考え方)
【全体】選択達成数の見直し—合計 6 → 8 に引き上げ
令和7年度は、中小規模法人部門の選択達成数が合計6項目から8項目へ見直されました。内訳は、【Aブロック】2(据え置き)/【Bブロック】1→2/【Cブロック】3→4です。これにより、より“土台づくり”と“具体的対策”の両面での実装が求められます。
出典:健康経営優良法人認定事務局 健康経営優良法人2026(中小規模法人部門) 今年度の概要
【Aブロック(Q10〜Q13)】健康課題の把握と目標—達成数は「2」据え置き
【A】は昨年度と同じく「左記3項目のうち2項目以上」の充足で据え置きです。構成は、Q10:健康経営の具体的な推進計画/Q11:健診受診(実質100%)/Q12:受診勧奨/Q13:50人未満の事業場におけるストレスチェックといった“把握と目標”を問う設計が踏襲されています。
【Bブロック(Q16〜Q22)】達成数1→2へ/範囲を拡大—新設・移動が明記
【B】は、「左記7項目のうち2項目以上」へと達成数が引き上げられ、昨年度より対象範囲が拡大しました。差分は以下のとおりです。
【Q17/Q18】「仕事と育児または介護の両立支援」が新設。
【Q21】「女性の健康保持・増進」がC→Bへ“移動”。
【Q22】「高年齢従業員の健康や体力の状況に応じた取組」が新設。
これにより、働き方・両立支援・属性配慮の実装度をBで問う位置づけに整理されました。
【Cブロック(Q23以降)】達成数3→4へ—「心の健康保持・増進」へ名称・枠組みを整理
【C】は、「左記項目のうち4項目以上」の充足に見直し(※昨年度は3)となり、メンタル関連の設問が「心の健康保持・増進」へ名称・評価枠を整理。不調対応のみにとどまらず、能力発揮や両立支援まで含む広い観点での実施状況を確認する流れに改められました。
【必須要件(中小)】は継続—受動喫煙対策は別枠の必須、証跡保存も明確化
中小の必須(健康宣言/経営者の健診受診/健康づくり担当者の設置/40歳以上データ提供の対応/受動喫煙対策/評価・改善/法令遵守の誓約 等)は昨年度から継続。加えて、誓約事項・証跡保存(申請最終日から2年間/求めに応じ1週間以内提出)の運用がスライドで再確認されています。
職場環境とコンプライアンスで落としやすいポイント
【Q63】受動喫煙対策—全事業場の適合が前提。1か所でも未適合で不認定
受動喫煙対策(Q63)は必須。屋内・屋外ともに「全面禁煙または分煙」の水準に全事業場が適合している必要があります。適合早見表と具体例では、工場・学校等で未適合があるケースは「健康経営優良法人 不認定」と明示されています。
※社占有でない、共用施設の場合は、貴社が事業場として責任を持つ範囲(ビル内でテナントとして賃借しているスペースの範囲で、賃貸ビルの出入り口等の共用部分などは除く)の状況でお答えください。⇒賃借スペース内を全て禁煙としていれば、屋外・屋内共に◎とみなしてください。
参照: 健康経営優良法人認定事務局 令和7年度 健康経営度調査 今年度の概要と主な変更点
【対象】大規模=調査票Q63(必須)/中小=ブロック外の必須要件として同等の適合が求められる。
【調査対象範囲】「常時使用」者の扱い—非正社員・出向・派遣(派遣元)も分母に含む
調査対象となる従業員は、労基法20条ベースの「常時使用する従業員」。ここには正社員に加え、健診実施義務のある出向正社員、契約社員・パート・アルバイト等の非正社員、そして“貴社が派遣元の派遣社員”が含まれると明記されています。分母のとり方は大規模/中小の区分にも影響するため要注意です。
※常時使用する従業員とは、労働基準法第20条に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」
参照:健康経営優良法人認定事務局 令和7年度 健康経営度調査 今年度の概要と主な変更点
※調査対象範囲の考え方(従業員等範囲)p.18
【対象】大規模=調査票の定義として必須/中小=申請区分や率の判定で同趣旨を準用。
【健診受診率の計算】100%判定に効く“例外”の整理—入退社・育介休・海外赴任 等
健診受診率(実質100%)の算定は、退職・入社・海外赴任・育児/介護休業・妊娠・特定業務従事者・短時間勤務などのケースごとに分母/分子への算入可否が整理されています。たとえば「年度中に入社」は雇入時健診の受診でカウント、「育休中」は対象外人数に算入。といった扱いが一覧化されています。
【対象】大規模=調査票の注記に従う/中小=「健診100%」等の判定で同趣旨を参照。
FAQ(よくある質問)
Q1. 40歳未満の健診データ提供は必須ですか?
A. はい。大規模は【Q28】で“40歳未満の従業員の健診データを保険者へ提供していること”が新たに必須扱いです(提供形式の選択肢も明示)。【Q29】では保険者との協議・連携内容も確認されます。【対象】大規模
Q2. PHRは「導入していればOK」ですか?
A. いいえ。環境整備【Q40】(従業員がPHRを使える状態か)と、分析・活用度【SQ2】(集計データをどこまで活かしているか)を分けて評価されます。ツール導入だけでなく「使える環境+活用」が問われます。【対象】大規模
Q3. 中小は「今年いくつ」達成が必要?A/B/Cの内訳は?
A. 合計8項目です。内訳はA=2(据え置き)/B=2(昨年1→2)/C=4(昨年3→4)。Bでは「両立支援」「高年齢」新設、「女性の健康」がC→Bに移動。Cでは「心の健康保持・増進」へ名称整理。【対象】中小
Q4. 受動喫煙対策は一部の事業場が未対応でも申請できますか?
A. できません。受動喫煙対策【Q63】は必須で、全事業場が屋内外とも基準に適合していることが前提。類型別の可否例も提示され、未適合の事業場が1つでもあると不認定の取り扱いです。【対象】大規模=調査票必須/中小=必須要件
Q5. ホワイト500で特に重視されるのは?(経営会議/社外開示)
A. ①経営会議での議題化【Q23】:未実施はホワイト500要件を満たしません(決定・報告事項の例示あり)。②社外開示【Q18/SQ3】:目的+体制の開示に加え、最終指標の直近実績・測定基準のURLまで確認されます。【対象】大規模(ホワイト500)
まとめ
この記事では、健康経営度調査/認定申請について令和7年度の改訂ポイントと変更点・新設項目を整理しました。
今年の焦点(大規模)
- 健康経営のKGIとKPIの設定、KGIの効果検証までの戦略と戦術の流れが具体化【Q17/Q33/Q73】
- とくにパフォーマンス指標(アブセンティー/プレゼンティー/ワーク・エンゲージメント等)の直近実績と測定基準の開示はホワイト500の必須です。
- 経営会議での議題化【Q23】と社外開示の質【Q18/SQ3】が明確化。
- 保険者連携の強化(40歳未満データ提供の必須化【Q28】 )
- PHRの環境整備と活用度の切り分け評価【Q40/SQ2】
今年の焦点(中小)
- 選択達成数が「6→8」(A=2/B=2/C=4)へ見直し。
- Bでは両立支援(育児・介護)と高年齢従業員への取り組みが追加、女性の健康はC→Bへ移動。
- Cでは「心の健康保持・増進」へ名称整理。達成要件の見直しが“土台(B)+具体策(C)”の実装度をより重視する設計に。
共通の落としやすい点
- 受動喫煙対策(Q63)は全事業場で適合必須。一部未適合があると不認定の扱いです。
- 従業員範囲の分母は「常時使用」の考え方に基づき、非正社員や(派遣元の)派遣社員も含む前提。
- 健診受診率(実質100%)は入退社・育介休・海外赴任などケース別の算入可否に従い計算します。
人事部門や健康経営推進部門の管理者は、評価項目の変更点・設問内容を踏まえて自社の課題に応じた施策を講じることが重要です。
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