スポーツクラブ×防災協定【事例まとめ4選】平時から有事へつなぐ実践

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防災協定とは、災害時に自治体が民間企業の協力を得るため、あらかじめ協定書や覚書を交わしておく仕組みです。企業が持つ資機材や人員、ネットワークを活用しやすくなることで、被災者支援の初動と運用がスムーズになります。

例えば、スポーツクラブと防災協定を結ぶと、クラブの建物を被災者の一時滞在場所として活用でき、運動設備や温浴施設等を健康維持や生活機能の維持のために提供することも可能です。

公共施設だけではカバーしきれない「帰宅困難者の一時滞在」「衛生・入浴」「車中避難」「運動支援」の不足を補う取り組みとして、民間スポーツクラブを地域の拠点に位置づける動きが広がっています。本記事では、千葉・神奈川・福岡の4事例を紹介します。

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4事例サマリー比較表

自治体

連携クラブ

協定の主眼

主な施策・運用の特徴

千葉県野田市

スポーツクラブ&スパ ルネサンス 野田24

帰宅困難者一時滞在/車中避難受け入れ/温浴活用/運動支援

防災研修・避難訓練を実施、図上訓練→実動訓練へ接続

千葉県佐倉市

ルネサンス 佐倉/ルネサンス ユーカリが丘24

包括連携(健康づくり・スポーツ振興・子ども支援)+災害時の応急・支援

介護予防・学校水泳など平時施策を基盤に、有事対応に展開

神奈川県大和市

ルネサンス 大和24

一時滞在/情報提供/備蓄配布/入浴提供/運動支援

帰宅困難者に衛生・情報・物資を包括提供

福岡県春日市

スポーツクラブ&スパ ルネサンス 春日24

一時避難場所開放/長期帰宅困難者の入浴受け入れ/啓発

住宅地の受け皿強化、防災イベントで普及啓発

事例詳細|千葉県野田市 × スポーツクラブ&スパ ルネサンス 野田24

地域課題と協定の狙い

  • 課題:野田市駅周辺は公共・宿泊施設が少なく、災害時や鉄道の突発的な運休時に帰宅困難者の滞在場所が不足するおそれがあります。また、自家用車台数に対して車中避難先が不足している点も課題です。
  • 狙い:民間施設を活用し、一時滞在・車中避難・入浴などの衛生確保を可能にすることで、駅周辺の受け皿を強化することを目指します。

協定の内容、具体的取組について

  • 帰宅困難者へ一時滞在施設として可能な範囲で施設を提供する。
  • 避難者へ温浴施設の利用受入れを行い健康維持の支援を行う。
  • 避難が必要な方のため、車中避難場所として、施設の一部及び設備を開放する。
  • 災害時に開設している避難所で可能な範囲で運動支援を行う。
  • 定期的に開催される防災イベントにて普及啓発を行う。

自治体にもたらす効果

  • 駅周辺に即時に機能する一時滞在拠点を確保できます。
  • 車中避難と衛生(入浴・トイレ)をセットで運用し、健康被害の抑制につなげられます。
  • 公共施設の混雑を緩和し、受け入れキャパシティの平準化を図れます。

事例詳細|千葉県佐倉市 × ルネサンス 佐倉/ルネサンス ユーカリが丘24

スポーツクラブルネサンス佐倉

地域課題と協定の狙い

  • 背景:市内で運営されている「ルネサンス 佐倉」「ルネサンス ユーカリが丘24」は、介護予防教室や学校水泳授業の受託など、平時から地域の健康づくりに取り組んできました。
  • 狙い:佐倉市の第5次佐倉市総合計画と親和性の高い分野で、双方の人的・物的資源を有効活用し、市民サービスの向上と健康増進・生きがい創造に資することを目指します。災害時の応急・支援活動や防災・環境整備も、協議のうえ連携対象とします。

協定の内容、具体的取組について(平時)

  • 健康づくりの推進:介護予防教室や運動プログラムの強化、健康測定会などの共同実施が可能になります。
  • スポーツの振興:学校水泳の受託、地域スポーツ教室・イベントの共催などにより、運動機会を拡大できます。
  • 子どもの発育・教育支援:発育発達・体力向上プログラム、放課後の運動機会づくり等で連携できます。
  • その他の協議事項:上記以外でも、市と施設が合意した施策を柔軟に実施できます。

協定の内容、具体的取組について(有事)

  • 応急・支援活動への協力:状況に応じて、人員協力、物資配布補助、情報周知の支援、運動支援(長期避難による健康被害の抑制に資する軽運動の提供など)を、協議のうえ実施します。
  • 防災・環境整備:避難環境の衛生・安全性向上に向け、市の要請に基づき可能な範囲で連携します。

自治体にもたらす効果

  • 平時の接点を有事の力に変換でき、住民の健康・学び・運動機会の基盤が強化されます。
  • 年齢階層を横断した包括的な接点が生まれ、有事の支援対象者への到達性が高まります。
  • 市の計画に沿った継続性のある官民連携モデルとして、他分野への展開がしやすくなります。

事例詳細|神奈川県大和市 × スポーツクラブ ルネサンス 大和24

スポーツクラブルネサンス大和24

地域課題と協定の狙い

  • 課題:小田急線と相模鉄道が乗り入れる大和駅周辺では、災害時や鉄道の突発的な運休時に帰宅困難者が多数発生するおそれがあります。一方で、駅周辺の公共施設数には限りがあり、受け入れ拠点の確保が課題でした。
  • 狙い:駅近の民間施設を一時滞在・衛生・情報提供・物資配布まで担える拠点として活用し、帰宅困難者の安全確保と地域のレジリエンス向上を図ります。

協定の内容、具体的取組について

  • 一時滞在施設として可能な範囲で施設を提供する。
  • 帰宅困難者に対し、水道水、トイレ及び入浴施設を提供する。 
  • 帰宅困難者に対し、必要に応じて、施設の備品を利用する。
  • 帰宅困難者に対し、災害に関する情報や公共交通機関の運行情報及び道路情報等を提供する。
  • 帰宅困難者に対し、備蓄物資の提供又は配布をする。  
  • 災害時等において、エコノミークラス症候群を予防するため、運動支援を実施する。
  • その他(市と協議のうえ必要な支援を柔軟に実施します)

自治体にもたらす効果

  • 駅前に即応可能な一時滞在拠点を確保でき、公共施設の混雑を緩和できます。
  • 衛生(トイレ・入浴)と情報提供を一体で実施でき、混乱や健康被害の抑制につなげられます。
  • 備蓄配布や軽運動の案内まで含む包括的な支援により、長時間待機時のリスクを低減できます。
  • 市民に対し、「困ったときに行ける場所」と行動指針を明確に示せます。

事例詳細|福岡県春日市 × スポーツクラブ&スパ ルネサンス 春日24

地域課題と協定の狙い

  • 背景:警固断層帯は福岡平野の南東部まで約55kmにわたり、活動時にはマグニチュード7.2の地震が想定されます。春日市は住宅地の開発が進み、人口密度が高いことから、被災時に一時的な滞在先の確保が課題でした。

  • 狙い:市南東部の住宅街に立地し、ジム・スタジオ・プール・テニスコート・温浴を備える大型クラブを、災害時の一時避難長期帰宅困難者の衛生確保(入浴)に活用し、受け入れ体制を強化します。

協定の内容、具体的取組について

  • 臨時的な避難場所の開放(館内の一部を開放します)

  • 長期帰宅困難者への温浴提供(体温維持・衛生確保・疲労軽減に資する入浴を提供します)

  • 防災普及啓発への協力(市の防災イベント等での周知に協力します)

自治体にもたらす効果

  • 住宅地内に即応可能な避難・衛生拠点を確保できます。
  • 温浴提供により、長期化した避難生活での健康被害やメンタル負担の軽減につなげられます。
  • 公共避難所の混雑を抑え、受け入れキャパシティの分散が図れます。
  • 大型施設の多機能性(広い待機空間、シャワー・更衣、運動設備)を活かし、長期化に耐える運用が可能になります。

まとめ

4事例から見えるポイント

  • 立地に応じた使い分けが有効です。 駅前では「一時滞在・情報提供・入浴」を素早く展開しやすく、住宅地では「臨時避難・長期化に備えた衛生確保」に力を入れやすいです。
  • 提供範囲を先に定義すると運用が安定します。 一時滞在/車中避難/トイレ・入浴/情報提供/物資配布など、可能・条件・上限を協定書で明文化します。
  • 情報の出し方を設計しておくと混乱を抑制できます。 館内掲示とあわせて、市公式サイト・防災メール・駅前サイネージ等で同報できる体制を整えます。
  • 費用・保険・責任の分界は事前に詰めておきます。 光熱・消耗材・清掃・人件費の負担区分、保険の適用範囲、鍵・警備の取り扱いを明記します。
  • 平時の連携が有事の支援力につながります。 健康づくりやスポーツ事業の接点を活かし、住民への到達性と運用の即応性を高めます。

ルネサンスの支援について

『ルネサンス』では、地域の健康づくりを自立自走できるように事業構想から計画、実行までを一貫して支援しています。全国100店舗以上のスポーツクラブの運営や、270以上の自治体の支援実績に基づく健康づくりノウハウを、さまざまな地域課題の解決に向けて提供いたします。詳しくは、こちらをご確認ください。

『ルネサンス』では、多世代交流ができるまちづくりや、遊休施設を新たなコミュニティー拠点とする取り組みを通して、自治体における防災活動の推進を支援いたします。

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