自治体に求められる防災対策とは


2023年9月1日で、関東大震災から100年を迎えます。甚大な被害をもたらした大震災は、住民の生活や社会経済にも大きなインパクトを与えることとなりました。

自治体においては、地域住民の安全を守り、災害の発生時に被害を最小限に減らすために、日頃から防災に取り組むとともに、地域住民と一丸となって助け合える環境を整備することが求められます。

自治体のまちづくりや企画政策を担う部門では「改めて防災への理解を深めたい」「自治体としてできることを知りたい」とお考えの方もいるのではないでしょうか。

この記事では、自治体における防災の必要性や具体的な対策、共助ができるまちづくりを目指した取り組みについて解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.自治体における防災の必要性
  2. 2.自治体による防災対策の取り組み
    1. 2.1.①地域版の防災マップを作成する
    2. 2.2.②防災訓練・教育を実施する
    3. 2.3.③情報収集・伝達の仕組みを整備する
    4. 2.4.④避難所・施設を整備する
  3. 3.地域の公助を目指した公民連携の取り組み事例
  4. 4.まとめ


自治体における防災の必要性

日本の国土は、山や川、海などの豊かな自然を持っており、日常生活においてさまざまな恵みを享受しています。一方で、地形・地質・気象などの特性から、地震や津波、豪雨、土砂災害などの災害をもたらす厳しい自然条件にあります。

2016〜2020年の5年間では、熊本地震や九州北部豪雨、大阪府北部地震、東日本台風などの大きな災害が立て続けに発生している状況です。さらに今後30年の間には、約70%の確立で南海トラフ地震と首都直下型地震が発生すると予測されています。


▼想定される大規模地震

画像引用元:内閣府『地震災害


このような大規模な地震が発生すると、交通インフラの途絶や沿岸の都市機能の麻痺などの深刻な事態につながるリスクがあります。しかし、災害が発生するリスクは地域によって異なるとともに、環境によって「どこに避難すべきか」「どのような行動を取るべきか」といった対応も異なります。

自治体においては、災害時に住民の命・財産を守り、被害を未然に防ぐまたは最小限に抑えるための防災・減災への取り組みが求められます。地域の災害リスクを把握したうえで、ハード面・ソフト面の両方で防災対策に取り組むことが重要です。

出典:内閣府『防災に関する自治体の取り組み』『地震災害』/国土交通省『10 防災・減災




自治体による防災対策の取り組み

自治体が防災対策を行う際は、自助・共助・公助の3つの取り組みを連携させて、災害への対応力を高める必要があります。


▼自助・共助・公助の役割

役割

内容

自助

自分や家族の身を守る

共助

地域住民同士が協力して助け合う

公助

公的機関による救助・援助を行う


ただし、行政や消防による公助には限界があるほか、公助を行う機関自体が被災する可能性も考えられます。被害を最小限に抑えるには、住民自らの自助と、地域による共助に取り組むことが重要です。

ここでは、災害が発生した際に自助・共助を促して、適切な行動を取れるようにするために、自治体が行う取り組みについて解説します。

なお、自助・共助・公助のそれぞれの役割については、こちらの記事で解説しています。併せてこちらをご確認ください。

  自助・共助・公助の役割とは? 防災・減災のために自治体ができること 日本には、地形や気象などの自然的条件によってさまざまな自然災害が発生しやすい特性があります。国の規模でさまざまな災害対策が進められているものの、広域的な大規模災害が発生した場合には、公的機関による活動の限界が懸念されます。 災害時の被害を最小限に抑えるには、自助・共助・公助の3つで取り組むことが必要です。このうち、公助を担う自治体では「防災における自分たちの役割は何か」「防災・減災のためのまちづくりはどのようにすればよいのか」など悩まれている方もいるのではないでしょうか。 この記事では、自助・共助・公助の役割を明確にしつつ、防災・減災のために自治体ができることについて解説します。 株式会社ルネサンス


①地域版の防災マップを作成する

1つ目は、地域特性を踏まえた災害リスクを調査して、防災マップを作成することです。

水害や土砂災害などの発生リスクが高い危険区域、避難場所・避難経路などを示した防災マップを地域住民と共有することで、災害が発生した際の避難判断・行動をしやすくなります。


▼防災マップの例

画像引用元:内閣府『鎌倉水害防災マップ


また、防災マップと一緒に、住民による避難行動のフローを作成することも有効です。


▼避難行動判定フローの例

画像引用元:内閣府『自助・共助、多様な主体の連携による 防災活動の推進


防災マップと避難行動のフローについては、各自治体のホームページや地域の広報誌、SNSなどを用いて日ごろから住民への情報提供を行っておくことも重要です。

出典:内閣府『鎌倉水害防災マップ』『自助・共助、多様な主体の連携による 防災活動の推進


②防災訓練・教育を実施する

2つ目は、地域住民や地域企業、学校などを対象に、防災に関する訓練・教育を実施することです。

定期的に防災訓練・教育を実施することで、防災の重要性を認識してもらい、自助や共助の意識を高められます。また、自治体関係者と住民がそれぞれ取る行動をタイムラインで示すことによって、災害発生時の状況確認や関係者への連絡などの流れと役割を改めて整理できるようになります。


▼プログラムの例

  • パンフレット配布による啓発
  • 出前講座による自主防災活動の啓発
  • タイムラインに基づく避難訓練
  • さまざまなシチュエーションを想定した防災訓練


③情報収集・伝達の仕組みを整備する

3つ目は、情報収集や伝達の仕組みを整備することです。

災害が発生した際には、速やかな行動を取れるように、自治体職員による正確かつ迅速な情報収集と住民への情報伝達が求められます。

そのためには、自治体職員や関係者が円滑なコミュニケーションを取り、住民へと情報を伝達できる仕組みを整備することが必要です。また、災害時に通信が遮断された場合に備えて、災害対策用移動通信機器や非常用電源を準備しておくことも欠かせません。


▼情報収集・伝達の仕組み

  • 地域住民に災害情報を届けるスマートフォン向けの防災アプリの提供
  • 自治体や地域施設と連携した災害時情報共有システムの導入
  • SNSによる災害時の情報発信



④避難所・施設を整備する

4つ目は、避難所・施設の整備です。

災害時の避難場所は、住民の安全を確保する施設として重要な役割があります。復旧までの期間において、住民の生活基盤として使用できるように、安全な避難所・施設を確保するとともに、良好な生活環境を整えることが重要です。

また、地域住民が適切な場所に避難できるように、災害種別ごとの避難場所を整備する必要があります。


▼避難場所の種類と例

種類

広域避難場所

火災に対して安全な広場や大きな公園

一時避難所

公園や広場、学校の運動場

津波避難ビル・水害時避難ビル

堅固な高層建物における3階以上の階

指定緊急避難場所・指定避難所

政令で定める基準に適合する施設


出典:北海道管区行政評価局『避難所等の指定及び運営に関する実態調査』/大阪市『災害時の避難場所、避難所



地域の公助を目指した公民連携の取り組み事例

北海道小清水町では、公民連携で防災拠点型複合庁舎『ワタシノ』をオープンしました。自治体職員や地域住民との多世代交流ができるだけでなく、身の回りにあるモノやサービスを非常時にも役立てる“フェーズフリー”の考え方を導入していることが特徴です。


▼小清水町役場

ワタシノの北側は庁舎ゾーンとなっています。小清水町の畑の起伏をイメージしてデザインされたカウンターの下部には、土壁を用いたデザインが施されています。


▼にぎわいエリア

ワタシノの南側に位置するにぎわいエリアは、地域住民同士の多世代交流を創出して、役場職員とも顔の見える交流を可能とする場です。地域住民同士が日頃から関係性を築くことで、災害時にも支え合うためのコミュニティを醸成できます。


▼じゃがいもストリート

ワタシノの中央にあり、役場と賑わいエリアをつなぐ施設となるのが、ジャガイモストリートです。まちとつながる新しい動線の役割も果たしています。

このほか、コミュニティスペース・カフェ・ランドリー・フィットネスジム&スタジオ・ボルダリングウォールなどの施設・設備が備わっており、平常時には人々の交流を促す施設として、災害時には防災拠点として機能します。

地域コミュニティの活性化による共助の意識醸成に加えて、災害発生時の防災拠点としても活用することが可能です。

小清水町防災拠点型複合庁舎「ワタシノ」が5月28日オープンー役場に併設した複合機能施設としては日本初・フェーズフリー認証施設ー




まとめ

この記事では、自治体に求められる防災対策について以下の内容を解説しました。


  • 自治体における防災の必要性
  • 自治体による防災対策の取り組み
  • 地域の公助を目指した公民連携の取り組み事例


大規模な災害が発生すると、公助の機能には限界があります。災害の被害を最小限に抑えるには、自らの身を守るための自助と、地域で助け合う共助を促すための取り組みが必要です。

自治体ができる取り組みには、防災マップの作成や防災訓練・教育の実施、情報収集・伝達ができる仕組みの整備、避難所・施設の整備などが考えられます。

ルネサンス』では、地域住民の多世代交流やコミュニティの創出を図るための拠点の整備をサポートしています。平常時には住民同士の交流の場として、災害の発生時には防災拠点として活用することが可能です。


コミュニティを軸としたまちづくりのご提案については、こちらのページで詳しく紹介しています。併せてご確認ください。

  地方創生|コミュニティを軸としたまちづくり 地域の大切な資源である「住民の皆様」・「地元企業」・「地域の資本」を繋げ、「持続可能」かつ「自立自走型の事業」を構築いたします。 株式会社ルネサンス


なお、自治体における防災活動のアイデアについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

  自治体の防災アイデア。地域住民の自助・共助を促進する取り組みとは 災害大国といわれる日本では、地震や津波、豪雨、洪水などのさまざまな自然災害が発生しており、自治体における地域住民を守るための防災対策が求められます。 状況に応じた適切な行動を取ってもらい被害を最小限に抑えるためには、地域住民の防災に対する意識を高めて、一人ひとりが互いに助け合う自助と共助の取り組みを促進することが重要です。 自治体でのまちづくりや企画政策を行う部門では、「防災の意識を高めるための取り組みを実施したい」「事例を参考にして防災の取り組みに役立てたい」などとお考えの方もいるのではないでしょうか。 この記事では、自治体における防災の課題を踏まえつつ、地域住民の意識向上によって自助・共助を促進するためのアイデアを紹介します。 株式会社ルネサンス



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