【セミナーレポート】防災×にぎわいの拠点を創出~自治体職員との対談で取り組みを振り返る~
2023年9月25日~26日でジチタイワークス様主催のセミナーが開催され、株式会社ルネサンスは「防災×にぎわいの拠点を創出」というテーマで登壇させていただきました。
弊社、地域健康推進部部長の熊坂と自治体職員の対談形式で取り組みを振り返り、防災を起点とした庁舎の建て替えや、フェーズフリーの考え方についてお話しました。
こちらでは、今回のセミナーレポート内容をご紹介させていただきます。
※以下記事内容の著作権は、株式会社ジチタイワークスとなります。(© Copyright 2023 JICHITAI WORKS, INC.)
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目次[非表示]
講師
左:株式会社ルネサンス 地域健康推進部 地域創生Aチーム
課長代理 有川 鏡子さん
中央:地域健康推進部部長 熊坂 克哉さん
右:小清水町産業課
課長(元企画財政課 課長) 石丸 寛之さん
北海道胆振東部地震でおきたブラックアウトで、30時間超の停電を経験した北海道小清水町。2023年5月に開庁した防災拠点型複合庁舎「ワタシノ」には、防災の機能だけでなく、にぎわいを創出するためのフィットネスやカフェ、ランドリーも備わっている。開庁に至るまでの背景とポイントを、ルネサンスの有川さん・熊坂さん、小清水町の石丸さんが紹介する。
防災を基点に庁舎建て替えを考えたきっかけ
熊坂:本日は小清水町の石丸さんと、ルネサンス熊坂の対談形式で、地震による停電がきっかけとなって庁舎建て替えに踏み切り、弊社が監修した施設を導入いただいた事例を紹介します。
まず、防災を基点に庁舎の建て替えを考えたきっかけについて教えてください。
石丸:新庁舎の正式名は「防災拠点型複合庁舎ワタシノ」です。庁舎機能以外に、にぎわいを創出したいという思いがあり、複合施設としました。複合庁舎とした理由の1つに、平成30年9月の胆振東部地震があります。
本町は地震発生からおおよそ43時間、停電状態が続きました。季節が秋だったのが不幸中の幸いで、冬期だと気温が-20度くらいになることもありますので、お亡くなりになる方がいらっしゃったのではないかと考えます。我々職員は町として、住民の生命と財産を守るという最大の責務がありますので、地震で停電のようなブラックアウトの事象が発生した場合や、暴風雪で避難せざるを得ない場合については役場に逃げ込んでもらうため、庁舎の立て替えを検討したのがきっかけでした。
熊坂:町民の生命・財産を守るという視点と、コミュニティを作る両建てで進んだ経緯を教えてください。
石丸:本町は現在、人口4,500人ほどの極めて小さな町です。どの自治体もそうかもしれませんが、少子高齢化・人口減少が進みコミュニティが希薄化している状況でした。そして役場の仕事は、1つの目的を達成するために複合的な政策も必要だと思っています。
この庁舎は防災だけではなく「にぎわいの創出」と、多くの町民に来ていただけるような環境づくりを考え、複合的な要素で建て替えを検討しました。
ルネサンスの出会いとフェーズフリー概念
熊坂:民間と連携することになったきっかけについてお願いします。
石丸:今回、庁舎を建て替えるにあたり、生命・財産を守る防災を考えました。また、町長が「地域の絆の再生」を公約に挙げており、当時私は企画財政にいましたので、これを指示されたのですが、どうしたら良いか悩んでいました。
その時に三菱UFJ銀行から、ルネサンスを紹介をしてもらいました。熊坂さんともその際に初めてお会いしたのですが、貴社が携わった鳥取県伯耆町の事例を紹介してくれました。町長と一緒に視察したところ、特に高齢の方々がたくさん集まり、運動を通じた健康づくりを実際に取り入れているのを目の当たりにしました。これこそが地域の絆であると感じました。
新庁舎は「フェーズフリー」概念を取り入れています。身の周りにあるモノやサービスを、日常時はもちろん非常時にも役立つようにデザインする考え方のことです。にぎわいづくりの点で取り入れたのがルネサンスの監修で、スポーツジムを施設に入れました。通常時は、町民にジムの利用を通じて、健康増進のほか多世代の方々とコミュニケーションを取ってもららいます。
また、カフェとコインランドリーも併設しました。この3つは通常時はにぎわいを生み、非常時はジムが一次避難所となり、温泉熱を使用したシャワーが利用できます。カフェは炊き出し機能。庁舎には非常電源がありますので、停電や断水が長期化した場合には、コインランドリーを無償で提供する予定です。
にぎわいエリアの運営と公民連携の経緯
熊坂:にぎわいエリアの運営について、どのような運営を継続的にやっていくお考えか教えてください。
石丸:通称「ワタシノ」という防災拠点型複合庁舎ですが、これは井戸端会議というイメージで、町民の皆さんにとって自分の居場所という意味を込めて付けています。通常、役場はちょっと入りづらいイメージですが、そうではなく自分の居場所なのだということで、遠慮無く足を運んでいただける場をコンセプトに施設を作りました。
執務空間とにぎわい空間で、ゾーン分けをしていますが、にぎわい空間の運営は町ではなく、NPO法人と連携して委託しています。
熊坂:今回このような形で、官民連携で事業が進められた経緯について教えてください。
石丸:町民が「何をやったら喜んでくれるか」に対して、行政側にはノウハウがありません。
例えばランドリーを運営するOKULABさんは、ランドリーを通じてお母さん方の家事を軽減することで、ウェルビーイングに繋げています。このように、長けている分野の企業を行政が利用するには色々なハードルがありますが、我々はそれを打ち壊してでも住民のために取り組まないと、将来は成り立たない事態になると認識しています。
熊坂:竣工から3カ月が経って感じたことは。
石丸:この施設は役場の機能だけではなく、町民の方々はもちろん、観光で訪れる方が大幅に増えた印象があります。役場の雰囲気が行政っぽくないためか、特に役場には用事がない町民も遊びにきてくれる空間になっています。
参加者とのQ&A(※一部抜粋)
Q:施設完成までの予算と整備手法を教えてください。
A:建物本体のハードな部分については、総務省の町村役場機能緊急保全債+基金+一般財源を活用しています。構想、設計、企画、運用のソフトの軸については、内閣府の地方創生推進交付金を活用しています。
Q:庁舎の建て替えで大切なエネルギー源ですが、有事の際のエネルギー確保について教えてください。
A:停電の際の対応は発電機しかありません。高性能な非常用発電機の導入を検討し、見積もったところ、およそ2億円が必要と判明しました。そこで、温泉熱を熱源とする発電機を導入することで、約20分の1の500万円ほどで導入することができました。この発電で、必要最低限の電灯、避難所の暖房、炊き出し設備、ランドリーの開放をまかなえる設計となっています。
まとめ
今回の対談セミナーでは、「防災×にぎわいの拠点を創出」について以下の内容でお話しました。
- 防災を拠点に庁舎建て替えを考えたきっかけ
- ルネサンスとの出会いとフェーズフリー概念
- にぎわいエリアの運営と公民連携の経緯
- 参加者とのQ&A(※一部抜粋)
『ルネサンス』では、地域住民の多世代交流やコミュニティの創出を図るための拠点の整備をサポートしています。平常時には住民同士の交流の場として、災害の発生時には防災拠点として活用することが可能です。
コミュニティを軸としたまちづくりのご提案については、こちらのページで詳しく紹介しています。併せてご確認ください。
なお、自治体における防災活動のアイデアについては、こちらの記事で詳しく解説しています。