介護現場の生産性向上とは?人手不足でも現場を回す7つの取り組み

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介護現場では、「記録や事務作業に時間がかかる」「一部の職員に業務が集中している」「人手が足りず、利用者と向き合う時間を十分に確保できない」といった課題を抱える施設も少なくありません。

こうした課題への対応として重要になるのが、介護現場の生産性向上です。業務の進め方や役割分担を見直し、職員の負担を減らしながら、利用者へのケアやコミュニケーションに時間を使いやすい環境をつくることが重要です。

さらに、人材不足が続くなかでは、現在いる職員だけでなく、介護助手・シニア人材やスポットワーカー、外国人介護人材など、多様な人材が活躍しやすい仕事の形を整えることも求められます。

本記事では、介護現場で生産性向上が求められている背景から、具体的な7つの取り組み、生産性向上を進める際に見落としたくない「属人化」の問題まで解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.介護現場で生産性向上が求められている背景
    1. 1.1.介護職員は2026年度に約25万人、2040年度に約57万人の追加確保が必要
    2. 1.2.国も人材確保と生産性向上を進めている
  2. 2.介護における「生産性向上」とは
    1. 2.1.生産性向上は「人を減らすこと」ではない
    2. 2.2.「効率」と「ケアの質」を両立することが大切
  3. 3.介護現場で生産性が上がりにくい5つの原因
    1. 3.1.①業務が特定の職員に集中している
    2. 3.2.②職員によって仕事の進め方が異なる
    3. 3.3.③新人教育・引き継ぎに時間がかかる
    4. 3.4.④介護職員でなくても担える業務まで介護職員が行っている
    5. 3.5.⑤毎回「企画・準備・判断」が発生している
  4. 4.介護現場の生産性向上につながる7つの取り組み
    1. 4.1.①業務を見える化する
    2. 4.2.②業務の役割分担を見直す
    3. 4.3.③介護助手・シニア人材を活用する
    4. 4.4.④スポットワーカー・派遣人材を活用する
    5. 4.5.⑤外国人介護人材が働きやすい業務設計を行う
    6. 4.6.⑥ICT・介護テクノロジーを活用する
    7. 4.7.⑦外部サービスを活用する
  5. 5.生産性向上で見落としたくない「属人化」
    1. 5.1.属人化が招く4つのリスク
  6. 6.生産性向上のカギは「誰が担当しても回る仕組み」をつくること
    1. 6.1.①業務を可視化・標準化する
    2. 6.2.②業務を切り分ける
    3. 6.3.③毎回の準備・判断を減らす
    4. 6.4.④ICTや外部サービスを活用する
  7. 7.介護の生産性向上は小さな業務改善から始められる
  8. 8.まとめ|介護の生産性向上は「人を増やす」と「仕事を変える」の両方が重要

介護現場で生産性向上が求められている背景

介護現場で生産性向上が求められている大きな背景の一つが、今後さらに深刻になると見込まれている介護人材不足です。介護職員は2026年度に約25万人、2040年度に約57万人の追加確保が必要です。

介護職員は2026年度に約25万人、2040年度に約57万人の追加確保が必要

厚生労働省が公表した「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2022年度の介護職員数は約215万人でした。これに対し、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の介護職員が必要になると推計されています。つまり、2022年度と比べて、2026年度には約25万人、2040年度には約57万人の追加確保が必要です。

出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」

人材を確保するための採用活動は、今後も重要です。一方で、必要な介護職員数そのものが増えていく状況を考えると、「人を採用すること」だけに頼らず、限られた人員でも安定してサービスを提供できる現場づくりを進めることも必要になります。

国も人材確保と生産性向上を進めている

介護人材不足への対応として、国も採用・処遇改善だけでなく、さまざまな方向から対策を進めています。厚生労働省が示している主な取り組みには、

  • 介護職員の処遇改善
  • 多様な人材確保・育成
  • 離職防止・定着促進
  • 生産性向上
  • 外国人介護人材の受入環境整備

などがあります。

参考:厚生労働省「介護人材確保に向けた取組」


介護における「生産性向上」とは

「生産性向上」と聞くと、「職員一人あたりの仕事量を増やす」「少ない人数で現場を回す」といったイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、介護現場における生産性向上は、単純に仕事の量を増やすことが目的ではありません。

生産性向上は「人を減らすこと」ではない

たとえば、日々の業務のなかに次のような場面はないでしょうか。

  • 同じ情報を何度も転記している
  • 必要な情報を探すのに時間がかかっている
  • 新しい職員が入るたびに同じ説明をしている
  • 特定の職員しか業務の進め方を知らない
  • レクリエーションや体操の内容を毎回一から考えている

こうした業務を整理し、職員が利用者へのケアやコミュニケーションに時間を使いやすくすることも、生産性向上につながります。厚生労働省でも、「職場環境の整備」「業務の明確化と役割分担」「手順書の作成」「情報共有の工夫」などを、介護現場の生産性向上に向けた業務改善のテーマとして示しています。

「効率」と「ケアの質」を両立することが大切

介護現場では、すべての仕事を「早く終わらせればよい」と考えることはできません。利用者への声かけや見守り、その日の体調・表情の変化への気づきなど、人だからこそ担える仕事があります。

そのため、

  • 減らせる業務は減らす
  • 任せられる業務は任せる
  • 介護職員が専門性を発揮すべき業務に集中する

という視点が重要です。生産性向上とは、介護を機械的にすることではなく、限られた時間と人材をどこに使うかを見直すことだと考えるとわかりやすいでしょう。

介護現場で生産性が上がりにくい5つの原因

生産性向上を進めるには、まず自施設のどこに業務上の課題があるのかを把握する必要があります。

①業務が特定の職員に集中している

「この業務は○○さんに聞かないとわからない」「このレクリエーションは○○さんしか進行できない」このような状態になると、その職員への相談や判断依頼が集中します。さらに、その職員が休暇や退職などで不在になった場合、ほかの職員では対応しにくくなり、業務が停滞する可能性があります。

②職員によって仕事の進め方が異なる

同じ業務でも、職員ごとに手順や判断基準が異なると、新しく入った職員は戸惑いやすくなります。「Aさんから教わった方法と、Bさんから教わった方法が違う」という状態では、覚える側にも負担がかかります。業務の進め方を一定程度整理しておくことは、効率化だけでなく、教育しやすい環境づくりにもつながります。

③新人教育・引き継ぎに時間がかかる

マニュアルや共通の手順がなく、「先輩を見て覚える」「その都度口頭で教える」という状態では、新しい職員が入るたびに教育が必要です。その結果、ベテラン職員やリーダーに教育・フォローの負担が集中することがあります。

④介護職員でなくても担える業務まで介護職員が行っている

介護現場には、専門的な介護だけでなく、

  • 清掃
  • 配膳・下膳
  • シーツ交換
  • 物品補充

など、必ずしも専門職だけが担当する必要のない周辺業務もあります。専門性が必要な仕事と、幅広い人材が担える仕事を整理することで、介護職員が専門業務に集中しやすくなります。

⑤毎回「企画・準備・判断」が発生している

実際の作業だけでなく、「業務を始める前の準備」が負担になっている場合もあります。たとえばレクリエーションや体操では、

  • 内容を考える
  • 必要なものを準備する
  • 利用者へ説明する
  • 当日の進行を考える・実施する

といった業務が発生します。一回あたりの負担は小さくても、日々繰り返すことで、職員の時間を圧迫する原因になります。

介護現場の生産性向上につながる7つの取り組み

では、具体的にどのような改善策が考えられるのでしょうか。

①業務を見える化する

まずは現在行っている業務を整理します。

たとえば、

  • 1日の業務を時間軸で書き出す
  • 誰がどの業務を担当しているか確認する
  • それぞれにどの程度時間を使っているか確認する
  • 特定の職員に仕事が集中していないか確認する

といった方法があります。
普段は「当たり前」と思っている業務も、あらためて書き出すことで、「本当に必要か」「別の方法に変えられないか」と気づくことがあります。最初から大きなシステムを導入するのではなく、まず「今、誰が何をしているのか」を把握することが改善の第一歩です。

②業務の役割分担を見直す

業務を見える化したら、「誰が担うべき仕事なのか」という視点で整理します。

たとえば、

  • 専門的な知識・技術が必要な業務
  • 清掃や配膳などの周辺業務
  • 事務作業
  • レクリエーションの準備
  • 外部サービスに任せられる仕事

などに分けて考えます。すべてを介護職員が担うのではなく、仕事に応じて適切な人材・方法を選ぶことが重要です。

③介護助手・シニア人材を活用する

専門資格を必要としない周辺業務については、介護助手やシニア人材に担ってもらうことも考えられます。ただし、重要なのは単に「人を増やすこと」ではありません。その人に何を任せるのかを、あらかじめ整理しておくことです。役割が明確であれば、新しく加わった人材も動きやすくなります。

④スポットワーカー・派遣人材を活用する

急な欠勤や繁忙時間帯などへの対応として、スポットワーカーや派遣人材を活用する方法もあります。しかし、「ベテラン職員にしかできない」「詳しい人に聞かなければわからない」という仕事ばかりでは、新しい人材を確保しても十分に活躍してもらえません。

そのため、

  • 任せる業務を明確にする
  • 手順書・チェックリストを用意する
  • 注意点を整理する
  • 初めて担当しても迷いにくくする

といった業務設計が重要です。なお、スポットワーカーを活用する際は、業務設計だけでなく、適切な労務管理も必要です。

⑤外国人介護人材が働きやすい業務設計を行う

外国人介護人材を受け入れる場合も、業務をわかりやすく伝える仕組みが重要です。


たとえば、

  • わかりやすい言葉を使う
  • 写真・図を使う
  • 動画で手順を示す
  • 理解できたか確認する
  • 質問しやすい環境をつくる

といった工夫があります。これは外国人介護人材だけに役立つ取り組みではありません。手順やルールが整理されれば、新人職員やスポットワーカーなど、経験が異なる人材にとっても働きやすい現場になります。厚生労働省では、外国人介護人材の受入れについて、EPA、在留資格「介護」、技能実習、特定技能などの制度を案内しています。

出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」

⑥ICT・介護テクノロジーを活用する

記録、情報共有、見守りなどでは、ICT・介護テクノロジーを活用する方法があります。

たとえば、

  • 介護記録ソフト
  • タブレット・スマートフォン
  • 見守り支援機器
  • インカム

などです。ただし、ICTを導入することそのものが目的にならないよう注意しましょう。まず、「どの業務に負担がかかっているのか」を把握し、その課題を解決する方法としてICTが適しているかを考えることが重要です。課題によっては、ICTよりも業務手順や役割分担を見直すほうが効果的な場合もあります。

⑦外部サービスを活用する

施設の中だけですべてを解決しようとせず、外部サービスを活用することも選択肢です。

特に、

  • 毎回企画が必要
  • 準備に時間がかかる
  • 担当者の経験や得意不得意に左右される

といった仕事は、外部化することで職員の負担を減らせる可能性があります。たとえば、レクリエーションや体操です。

職員が毎回、内容を考え、準備し、自ら進行している場合、それらの一部を外部の専門サービスに任せることで、職員は利用者への声かけ、安全確認、見守り・サポートなどに集中しやすくなります。

生産性向上で見落としたくない「属人化」

介護現場の生産性向上というと、ICTや介護ロボットに注目しがちです。しかし、あわせて確認したいのが業務の属人化です。属人化とは、仕事の進め方や必要な情報が、特定の職員の経験・知識・スキルに依存している状態です。

例えば、次のような状態に心当たりはないでしょうか。

  • ベテラン職員の頭の中にしかない情報がある
  • 特定の職員が休むと対応できない仕事がある
  • マニュアルより「先輩を見て覚える」ことが多い
  • 人によって仕事の進め方・教え方が異なる
  • レクリエーションや体操が特定職員のスキルに依存している
  • 新人教育・引き継ぎが特定の職員に集中している

複数当てはまる場合、「特定の人がいるから成り立っている仕事」が増えている可能性があります。

属人化が招く4つのリスク

属人化が進むと、主に次のような問題が起こりやすくなります。

1.特定職員への負担集中
質問や判断がベテラン職員に集中し、経験豊富な職員ほど忙しくなります。

2.休職・退職による業務停滞
特定の職員だけが仕事の進め方を知っている場合、その人が不在になると業務が進みにくくなります。

3.教育・引き継ぎ負担の増加
手順が整理されていなければ、新しい人が入るたびに一から説明する必要があります。

4.サービス品質のばらつき
担当者の経験や得意不得意によって、提供内容や品質が変わる可能性があります。
人材不足への対策として新しい職員を採用しても、仕事そのものが属人化したままでは、教育・フォローによって既存職員の負担が増えてしまうこともあります。

生産性向上のカギは「誰が担当しても回る仕組み」をつくること

そこで重要になるのが、「できる人を増やす」だけでなく、「さまざまな人が担当しやすい仕事に変える」という考え方です。属人化を減らすためには、主に4つの視点があります。

①業務を可視化・標準化する

まず、

  • 誰が担当しているか
  • どれくらい時間がかかっているか
  • どこに負担が集中しているか
  • 職員ごとにやり方が違っていないか

を整理します。業務を「見える形」にすることで、改善できる部分を発見しやすくなります。

②業務を切り分ける

専門職が担うべき仕事と、幅広い人材が担える仕事を整理します。これによって、介護助手、シニア人材、スポットワーカーなどにも業務を任せやすくなります。

③毎回の準備・判断を減らす

業務のたびに、「どうすればいいのだろう」「○○さんに確認しよう」という状態が発生すると、時間もかかります。

そこで、

  • 手順を統一する
  • 写真・図で説明する
  • チェックリストを用意する
  • 判断が必要なポイントを整理する

など、初めて担当する人でも迷いにくい状態をつくります。目的は「マニュアルを作ること」ではありません。担当者が変わっても、安定して仕事を進められる状態をつくることが重要です。

④ICTや外部サービスを活用する

施設内ですべてを抱える必要はありません。記録や情報共有はICTを使い、企画・準備・進行などは外部サービスを利用するなど、業務に応じて適切な方法を選択できます。仕組み化とは、「何でもシステム化すること」ではなく、職員の個人的な経験・スキルだけに依存しない仕事の形をつくることだと考えるとよいでしょう。

まず、

  • 誰が担当しているか
  • どれくらい時間がかかっているか
  • どこに負担が集中しているか
  • 職員ごとにやり方が違っていないか

を整理します。業務を「見える形」にすることで、改善できる部分を発見しやすくなります。

介護の生産性向上は小さな業務改善から始められる

生産性向上というと、大規模なICT導入や組織改革をイメージするかもしれません。
しかし、最初から現場全体を変える必要はありません。まずは、次のような問いから自施設の仕事を確認してみましょう。

  • ベテラン職員しかできない仕事はないか
  • 担当者が休むと困る仕事はないか
  • 毎回同じ準備をしている仕事はないか
  • 介護職員でなくてもできる仕事はないか
  • 新しい人が入るたびに同じ説明をしていないか
  • 外部サービスに任せられる仕事はないか

こうした問いから一つひとつ仕事を見直すだけでも、改善できる部分が見えてきます。一つの業務で時間や負担を減らせれば、その分、利用者へのケアやコミュニケーションに使える時間を増やすことができます。

まとめ|介護の生産性向上は「人を増やす」と「仕事を変える」の両方が重要

介護人材不足が今後さらに深刻になることを考えると、採用・定着に向けた取り組みは引き続き重要です。

一方で、新しい人材を確保するだけでは、業務の進め方が特定職員に依存している場合、その負担構造まで解消できるとは限りません。

これからの介護現場では、人材を確保すること「+ 業務を見える化すること」「+ 役割を整理すること」「+ 属人化を減らすこと」「+ ICTや外部サービスを活用すること」を組み合わせて考える必要があります。特に、介護助手やスポットワーカー、外国人介護人材など、多様な人材が現場に加わるほど、「誰が担当しても迷いにくい仕事」「担当者が変わっても一定の品質で進めやすい仕事」を増やすことが重要になります。

生産性向上の第一歩として、まずは、「今の現場に、特定の職員にしかできない仕事はないか」という視点から、日々の業務を見直してみてはいかがでしょうか。

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