職場の転倒災害予防に役立つ! “3分間のカラダづくり体操”を紹介
厚生労働省が公表している『令和3年労働災害発生状況の分析等』によると、転倒、転落、動作の反動・無理な動作による腰痛など、労働災害の発生件数は年々増加傾向にあります。
発生年齢別の割合は、40代、50代、60代以上で、いずれも20%以上です。そのうち、60歳以上の割合は25.7%、全年代でもっとも高い割合を示しています。
企業における労働災害対策として、身体機能の維持や、転倒予防に役立つ取組みを実施することが大切です。
しかし、健康経営に取組む企業の人事担当者や安全衛生担当者のなかには、「どのような運動方法を取り入れたらよいか分からない」という方もいるのではないでしょうか。
この記事では、転倒や腰痛の予防に役立つ運動方法や、体の状態を知るためのセルフチェックを紹介します。
出典:厚生労働省『令和3年労働災害発生状況の分析等』
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目次[非表示]
- 1.転倒災害の主な原因
- 2.加齢に伴う体の変化
- 3.セルフチェック
- 3.1.①片足立ち上がりテスト
- 3.2.②座位ステッピングテスト
- 3.3.③2ステップテスト
- 4.体力評価テスト「安全体力®」機能テスト
- 5.3分間のカラダづくり体操
- 5.1.①ストレッチ
- 5.2.②筋力トレーニング
- 5.3.③バランストレーニング
- 6.まとめ
転倒災害の主な原因
年間2万件以上の転倒災害が発生しておりますが、転倒災害の典型的なパターンは、「滑り」、「つまずき」、「踏み外し」の3つで、いずれもちょっとした原因が大きな災害につながっています。
滑り
【主な原因】
- 床が滑りやすい素材である、あるいは凍結している
- 床に水や油が飛散している
- ビニールや紙など、滑りやすい異物が床に落ちている
つまずき
【主な原因】
- 床の凹凸や段差
- 床に放置された荷物や商品など
踏み外し
【主な原因】
- 大きな荷物を抱えるなど、足元が見えない状態での作業
転倒しない職場環境を整えることも重要であるが、転倒しない身体をつくることで「滑り」「つまづき」「踏み外し」による転倒災害の発生を予防する必要があります。
加齢に伴う体の変化
私たちの体には、加齢により、身体機能の低下や筋肉量の減少などの変化が見られます。これらの年齢による機能・筋肉量の変化は、仕事中の転倒や墜落などの労働災害の原因になりやすいです。
身体機能は20~24歳で最高潮を迎える一方、55歳を超えると動作速度・全身跳躍反応・瞬発反応など、すべての機能が低下していきます。
また、筋肉量は男女ともに40歳頃から低下することが分かっています。特に、下半身の筋力が低下しやすく、転倒しやすくなる理由だと考えられます。
労働災害の予防として、転倒予防のほか、日々の体づくりを行うことが大切です。そのためには、企業による従業員向けの取組みの実施や促進も求められます。
セルフチェック
労働災害を予防するうえでは、自身の体の状態を把握することが大切です。
ここでは、簡単にできる3つのセルフチェックを紹介します。
①片足立ち上がりテスト
片足立ち上がりテストでは、下半身の筋力をチェックします。
- 椅子に浅めに座り、両手を胸の前でクロスする
- そのまま片足で立ち上がり、3秒間キープする
立ち上がれなかった場合は、下半身の筋力低下が考えられます。壁を支えに立ち上がれるように挑戦してみてください。
②座位ステッピングテスト
座位ステッピングテストでは、どれだけ素早く足を動かせるかをチェックします。
- 椅子に座り、椅子の端を両手で支える
- 足元に30cmの目印をつける(A4サイズ用紙の横幅が目安)
- その幅に合わせて、足の開閉を繰り返す
- 20秒間計り、回数を記録して評価する
開閉回数が28回以下の場合は要注意と判断されます。要注意の方は、ゆっくり股関節から足を開いたり、閉じたりする動きを行うことで練習できます。
③2ステップテスト
2ステップテストでは、歩行能力の安定性と筋力をチェックします。
- スタート位置に足を揃えて立ち、大股で2歩進む
- 2歩進んだところで足を揃えて立ち、つま先の位置に目印をつける
- スタート位置から目印までの距離を測り、計算式に当てはめて値を出す
▼ステップテストの評価に使用する計算式
歩行距離(cm)÷ 身長(cm)=値 |
値が1.38cm以下だった場合は要注意です。
以上のセルフチェックの項目で要注意に当てはまった場合は、次に紹介する“3分間のカラダづくり体操”を行うことで足の筋力や安定した歩行能力の改善に役立ちます。
体力評価テスト「安全体力®」機能テスト
「安全体力®」機能テストとはJFEスチーム株式会社が、従業員の労働災害を未然に防ぐことを目的としている体力評価テストです。安全に作業を遂行するために必要な体力を定義し、客観的に見える化するツールとして開発されました。
2004年から実施されているテスト結果から、転倒災害被災者は、非被災者と比べて転倒リスクテストにおいて評価2以下の割合が高いことが明らかになっています。
※「安全体力」はJFEスチール株式会社の登録商標です。
3分間のカラダづくり体操
“3分間のカラダづくり体操”は、ストレッチパート・筋力トレーニングパート・バランストレーニングパートの3つで構成されています。
いずれの体操もその場でできる簡単な運動です。オフィスや自宅などの空きスペースで、空き時間を利用して簡単に実践できます。
ここからは、“3分間のカラダづくり体操”の具体的な方法を紹介します。
①ストレッチ
まずは、全身を伸ばす準備体操と体をほぐすストレッチを行います。腰痛の予防・改善や足の疲労回復につながるストレッチもあります。
▼ストレッチの方法
①全身の伸び |
両手を組んで上に伸ばして手を下ろす |
②手首・足首回し |
手首を組んで回しながら、足首も同時に片方ずつ回す |
③胸のストレッチ |
肩の力を抜き、指先を遠くに伸ばすイメージで両手を広げて胸を張って、手を下ろす |
④肩回し |
両手を肩に添えて、肘で遠くに円を描くように前から後ろに回す |
⑤背中・腰のストレッチ |
|
⑥体側のストレッチ |
片手を腰に添えて、もう片方の手を上に伸ばして体を横に倒す |
⑦ふくらはぎのストレッチ |
足を後ろに引き、後ろのかかとを床につけたまま、前に出した足に体重を乗せて伸ばす |
⑧もも裏のストレッチ |
|
②筋力トレーニング
筋力トレーニングパートでは、足の筋力を強化して歩行を安定させるため、もも・ふくらはぎ・お尻の横などのトレーニングを行います。
まずは、トレーニングに移る前に以下の準備を整えます。
- 動けるスペースを確保する
- 体調に合わせて行う
- 痛みがあるときは控える
- 水分補給をしながら行う
▼筋力トレーニングの方法
①ももとふくらはぎのトレーニング |
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②お尻の横のトレーニング |
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③もものトレーニング |
足の裏全体に体重を乗せるイメージで、左右交互に前に出して戻す |
これらのトレーニングで、足の筋力を強化して、歩行を安定させることで、転倒防止につながります。
③バランストレーニング
バランストレーニングは、お尻の横の筋力強化やバランス能力の向上が期待できます。
▼バランストレーニングの方法
①足の横上げバランス |
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②膝上げバランス |
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③深呼吸 |
肩を回しながら、深呼吸を行う |
バランス能力の低下は、加齢による筋力の低下をはじめ、姿勢の維持が難しくなる、平衡感覚・視覚などが衰えることが原因とされています。
仕事中の転倒のリスクを軽減するためにも、バランストレーニングは非常に役立ちます。
まとめ
この記事では、転倒予防について、以下の項目を解説しました。
- 転倒災害の主な原因
- 加齢に伴う体の変化
- セルフチェック
- 3分間のカラダづくり体操
労働中の転倒や転落は、年々増加傾向にあります。企業は従業員に健康かつ安全に働いてもらうため、日々取組める運動方法を実施することが大切です。
ぜひこの機会に、加齢でリスクが高まる転倒予防が期待できる“3分間のカラダづくり体操”を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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