PFS(成果連動型民間委託契約方式)の事例。主な事業分野や施策内容

オフィスで握手を交わす男性


地方自治体の課題を解決するための新たな官民連携の手法として“成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)(以下、PFS)“が推進されています。

地域の企画財政課や高齢福祉課、健康増進課の担当者のなかには「PFSの事業分野には何があるのか」「ほかの地域ではどのような施策が行われているのか」と気になる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、PFSの基礎知識や主な事業分野、地方自治体の実施事例について解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.PFS(成果連動型民間委託契約方式)について
  2. 2.PFSによる官民連携が行われる事業分野
  3. 3.地方自治体が実施したPFS事業の事例
    1. 3.1.➀【健康・医療】大腸がん検診・精密検査の受診率向上
    2. 3.2.②【健康・医療】服薬相談・見直しの勧奨
    3. 3.3.③【介護】介護予防の『あ・し・た』プロジェクト
    4. 3.4.④【介護】高齢者の身体・認知機能維持に向けたリハビリ支援
    5. 3.5.⑤【就労支援】社会的孤立者への訪問支援
  4. 4.ルネサンスとの協働による地域課題の解決支援
  5. 5.【広島県福山市の事例】ふくやまSHINKAプロジェクト
  6. 6.まとめ


PFS(成果連動型民間委託契約方式)について

PFSは、自治体が民間事業者に委託する事業の一種です。従来の委託事業と異なるPFSの特徴として、主に以下が挙げられます。


▼PFSの特徴

  • 具体的な成果指標を設定してから発注する
  • 施策内容は民間事業者が検討・決定する
  • 成果指標の達成度合いに応じた委託料を民間事業者に支払う


一般的な委託事業では、特定の取り組みやサービスなどの仕様を発注して、固定の委託料を民間事業者に支払います。

これに対してPFSでは、「○○の健診受診率を向上させる」といった成果を設定して発注を行います。民間事業者に支払う委託料は、事前に設定した成果指標に基づく評価によって変動する仕組みとなります。

PFS事業により、民間事業者が持つ知識・ノウハウを最大限に生かすことが可能です。また、成果指標に応じて報酬が変わるため、意欲的な取り組みが行われやすくなり、事業による獲得成果が高まると考えられます。その結果、地域の効果的な予算の活用と課題解決につながると期待されます。

PFSと従来型事業の違いやメリットは、こちらの記事をご確認ください。

  成果連動型民間委託契約方式とは。従来型の事業に対するメリットと実施のポイント 地域の個性や強みを生かして成長を図るためには、官民連携が重要です。新たな官民連携の手法として注目されているのが、『成果連動型民間委託契約方式』です。この記事では、成果連動型民間委託契約方式の概要やメリット、実施のポイントについて解説します。 株式会社ルネサンス



PFSによる官民連携が行われる事業分野

地方自治体が実施するPFSには、さまざまな事業分野があります。


▼PFSの事業分野

事業分野
主な目的
医療・健康
地域住民の健康寿命の延伸、医療費の削減 など
介護
高齢者の認知症予防や自立支援を通じた健康寿命の延伸、介護費の適正化 など
再犯防止
青少年への学習・進学支援による生活基盤の安定化、再犯・再非行の防止 など
まちづくり
地域活性化や競争力強化による地域の担い手確保、住民同士のつながり創出 など
就労支援
就労による自立を通じた生活保護費の抑制、高齢者の社会参加による生きがいづくり など
環境保護
脱炭素社会への貢献、自然環境保護 など


上記のうち、医療・健康、介護、再犯防止の3つの事業については、政府が重点的に取り組む分野として実施を推進しています。

内閣府が公表した『国内におけるPFS事業の取組状況について』によると、2024年末時点の国内におけるPFS事業の案件数は累計323件となっており、長期的に見て増加している傾向があります。


▼PFS事業案件数の推移

PFS事業案件数の推移のグラフ

画像引用元:内閣府『国内におけるPFS事業の取組状況について


2012年度のPFS事業は1件のみでしたが、2024年度は47件となっています。

また、事業分野ごとの案件数を見ると、重点的な3分野で累計246件の事業が実施されており、全体の76%に該当します。


▼【事業分野別】PFS事業の累計案件数

【事業分野別】PFS事業の累計案件数の円グラフ

画像引用元:内閣府『国内におけるPFS事業の取組状況について


さまざまなPFS事業の分野があるなかで医療・健康が35%、介護が39%と多くを占めていることが分かります。


出典:内閣府『国内におけるPFS事業の取組状況について



地方自治体が実施したPFS事業の事例

ここからは、地方自治体が実施したPFS事業の事例を紹介します。


➀【健康・医療】大腸がん検診・精密検査の受診率向上

東京都八王子市では、健康寿命の延伸と医療費負担の抑制を図るために、PFS事業によって大腸がん検診・精密検査の受診率向上に取り組まれています。


▼課題

  • 健診の未受診・不定期受診層が存在していた
  • 大腸がん精密検査の受診率が80%で前後しており、国の目標値となる90%に近づける必要があった
  • 地方自治体の財源確保のために医療費の削減が必要だった


▼目指す成果

  • 大腸がんの早期発見・早期治療による健康寿命の延伸
  • 地方自治体と市民の双方における医療費負担の抑制


▼施策内容

予防医療・保健サービスを展開する民間事業者と連携して、国民健康保険の被保険者で健診未受診者(約6.5万人)のなかから、AIを利用して受診確率の高い1.2万人を抽出して受診勧奨通知を実施しました。


▼事業効果

健診の受診率向上と早期のがん発見により、約39,144,000円の医療費を適正化する効果につながりました。


出典:内閣府『国内のPFS/SIBの事業例』『大腸がん検診・精密検査受診率向上事業


②【健康・医療】服薬相談・見直しの勧奨

大分県別府市・中津市・豊後大野市では、多剤投薬者に対する服薬見直しの勧奨をPFS事業によって実施しました。


▼課題

医療費に占める薬剤費が大きく重複服薬が発生していた


▼目指す成果

重複服薬の削減による医療費の適正化


▼施策内容

予防医療を支援する民間事業者と連携して、定期処方かつ重複服薬の対象者をAIによって抽出して、服薬相談を促すはがきを送付しました。また、お薬手帳の携帯を呼びかけるチラシを作成して各薬局に配布しました。


▼事業効果

98剤の薬剤が削減され、重複服薬の適正化につながりました。


出典:内閣府『No.3 多剤投薬者等への服薬見直しの勧奨による健康増進と医療費適正化』『服薬指導


③【介護】介護予防の『あ・し・た』プロジェクト

大阪府堺市では、高齢者の介護予防・自立支援をPFS事業によって実施しました。


▼課題

  • 要介護認定率が国や大阪府の平均値よりも高く、軽度者の割合が多い
  • 介護給付費が増加している


▼目指す成果

  • 高齢者の生活の質向上
  • 介護給付費の適正化


▼施策内容

要介護認定を受けていない人や介護予防の無関心層を対象に、あるく(運動)・しゃべる(社会参加)・たべる(食生活・口腔機能)の3つの要素を取り入れたフレイル予防に効果的なプログラムを実施しました。


▼事業効果

192人の参加者に要介護状態の進行を遅らせる成果が見られ、約118,840,000円の介護給付費の適正化効果につながりました。


出典:内閣府『国内のPFS/SIBの事業例』『介護予防「あ・し・た」プロジェクト


④【介護】高齢者の身体・認知機能維持に向けたリハビリ支援

島根県雲南市では、高齢者を対象としたショッピングを通じたリハビリ支援をPFS事業によって実施しました。


▼課題

  • 高齢化に伴う医療費・介護給付費の増加
  • 買い物施設までアクセスが困難な高齢者の増加


▼目指す成果

  • 高齢者の身体・認知機能の維持による健康寿命の延伸
  • 医療費・介護給付費の適正化


▼施策内容

市内のショッピングセンターにサロンを開設して、実際の買い物を通じたリハビリと健康体操を実施しました。また、サロンから参加者の自宅への送迎や、健康と生活上に関する困りごとの確認も行いました。


▼事業効果

ショッピングリハビリの出席率は87.9%と目標の80%を上回る結果となったほか、20名の参加者に運動・認知機能の好転が見られました。


出典:内閣府『No.5 ショッピングリハビリ(総合事業)の提供による高齢者の身体・認知機能の維持改善(島根県雲南市)』『ショッピングリハビリによる介護予防事業


⑤【就労支援】社会的孤立者への訪問支援

千葉県佐倉市では、社会的孤立状態となっている住民に対してPFS事業による就労支援を実施しました。


▼課題

外出困難な人やさまざまな理由から既存の就労支援プログラムに参加できない人

が増えることによる、将来的な生活保護費の増加


▼目指す成果

  • 就労による自立
  • 将来的に見込まれる生活保護費の抑制による税収の増加


▼施策内容

民間事業者の自立相談窓口に相談があった人から社会的孤立状態の人を抽出して、訪問支援(アウトリーチ)を実施しました。


▼事業効果

就労の意欲向上や必要な能力向上などのステップアップにつながったスコアが2.45となり、目標値の1.4を上回る結果となりました。


出典:内閣府『No.9 引きこもり等の社会的孤立者へのアウトリーチによる就労に向けたステップアップ支援(千葉県佐倉市)』『引きこもり等の社会的孤立者へのアウトリーチによる就労に向けたステップアップ支援



ルネサンスとの協働による地域課題の解決支援

ルネサンスでは、地域住民の健康づくりや高齢者への介護予防、地域資源の有効活用など、地方自治体が抱えるさまざまな課題の解決を支援しています。


▼ルネサンスによる地域課題の解決支援

  • 地域住民の健康づくり支援
  • 介護予防事業の企画・実施
  • 多世代が交流できる拠点の創出・活動支援
  • 遊休施設や空きスペースなどの資源活用 など


ここからは、地域の健康づくりや介護予防事業をサポートした事例を紹介します。



【広島県福山市の事例】ふくやまSHINKAプロジェクト

広島県福山市とルネサンスが協働で取り組む『ふくやまSHINKAプロジェクト』は、65歳以上の市民を対象とした介護予防プログラムです。運動や文化活動などを通して、フレイルの防止、社会参加の促進、豊かな生活づくりを支援しています。


▼目指す成果

直接的な身体的トレーニングだけでなく、人とのふれ合いや趣味活動を通じてQOL(生活の質)の向上を目指すことによる介護予防・認知機能低下予防


▼施策内容

ルネサンスのトレーナー・専任講師などによる運動教室や生活習慣の指導など、正しい健康知識の習得と実践ができるプログラムを実施しました。


施策
概要
ウォーキング教室
効果的なウォーキング方法や正しい歩き方を習得するためのストレッチ、筋力トレーニングの指導
プロ監修の運動プログラム
脳の活性化を図る『シナプソロジー®』や健康維持増進のための『フレイル体操』を基礎にした筋力トレーニング・ストレッチの指導
健康! スマホ教室
基本的なスマートフォンの使い方やセルフケア能力の向上を目指したICT活用方法の指導


▼成果

体を動かすことだけでなく社会参加の機会を創出して住民同士の交流を促すことにより、フレイル発症リスクの低下につなげています。

※フレイルとは、加齢により心身の活力が低下して要介護リスクが高まった状態のこと



まとめ

この記事では、PFSについて以下の内容を解説しました。


  • PFSの特徴
  • PFSによる官民連携が行われる事業分野
  • 地方自治体が実施したPFS事業の事例
  • ルネサンスとの協働による地域課題の解決支援


地方自治体では、健康・医療や介護、まちづくり、就労支援などのさまざまな分野で民間事業者と連携するPFS事業が行われています。

PFSによる官民連携を行うことで、民間事業者が持つ知識やノウハウを用いたより専門的かつ効果的な施策を実施できます。

ルネサンスでは、地域課題を解決するための事業構想から計画の立案、実行に至るまで一貫した支援を行っております。地域住民の健康づくりや高齢者の介護予防、地域のにぎわい創出などの事業もお任せください。

地域の健康づくりや介護予防事業に関する資料は、こちらからご確認いただけます。ぜひご活用ください。

  地域・自治体の健康づくりお役立ち資料 ルネサンスならではの健康ソリューションに関する詳しい資料は当ページからダウンロードいただけます。スポーツ事業に長年従事して培ったノウハウとスキルを活かし、自治体・地域住民の健康づくりを支援するさまざまな健康ソリューションを提供します。 株式会社ルネサンス


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