成果連動型民間委託契約方式とは。従来型の事業に対するメリットと実施のポイント


地域の個性や強みを生かして成長を図るためには、官民連携が重要です。しかし、少子高齢化や人口減少の進行に加えて新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、行財政の面でより効率的な手法が求められています。

新たな官民連携の手法として注目されているのが、『成果連動型民間委託契約方式』です。

自治体の企画財政課や高齢福祉課、健康増進課の担当者のなかには、「成果連動型民間委託契約方式のメリットが知りたい」「実施する際に何かポイントはあるのか」などと気になる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、成果連動型民間委託契約方式の概要やメリット、実施のポイントについて解説します。


目次[非表示]

  1. 1.成果連動型民間委託契約方式とは
  2. 2.成果連動型民間委託契約方式のメリット
  3. 3.PFS事業を実施する際のポイント
    1. 3.1.①取り組む社会課題を明確にする
    2. 3.2.②正確な評価が行える成果指標を定める
    3. 3.3.③事業の重要性に応じてWTPを決定する
  4. 4.まとめ


成果連動型民間委託契約方式とは

成果連動型民間委託契約方式とは、自治体が民間事業者に委託して実施する事業における方式の一つです。PFSとも表記され、この方式による事業はPFS事業と呼ばれます。

成果連動型民間委託契約方式では、従来型の委託事業とは異なり、委託費が成果指標値の改善状況に連動する点が特徴です。


▼従来型事業とPFS事業の違い

従来型事業とPFS事業の違い

画像引用元:内閣府『成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)共通的ガイドライン


また、PFS事業のうち、民間事業者が資金提供者(PSI)から資金を調達したうえで、自治体から受けた支払に応じて返済を行う形式のものはSIBと呼ばれます。


出典:内閣府『成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)共通的ガイドライン



成果連動型民間委託契約方式のメリット

成果連動型民間委託契約方式を活用すると、従来型の委託事業と比較して以下のメリットが期待できます。


▼成果連動型民間委託契約方式のメリット


メリット
自治体
  • 成果指標の改善につながるインセンティブが効果的に働く
  • 民間事業者の意欲を向上させて、ノウハウを引き出しやすくなる
  • 支払額の適正化によって費用対効果の改善が期待できる
民間事業者
  • 決められた仕様に縛られずに自社のノウハウを発揮できる
  • 価格競争ではなく、質の高さで事業者が選ばれやすくなる
  • ベンチャー・中小企業にも事業参画機会が期待できる


一方で、行政職員の間で成果連動型民間委託契約方式への理解がまだ十分に進んでいないことが課題です。そのため、大掛かりな事業を行ううえでの上席との合意形成が行えず、活用に踏み切れないケースも見られます。



PFS事業を実施する際のポイント

PFS事業の実施にあたっては、取り組む社会課題や事業の成果指標、WTPについて事前に決めておくことがポイントです。

※WTPとは、willingness to payの略で製品やサービスに対して顧客が自ら支払う意思を持てる最大の金額のこと


①取り組む社会課題を明確にする

PFS事業の実施を検討する際は、自治体における社会課題を明確にする必要があります。PFS事業として取り組む社会課題の例としては、以下が挙げられます。


▼PFS事業で取り組む社会課題の例

  • 従来型事業で解決に至っていない課題
  • 解決のために新たな取り組みが必要と考えられる課題 など


また、その社会課題のノウハウを有する民間事業者が存在するかどうかを確認しておくことも重要です。


②正確な評価が行える成果指標を定める

PFS事業では、成果指標に応じて支払額が決まるため、正確な評価が行える成果指標が必要となります。

客観的なデータで定量的に評価できる必要があるほか、歪んだインセンティブを避けることも重要です。歪んだインセンティブとは、成果指標値を改善しても事業の目的が達成されないような行動を引き起こす可能性を指します。


▼歪んだインセンティブの例

歪んだインセンティブ
成果指標値を改善しやすい
対象に集中させる
健康増進に関する事業で、健康意識の高い人ばかりを対象にする
成果を達成できない可能性の高い
対象を無視する
介護予防に関する事業で、改善が見込めない人に対してサービスを提供しない
事業目標や行政課題の解決に反する
状況が​​​​​​​意図せずに生まれる
介護予防に関する事業でリハビリを強要したことで、介護予防の事業目標は達成できたものの、対象者のQOLが下がってしまう


③事業の重要性に応じてWTPを決定する

WTPとは、自治体が目指す成果を達成するために支払ってもよいと判断する最大限の額のことです。

WTPは、最終的な事業予算額の上限となります。WTPを設定する際には、以下の観点で事業の重要性を判断する必要があります。


▼事業の重要性に関する判断基準

  • 住民のニーズ
  • 科学的なエビデンス
  • 既存事業のコストと実績 など


また、意思決定の根拠や議論の流れを公開して透明性を確保することも重要です。



まとめ

この記事では、成果連動型民間委託契約方式について以下の内容を解説しました。


  • 成果連動型民間委託契約方式とは
  • 成果連動型民間委託契約方式のメリット
  • PFS事業を実施する際のポイント


成果連動型民間委託契約方式とは、自治体が民間事業者に委託して実施する事業における方式の一つで、それによる事業をPFS事業と呼びます。成果連動型民間委託契約方式を活用すると、民間企業の意欲が向上して、成果指標もより改善されやすくなることが期待されます。また、支払額の適正化にもつながります。

PFS事業を実施する際は、取り組む社会課題や成果指標の設定、予算の上限となるWTPの設定が重要となります。

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