プレコンセプションケアとは。企業による啓発活動の必要性と取り組み
従業員の健康意識を向上させる取り組みのテーマとして、新たに“プレコンセプションケア”が注目されています。
健康経営®(※)に取り組む優良な企業を顕彰する『健康経営銘柄』『健康経営優良法人(大規模法人部門)』の認定に必要な『健康経営度調査』にも、令和6年度から新たにプレコンセプションケアの項目が追加されています。
人事部門・健康経営推進部門では、プレコンセプションケアの必要性や企業ができる取り組みについて理解を深めることが求められます。
この記事では、プレコンセプションケアの定義や必要性、企業による取り組みについて解説します。
なお、令和6年度における健康経営度調査の改訂ポイントについては、こちらの記事をご確認ください。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
出典:経済産業省『健康・医療新産業協議会第12回健康投資WG』
目次[非表示]
- 1.プレコンセプションケアとは
- 2.企業がプレコンセプションケアを取り入れる必要性
- 3.企業によるプレコンセプションケアの取り組み
- 3.1.➀意識啓発セミナーの実施
- 3.2.②相談窓口の設置
- 3.3.③健康管理や両立支援に関する制度の導入
- 4.まとめ
プレコンセプションケアとは
プレコンセプションケア(Preconception care)とは、将来の妊娠を考えながら、当事者の女性のみならずパートナーと共に、生活や健康などに向き合うことです。
また、プレコンセプションケアのプレには“pre(~の前に)”、コンセプションには“conception(妊娠、受胎)”という意味があります。
2023年12月に閣議決定された『こども未来戦略』では、以下のように定義されています。
▼プレコンセプションケアの定義
男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身に付け、健康管理を行うよう促すこと。
引用元:内閣官房『「こども未来戦略」』
プレコンセプションケアに取り組む目的には、大きく3つが挙げられています。
▼プレコンセプションの目的
①若い世代の健康を増進し、より質の高い生活を実現してもらうこと
②若い世代の男女が将来、より健康になること
③ ①の実現によって、より健全な妊娠・出産のチャンスを増やし、次世代の子どもたちをより健康にすること
引用元:厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト 事務局『「プレコンセプションケア」をみんなの健康の新常識に』
妊娠を現時点で希望している女性だけでなく、若い世代から健康管理に取り組むことは、将来にわたって健康な体をつくり、健全な妊娠・出産を目指すうえで重要と考えられています。
また、妊娠による経済的な負担やキャリア機会の損失、望まぬ不妊などの問題に対応するためにも、性と妊娠に対するヘルスリテラシーの向上が求められます。
出典:内閣官房『「こども未来戦略」』/厚生労働省 SMART LIFE PROJECT『「プレコンセプションケア」をみんなの健康の新常識に』
企業がプレコンセプションケアを取り入れる必要性
少子化により労働生産人口がさらに減少する日本社会においては、さまざまな人が活躍できる社会をつくることが必要です。人々のライフステージ・価値観が多様化するなかで、企業には従業員が望む生き方やキャリアを歩めるように支援することが求められています。
誰もが生き生きと活躍し続けられる職場環境を整備するために、性差を問わず、健康や妊娠についての正しい理解を促すことが必要です。
働く女性が抱えやすい性や妊娠に関する悩みには、以下が挙げられます。
▼女性が抱えやすい悩み
- 不妊治療や月経、更年期症状などの女性特有の健康課題を相談しづらい
- 業務の繁忙期や転勤などを気にして、妊娠・出産の時期を遅らせる
- 妊娠を考えるようになって初めて健康課題や仕事との両立問題に直面した など
プレコンセプションケアを取り入れることで、女性の健康・妊娠に対する理解が深まり、相手を思いやる組織風土が醸成されると期待できます。
心身ともに健康かつ幸福な状態を指す“ウェルビーイング(Well-Being)”を実現するうえでも、企業にとって意義のある取り組みといえます。
なお、ウェルビーイングが注目される理由や効果的な取り組みについては、こちらの記事をご確認ください。
企業によるプレコンセプションケアの取り組み
企業がプレコンセプションケアを取り入れる際は、正しい知識と意識の向上に向けた啓発活動を行うとともに、制度面で健康管理や妊娠・出産に関する支援を行うことがポイントです。
➀意識啓発セミナーの実施
プレコンセプションケアに関するセミナーを実施して従業員の意識啓発を行う取り組みがあります。
健康や妊娠に向き合う機会を設けることにより、女性従業員がライフステージを考えるきっかけにつながったり、パートナーとの話し合いを促したりできます。
また、女性特有の健康問題や悩みについて理解を深めることで、男性従業員も含めた周囲によるサポートが促進される効果も期待できます。
▼意識啓発セミナーのテーマ例
- 将来に向けた健康のためのケア
- 女性特有の健康課題
- 妊娠・出産のための健康づくり
- 喫煙・飲酒による影響 など
②相談窓口の設置
女性従業員やその家族が専門家に相談できる窓口を設置する方法があります。
女性の健康問題や妊娠・出産に関する悩みを安心して相談できる窓口を設けることにより、セルフケアを促せるほか、必要に応じて医療機関の受診を勧められます。
また、仕事とプライベートのバランスに悩む従業員に対しては、業務上のフォローや特別休暇の提供などの両立支援を検討することが可能です。
▼相談窓口での取り組み例
- キャリアコンサルタントによる個別面談の実施
- 産業保健師による定期的な女性向け健康相談会の実施 など
③健康管理や両立支援に関する制度の導入
ライフステージが変わっても活躍し続けられる職場環境を整備するために、健康管理や両立支援に関する制度を導入することも重要です。
妊娠前から出産後まで、健康面でのケアや仕事との両立を切れ目なく支援する制度を導入することで、安心して妊娠・出産を迎えられるほか、スムーズな復職が可能になります。
▼健康管理や両立支援に関する制度の例
支援目的 |
制度 |
女性の健康管理 |
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出産・育児の両立支援 |
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まとめ
この記事では、プレコンセプションケアについて以下の内容を解説しました。
- プレコンセプションケアの概要
- 企業がプレコンセプションケアを取り入れる必要性
- 企業によるプレコンセプションケアの取り組み
プレコンセプションケアを通じて性や妊娠に対する正しい理解を促すことは、従業員が自身のライフステージを考えたり、必要なケアを行ったりするきっかけになります。
誰もが生き生きと活躍できる職場環境を目指すために、男女問わずプレコンセプションケアに関する啓発活動を行うことが重要です。
企業ができる具体的な取り組みには、セミナーの実施や女性を対象とした相談窓口の設置、健康管理と両立支援に関する制度の導入などが挙げられます。
『ルネサンス』では、企業の健康経営をサポートするサービスを多数用意しています。プレコンセプションケアをはじめ、生活習慣の見直しやメンタルヘルスケアに役立つさまざまなプログラムがあり、企業の健康課題に合わせた活用が可能です。
健康経営に関するサービスについては、こちらの資料をご確認ください。