運動器機能向上加算の廃止による影響とは。減収に対応するために介護施設はどう対策するのか
介護サービスを提供した際に事業者に支払われる介護報酬の取り決めは、介護の現状や社会の状況に合わせて改定が行われています。
2024年の介護報酬改定では、介護報酬における加算の一つの運動器機能向上加算が廃止されました。
介護施設の担当者のなかには、「運動器機能向上加算の廃止でどのような影響があるのか」「運動器機能向上加算の廃止への対策を知りたい」などとお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、運動器機能向上加算の概要や廃止による影響、廃止への対策について解説します。
出典:厚生労働省『令和6年度介護報酬改定における改定事項について』
目次[非表示]
- 1.運動器機能向上加算とは
- 2.運動器機能向上加算の廃止による影響
- 3.運動器機能向上加算の廃止への対策
- 3.1.口腔機能向上加算の取得
- 3.2.科学的介護推進体制加算の取得
- 3.3.個別機能訓練加算の取得
- 4.まとめ
運動器機能向上加算とは
運動器機能向上加算とは、介護報酬における加算の一つです。
通所型の介護サービスにおいて、運動器機能向上サービスを提供する事業者に算定されていました。運動器機能向上サービスの提供により、利用者が要介護状態にならずに自立した日常生活を送れるように支援することを目的とする加算です。
2024年の介護報酬改定では、運動機能向上加算に加えて事業所評価加算(※)も廃止されたことで、これまでこれらの加算を算定していた介護施設においては減収が生じると考えられます。弊社の例として、合わせて月に最大12万円の減収が想定されるケースもあります。
※事業所評価加算とは、選択的サービスを行う介護施設における、効果的なサービスの提供を評価する加算です。利用者の要支援状態について、維持・改善の割合が一定以上となった場合に算定されます。
出典:厚生労働省『令和6年度介護報酬改定における改定事項について』
運動器機能向上加算の廃止による影響
運動器機能向上加算は、2024年の介護報酬改定により廃止されて、基本報酬に包括化されました。
▼運動器機能向上加算の基本報酬への包括化
画像引用元:厚生労働省『介護保険最新情報 Vol.1210令和6年3月7日』
包括化によって基本報酬の単位数が増加したものの、増加幅は運動器機能向上加算で算定されていた単位数の月225単位には及びません。
そのため、運動器機能向上加算を算定していた介護施設においては、ほかの介護報酬加算を追加で取得して減収を補うことが重要となります。
出典:厚生労働省『令和6年度介護報酬改定における改定事項について』『介護保険最新情報 Vol.1210令和6年3月7日』
運動器機能向上加算の廃止への対策
運動器機能向上加算の廃止による減収への対策として取得が有効な加算としては、口腔機能向上加算や科学的介護推進体制加算、個別機能訓練加算などが挙げられます。
口腔機能向上加算の取得
口腔機能向上加算は、利用者に対して口腔機能の向上を図る取り組みを行った際に算定される加算です。口腔機能の低下による誤嚥や肺炎などのリスク防止を目的としています。
具体的な取り組み例は、以下のとおりです。
▼口腔機能の向上を図る取り組み
- 口腔機能向上の必要性についての教育
- 口腔清掃の自立支援
- 摂食・嚥下機能の向上支援 など
口腔機能向上加算は月に2回まで算定でき、5級地の通所介護施設において口腔機能向上加算を72名に算定した場合には、以下の収益が期待できます。
▼口腔機能向上加算で期待できる収益の例
追加で算定する加算 |
単位数 |
収益想定 |
口腔機能向上加算(Ⅰ) |
150単位(1ヶ月)×2 |
225,720円 |
口腔機能向上加算(Ⅱ) |
160単位(1ヶ月)×2 |
240,768円 |
なお、口腔機能向上加算についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:厚生労働省『口腔・栄養(自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進)』
科学的介護推進体制加算の取得
科学的介護推進体制加算とは、科学的介護情報システム(以下、LIFE)の活用を推進する加算です。2021年の介護報酬改定で新設されました。
LIFEは、データを活用したケアの見直し・改善の支援を目的とした情報システムです。介護施設の利用者についてLIFEでデータを提出してフィードバックを受けることで、PDCAサイクルによる改善やケアの質向上を図れます。
▼LIFEで提出するデータの例
- ADL(日常生活動作)の状況
- 栄養状態
- 口腔・嚥下機能
- 認知症の進行状況 など
5級地の通所介護施設において科学的介護推進体制加算を72名に算定した場合には、以下の収益が期待できます。
▼科学的介護推進体制加算で期待できる収益の例
追加で算定する加算 |
単位数 |
収益想定 |
科学的介護推進体制加算 |
40単位(1ヶ月) |
30,096円 |
科学的介護推進体制加算についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
出典:内閣府『介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進(その1)(令和3年度介護報酬改定)』/厚生労働省『地域区分について』
個別機能訓練加算の取得
個別機能訓練加算とは、利用者一人ひとりに合わせた個別訓練を実施した際に算定される加算です。利用者が住み慣れた地域・居宅で、可能な限り自立して暮らし続けられるように支援することを目的とします。
個別機能訓練を行う際は、利用者ごとに以下を把握する必要があります。
▼個別機能訓練において把握する項目
- 利用者のニーズ・興味関心
- 日常生活や社会生活における役割
- 心身の状態
5級地の通所介護施設において個別機能訓練加算を72名に算定した場合には、以下の収益が期待できます。
▼個別機能訓練加算で期待できる収益の例
追加で算定する加算 |
単位数 |
収益想定 |
個別機能訓練加算(Ⅰ)イ |
56単位(1日) |
42,134円 |
個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ |
76単位(1日) |
57,182円 |
個別機能訓練加算(Ⅱ) |
20単位(1ヶ月) |
15,048円 |
この際、個別機能訓練加算(Ⅱ)は、個別機能訓練加算(Ⅰ)に上乗せして算定できます。
個別機能訓練加算についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
出典:厚生労働省『令和6年度介護報酬改定における改定事項について』『地域区分について』『令和3年度介護報酬改定の主な事項について』
まとめ
この記事では、運動器機能向上加算の廃止による影響について以下の内容を解説しました。
- 運動器機能向上加算とは
- 運動器機能向上加算の廃止による影響
- 運動器機能向上加算の廃止への対策
2024年の介護報酬改定により、運動器機能向上加算が廃止されて基本報酬に包括化されました。包括化による基本報酬の増加幅は運動器機能向上加算の単位数よりも少ないため、介護施設の減収につながると想定されます。
運動器機能向上加算の廃止による減収への対策としては、ほかの加算を取得して補う方法が考えられます。
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