高齢者の社会参加はなぜ重要? 現状の課題や参加を促す取り組みを解説
人生100年時代を迎える今、高齢者が自分らしく豊かに過ごすために、健康状態の維持と社会の一員として末永く活躍できる環境の整備に取り組むことが求められています。
自治体においては、地域で暮らす高齢者に役割や居場所を提供して、一人ひとりの希望に応じて社会参加ができるような支援事業を展開することが重要です。
自治体で健康福祉や高齢者支援を行っている担当者のなかには、「既存事業だけでは参加者層が限られてしまう」「新たな層にも参加してもらいたいけれど、どのような情報提供や活動を行えばよいか分からない」などと悩まれている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、高齢者による社会参加の重要性や現状課題、参加を促進させる取り組みについて解説します。
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目次[非表示]
- 1.社会参加とは
- 1.1.①地域活動
- 1.2.②社会的組織への参加
- 1.3.③教育・啓発活動への参加
- 1.4.④ボランティア活動
- 1.5.⑤政治参加
- 2.高齢者による社会参加の重要性
- 3.高齢者の社会参加に関する課題
- 3.1.地域による情報提供が不足している
- 3.2.社会活動の場が限られている
- 3.3.地域住民同士のつながりが薄い
- 4.高齢者の社会参加を促進する自治体での取り組み
- 5.ルネサンスと自治体で高齢者の社会参加を促進した事例
- 6.まとめ
社会参加とは
一般的に、社会参加とは「障害の有無にかかわらず、個人やグループが社会全体で活動し、貢献し、関与すること」を指します。主な例としては、以下のような活動や取り組みが挙げられます。
①地域活動
地域活動は、主に居住地を中心とした地域のイベントやプログラムへの参加を指します。たとえば、地域エリアの改善活動であったり、または近隣のコミュニティへの関与などが含まれます。
②社会的組織への参加
社会的組織への参加は、クラブや団体、サークル、スポーツチーム、または文化的な活動を行う団体などへの所属や参加を指します。地域活動とは異なり、所属する組織や段階の中で明確な役割や地位を得ることもあります。
③教育・啓発活動への参加
教育・啓発活動への参加は、講義やセミナー、ワークショップなどへの参加を指します。知識を広めることを目的としており、広義の意味では上述の「社会的組織」に含まれます。
④ボランティア活動
ボランティア活動は、社会のために無給で行われる活動です。地域における自治会の活動や、地域の子供たちとのふれあい、幼稚園や小学校での読み語りなども、ボランティア活動に含まれます。
⑤政治参加
政治参加は、投票や政治的議論、または政策提言や政府の活動に参加する活動を指します。その範囲は市区町村の地方自治体だけでなく、国政レベルでの活動も含まれます。
高齢者による社会参加の重要性
少子高齢化の進行によって超高齢化社会を迎えている日本において、地域での生活を持続的かつ安心で豊かなものにするためには、高齢者の社会参加が重要です。
近年、少子高齢化が急速に進み、単独・夫婦のみの高齢者世帯や要介護者数が増加しています。これにより、生活支援を必要とする高齢者が増えると考えられます。
▼65歳以上の人がいる世帯数と構成割合
画像引用元:内閣府『令和5年版 高齢社会白書(全体版)』
▼65歳以上の第1号被保険者における要介護者数の推移
画像引用元:内閣府『令和5年版 高齢社会白書(全体版)』
一方で、生活支援を行う家族や介護人材の不足、地域とのつながりの希薄化などによって高齢者を支える力は低下すると懸念されています。
高齢者の社会参加を促進することで、社会や生活支援の担い手として活躍する共助の地域社会の実現につながります。
また、社会参加を通して人と人との関わりを持ったり、これまで培った経験を生かしたりすることによって、高齢者自身の生きがいや活力の創出につながります。社会的な活動量が増えることは、生活機能の低下予防や認知症の予防にも有効とされています。
▼高齢者による社会参加の具体例
- 地域でのボランティア活動
- 農業や生活支援、子育て支援、福祉などの分野での就労
- 趣味やスポーツ、学習グループによる自己啓発活動 など
出典:厚生労働省『あたまとからだを元気にするMCIハンドブック』/内閣府『令和5年版高齢社会白書(全体版)』
高齢者の社会参加に関する課題
内閣府の『令和5年版高齢社会白書』によると、65歳以上の高齢者のうち1年間のなかで社会活動に参加した人の割合は51.6%でした。
▼高齢者による社会活動の参加状況
画像引用元:内閣府『令和5年版 高齢社会白書(全体版)』
この結果を見ると、高齢者のうち約半数の人は社会参加に関わる活動を行っていない状況と分かります。高齢者の社会参加が進まない原因には、本人の健康状態や家庭の事情によるものを除くと、以下が考えられます。
出典:内閣府『令和5年版高齢社会白書(全体版)』
地域による情報提供が不足している
社会参加の情報が少ない、または高齢者に届いておらず、「どのような活動があるのかを知らない」ことが原因の一つに考えられます。
また、地域の社会的なネットワークが希薄になっている場合、高齢者に社会参加の意欲があったとしても、参加のきっかけを得られない可能性があります。
自治体では、地域で暮らす高齢者へと活動場所に関する情報提供を円滑に行える基盤を整えることが求められます。
社会活動の場が限られている
気軽に参加できる社会活動の場が少なかったり、活動場所が近くになかったりすることから、社会参加に参加する機会がない人もいると考えられます。
また、高齢者自身にとって魅力的な社会活動がない場合には、参加したいと思わないケースもあります。
自治体が高齢者の社会参加を促すには、特別な技術・経験がなくても気軽に参加しやすい活動や、個人の能力を活かせる多様な活動を実施することが求められます。
地域住民同士のつながりが薄い
友人や仲間との交流がない高齢者のなかには、一人で社会活動に参加することに抵抗を持つ人もいます。
地域住民同士の交流がない場合には、社会活動に対する情報の共有や後押しがなされず、積極的な参加につながりにくくなります。
積極的な社会参加を促すには、地域住民同士のつながりを生む場を提供して、新たな友人や仲間づくりの手助けを行うことが必要といえます。
高齢者の社会参加を促進する自治体での取り組み
自治体で高齢者の社会参加を促進するには、地域による情報発信を充実させて、「参加してみたい」と思ってもらえる魅力的な活動を提供することが重要です。
①地域住民の交流を生む通いの場の充実
高齢者の社会参加を促すために、地域住民が気軽に交流できる通いの場を充実させることが重要です。
高齢者同士・多世代が交流できる機会を創出することで、友人や仲間づくりを後押しして地域共助の意識向上につながります。その結果、社会活動に参加するきっかけとなる可能性が期待できます。
通いの場をつくる際は、自治体の空きスペースや遊休施設、空き地などを活用して、気軽に参加できるプログラムを実施することが有効です。
▼通いの場をつくる取り組み例
- 運動や体操などを取り入れた高齢者向けの健康教室を実施する
- 講師を招いて料理教室や園芸などの趣味活動を実施する
- 高齢者ボランティアによる子育てイベントや見守りなどの実施 など
②個々のスキル・知識を生かせる場の創出
高齢者が培ってきたスキルや知識を次世代に伝えられる場を創出することも、社会参加を促すために有効な取り組みといえます。
個々が持つスキル・知識が生かせる多様な社会活動の場を設けることで、地域に貢献する取り組みとして参加意欲の向上につながると期待できます。
▼社会活動の例
活動 |
概要 |
地域学校協働活動 |
地域と学校が連携して子どもたちの学びや成長を支える活動。郷土学習や放課後の体験活動などに高齢者の趣味やスキルが役立てられる。 |
高齢者生きがい活動促進事業 |
有償ボランティア活動によって一定収入を得ながら、高齢者自らの生きがいや健康づくりにつなげられる。 |
出典:文部科学省『地域学校協働活動 』/厚生労働省『地域における高齢者の健康・生きがいづくりの推進について』
③ICT活用による情報共有とマッチングの支援
ICTを活用してオンラインによる情報提供と活動の場に関する紹介を行う方法があります。自治体での地域課題を把握して、社会参加をしたい高齢者と活動の場を結びつけることで地域共助の構築に役立つと考えられます。
▼ICT活用例
- 社会参加のためのオンラインプラットフォームを構築して、情報発信や社会活動の紹介を行う
- SNSを活用して自治体による社会参加の情報発信や参加者側の要望・課題の収集を行う
- 地域住民同士が困りごとを相談できるSNSを構築する
オンラインプラットフォームを構築すると、高齢者が社会参加に関する相談をしたり、社会活動の情報を自ら収集したりできるようになります。
また、SNSを活用すると気軽に社会参加の情報発信を行えるほか、高齢者または地域住民が持つ悩みや要望を拾い上げて、新たな事業の検討にも役立てられます。
ルネサンスと自治体で高齢者の社会参加を促進した事例
ここからは、ルネサンスと自治体が協力して高齢者の社会参加を促進させたサポート事例について紹介します。
通いの場を増やして地域の健康づくりを促進した事例
人口5万人以下のある市では、地域住民が自宅から歩いて通える場所に通いの場を立ち上げて、交流の促進と介護予防による健康づくりを支援しました。
▼サポート内容
- 通いの場への運動ボランティアの派遣
- 運動ボランティアの養成
運動ボランティアについては、個人が持つ経験や技術などの特技を活かした取り組みにアレンジすることで、多様な活動を実施しています。これにより、ボランティアと地域住民の双方における健康促進につながっています。
ICT活用を支援して積極的な社会参加を促進した事例
人口20万人以上のある市では、介護予防の普及啓発に関するイベントの参加者が限られていることを踏まえて、新たな層への情報提供を促進させるための教室を実施しました。
▼サポート内容
自治体のホームページや公式SNSで情報収集を行えるように、スマートフォンによる操作方法・見方を伝授した
従来と異なる切り口のテーマでイベントを実施したことで、新しい層の参加を促進できました。また、スマートフォンによる情報収集によって積極的な社会参加を促しつつ、ICT活用による情報格差の対策にもつながっています。
まとめ
この記事では、高齢者の社会参加について以下の内容を解説しました。
- 社会参加とは
- 高齢者による社会参加の重要性
- 高齢者の社会参加を促進する自治体での取り組み
- ルネサンスの取り組み事例
高齢者の社会参加は、超高齢化社会を迎える日本にとって重要な取り組みの一つです。自治体が主導となって高齢者の社会参加を促すことで、生活支援の担い手として地域共助を実現できるほか、参加者自身の生きがいの創出、介護予防などにもつながると期待されます。
社会参加を促す取り組みには、ICTを活用した情報提供とマッチングの支援をはじめ、個々のスキル・知識を生かせる場の創出、地域住民の交流を生む通いの場の充実などが挙げられます。
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