自治体における生活習慣病の予防への取り組みとは
生活習慣病は健康長寿の最大の阻害要因とされており、医療費の約3割、死亡者数の約6割を占めています。
超高齢化社会のわが国では、自治体において地域住民の健康寿命の延伸や医療費の適正化を図るための施策の一環として、生活習慣病の予防に取り組むことが求められます。
地域住民の健康管理に携わる自治体の担当者さまにおいては、「地域住民が生活習慣病に対してどのような意識を持っているのか」「生活習慣病の対策にどのように取り組めばよいのか」などと疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、生活習慣病を予防するための自治体での取り組みについて解説します。
出典:厚生労働省 SMART LIFE PROJECT『生活習慣病を知ろう!』
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目次[非表示]
- 1.自治体が生活習慣病の予防に取り組む重要性
- 2.生活習慣病の予防に向けた取り組み
- 2.1.①連携体制を構築する
- 2.2.②生活習慣病に対する認知を向上させる
- 2.3.③地域住民への健康教育を実施する
- 2.4.④持続性を確保する仕組みをつくる
- 3.健康増進に取り組みやすい環境づくりと住民参加の重要性
- 3.1.健康無関心層も含めた予防・健康づくりの推進
- 3.2.地域・保険者間の格差の解消
- 3.3.地域の支え合いの促進
- 4.まとめ
自治体が生活習慣病の予防に取り組む重要性
日本では、人口の減少が進むなかで高齢化が進行しています。生活習慣病は、健康長寿の阻害につながるほか、就労・社会参加の制限による経済活動への影響や医療・介護などの社会保障の負担などにつながると考えられます。
地域住民の健康寿命を延伸させて、生活の質の向上や地域の活性化を図るためには、青壮年・中年期から生活習慣病の予防に継続的に取り組むことが重要です。
厚生労働省の『令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要』によると、食習慣や運動習慣について「関心はあるが改善するつもりはない」と回答した人の割合がもっとも高い結果となりました。
▼食習慣の改善に関する国民の意識
画像引用元:厚生労働省『令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要』
▼運動習慣の改善に関する国民の意識
画像引用元:厚生労働省『令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要』
このように地域住民のなかには健康に対する意識が低い人もいるため、自治体では健康維持・促進に向けた取り組みを行い、意識の向上や生活習慣の改善を促すことが重要です。
また、社会・地域における人々の信頼関係や結びつきが健康に良好な影響を及ぼすという研究もあります。住民同士の交流や支え合いを生むまちづくりを通して、地域住民全体の健康につなげることも大切といえます。
出典:厚生労働省『令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要』
生活習慣病の予防に向けた取り組み
地域住民の生活習慣病を予防するために、自治体ではさまざまな機関・団体と連携しながら健康維持・増進を図るための取り組みを行うことがポイントです。
①連携体制を構築する
地域住民に向けて生活習慣病の予防に取り組むにあたっては、地域の関係機関や職域との連携体制を構築する必要があります。
地域の関係機関や職域と連携して、地域における健康課題と取り組みの状況を共有することで、住民間の健康格差をなくすための支援、保健サービスを提供できるようになります。
▼地域・職域における連携体制
画像引用元:厚生労働省『地域・職域連携推進事業の進め方』
自治体は、住民の健康を守る立場として、民間企業や健診・保健指導機関などと連携しながら、地域の実情に合わせた生活習慣病予防のための事業を展開していく必要があります。
②生活習慣病に対する認知を向上させる
健康に関する意識が低い地域住民を対象に、生活習慣病に対する認知を高めるための取り組みを行うことも必要です。
前述したとおり、地域住民のなかには食習慣や運動習慣を改善することに関心がない層もいると考えられます。
生活習慣病に対する認知を高める取り組みを行うことで、住民自らが現在の生活習慣を振り返ったり、食生活の見直しや運動を始めたりするきっかけになることが期待されます。
③地域住民への健康教育を実施する
地域住民への啓発を通して健康意識の向上を図るために、教育機関や市区町村の施設で健康教育を実施する方法があります。
健康教育を実施する際は、地域の健康課題や住民のニーズを踏まえたうえで住民が自ら参加したくなるようなプログラムを導入することが重要です。
④持続性を確保する仕組みをつくる
地域住民の健康維持・増進を図るためには、生活習慣病の予防に継続的に取り組んでもらうことが重要です。
自治体では、地域住民による主体的なセルフケアを継続してもらうためのプログラムを導入するとともに、生活習慣の改善に対するモチベーションを維持するための仕組みづくりが求められます。
健康増進に取り組みやすい環境づくりと住民参加の重要性
厚生労働省の『「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部のとりまとめ」について』によると、2040年には高齢者の人口の伸びが落ち着く一方で、現役世代は急減すると予測されています。
誰もがより長く元気に活躍できる社会を実現するためには、健康づくりに取り組みやすい環境を整備して住民の社会参加を促進することが重要です。
健康無関心層も含めた予防・健康づくりの推進
健康に対して無関心な層も含めて、生活習慣病の予防や健康づくりを推進することが重要です。そのためには、地域住民が日々の生活のなかで自然に健康になれる環境を整えることがポイントとなります。
自治体でできる環境づくりの例には、以下が挙げられます。
▼自治体による健康になるための環境づくりの例
- 健康な食事や運動ができる施設を提供して、生活習慣の改善を促す
- 多世代が交流できる居場所づくり・社会参加を促して、人々の結びつきによる健康増進へとつなげる
地域・保険者間の格差の解消
地域・保険者間での健康格差を解消するために、行動変容を促す仕掛けをつくることが求められます。
▼行動変容を促す仕組みづくりの例
- PHR(Personal Health Record:パーソナルヘルスレコード)を活用した住民・自治体・医療従事者などによる医療情報の利活用促進
- ナッジ(行動経済学)を取り入れた健診・検診の勧奨
- 生活保護受給者への健康管理支援事業の実施
実施にあたっては地域の多様な機関・団体との連携を強化しつつ、地域ぐるみで支援していくことが重要といえます。
地域の支え合いの促進
世帯の複合的なニーズやライフステージの変化に対して柔軟に対応できるように、健康づくりの環境を整備することが重要です。新たな制度の創設を含めて、包括的な支援体制の構築を検討する必要があります。また、高齢者や障がいのある方も利用できる制度を推進して住民の社会参加を促すことも求められます。
▼地域の支え合いを促進するための取り組み
- 健康に関する相談支援の実施
- 健康状態に応じた就労支援や居住支援の実施
- 地域における通いの場における保健事業・介護予防の実施
まとめ
この記事では、自治体における生活習慣病予防への取り組みについて以下の内容を解説しました。
- 自治体が生活習慣病の予防に取り組む重要性
- 生活習慣病の予防に向けた取り組み
- 健康増進に取り組みやすい環境づくりと住民参加の重要性
自治体が生活習慣病の予防に取り組むには、地域の関係機関・職域と連携しながら、生活習慣病に対する認知の向上や健康教育による行動変容を促して、持続的に実施できる仕組みをつくることが重要です。
また、地域の健康増進への取り組みを推進するには、健康無関心層も含めた予防・健康づくりの推進を行い、地域・保険者間の格差を解消すること、地域の支え合いを促進することが求められます。
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なお、企業が健康経営(※)を推進するうえでの生活習慣病の予防対策についてはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
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