【まちづくりの財源確保】活用できる交付金の種類と活用例
日本では、2040年に20~64歳の現役人口が全体の半分に減少する“2040年問題”があり、財政や社会保障などに影響を及ぼすといわれています。
また、都市部に人口が集中する一方で、地方では少子高齢化・人口減少が深刻な問題になっています。このような課題に対応して、各地域で住みよい環境を確保しながら活力ある日本社会を維持するために、各自治体の特色を活かした取組みが求められています。
地域事業を推進するにあたって、「財源確保が難しい」「資金面の支援を受けられる交付金はないか」と情報を集めている自治体担当者もいるのではないでしょうか。
この記事では、交付金の概要と種類、自治体における活用例について解説します。
なお、2040年問題についてはこちらで解説しています。併せてご覧ください。
出典:総務省『地方創生の現状と今後の展開』/厚生労働省『令和2年度版 厚生労働白書』
目次[非表示]
- 1.交付金とは
- 2.交付金のメリットデメリット
- 3. 活用できる交付金の種類
- 3.1.地方創生推進交付金
- 3.2.デジタル田園都市構想交付金
- 3.3.都市再生整備計画事業(旧まちづくり交付金)
- 3.4.ヘルスケアサービス社会実装事業費補助金
- 4.交付金の活用例
- 5.まとめ
交付金とは
交付金とは、国から特定の目的の下に支給されるお金のことです。法令や各自治体の条例に基づいて支給されます。
地方自治体へ支給された交付金は、支給の目的に沿って事業の立ち上げや、既存事業の設備投資などに利用することが必要です。政府は、地方に関する政策を団体や組合などに委託する際に、事業運営に必要な資金を交付します。
交付金が支給される分野としては、公共インフラの整備・地域活性化・防災・教育など地域経済や社会の活性への貢献度が高いものが主となっています。
交付金のメリットデメリット
地域事業を推進するにあたり、交付金の活用は非常に重要な要素となります。しかし、交付金にはメリットとデメリットが存在します。ここでは、それぞれのポイントを詳しく解説します。
メリット
- 地域経済の活性化・・・交付金を活用することで、地域経済の活性化が期待できます。新しい事業やインフラ整備が進むことで、地域全体の発展に寄与します。
- 住民サービスの向上・・・交付金を利用して、住民向けのサービスを充実させることができます。
デメリット
- 申請手続きの煩雑さ・・・交付金の申請手続きは煩雑で時間がかかることが多いです。担当者は多くの書類を準備し、厳しい審査を通過する必要があります。
- 使途の制約・・・交付金には使途が厳しく制約されている場合が多く、自由に使えないことがあります。これにより、柔軟な事業運営が難しくなることがあります。
交付金は地域事業を推進する上で非常に有用なツールですが、そのメリットとデメリットを十分に理解し、バランスよく活用することが重要です。
活用できる交付金の種類
地方自治体が活用できる交付金は複数あります。
地方創生推進交付金
地方創生に向けた事業を実施するための補助金です。各自治体において地方創生につながる効率的・効果的な事業実施を図ることを目的としています。
出典:内閣府地方創生推進事務局『地方創生推進交付金制度要綱』
デジタル田園都市構想交付金
教育・防災・リモートワークなど、地域におけるデジタル基盤を活用した取組みを行うための補助金です。デジタル活用による地域の課題解決や、魅力向上を図るために用いられます。
出典:内閣府地方創生推進事務局『デジタル田園都市国家構想交付金デジタル実装タイプTYPE1/2/3等制度概要』/総務省『デジタル田園都市国家構想推進交付金について』
都市再生整備計画事業(旧まちづくり交付金)
地域の特性(歴史・文化・自然環境など)や個性を活かしたまちづくりを支援するための補助金です。地域住民の生活の質向上や地域経済・社会の活性化を図ることが主な目的となっています。
出典:国土交通省『都市再生整備計画事業(旧まちづくり交付金)』
ヘルスケアサービス社会実装事業費補助金
各地域・職域におけるヘルスケア産業の発展に向けた取組みや、ヘルスケアサービスの品質評価構築に向けた取組みを支援するための補助金です。
このほかにも、過疎対策事業債や地域課題解決型起業支援補助金、地方創生拠点整備交付金などがあります。申請要件や応募期間は交付金によって異なるため、事前に各省庁・都道府県にお問い合わせください。
なお、国から交付金を受けるコツや流れについては、こちらの記事でも解説しています。
出典:経済産業省『令和4年度「ヘルスケアサービス社会実装事業」に係る補助事業者(執行団体)の公募について』/総務省『過疎対策事業債について』
交付金の活用例
交付金を活用した、地方創生関係事業の事例を紹介します。
①観光の拠点となる施設を整備した自治体の例
こちらの自治体は、近隣に有名温泉街があり、多くの観光客が訪れる場所として魅力があります。しかし、観光客への対応や消費を高めるための観光施策が十分に推進されていませんでした。
このような背景から、地元の食文化と歴史的な観光素材を磨き、観光客を受け入れる施設の整備や観光消費の活性化に伴う産業を促進して、賑わいの創出を目指しました。
その実現に向けた主な事業内容は、以下のとおりです。
▼駅前の空き家改修
地元のまちおこしグループが主体となって、駅前の空き家をお土産の販売やお休み処として整備しました。レンタルボックスを設置して、展示スペース・商品販売スペースとしても活用しています。
▼特産品を活用した新たな名物商品の開発
地元産品を活用したブランド商品を開発して、駅前の施設で販売することで観光誘客を図りました。
画像引用元:内閣府地方創生推進事務局『平成30年度版 地方創生関係交付金の活用事例集』
これらの事業によって、街歩き観光や観光消費額の増加が見られました。さらに、事業内容に適した人材確保、主体性を持った事業運営も実現しました。
出典:内閣府地方創生推進事務局『平成30年度版 地方創生関係交付金の活用事例集』
②子育て支援と多世代交流複合施設を整備した自治体の例
こちらの自治体では、若い世代の定着と定住促進に課題がありました。若い世代の定着に向けて、安定的な雇用創出・所得向上を図るとともに、子育て環境の整備、多世代交流などを通じて魅力と活気のある地域づくりが必要と考えました。
そこで、子育て世代の定住やUIJターンの促進、多世代交流の強化、地域産業の活性化、安定的な雇用の創出を図り、積極的な政策誘導を行いました。
具体的な事業内容は、以下のとおりです。
▼子育て支援・多世代交流複合施設の整備
一時預かりや医療費助成の拡充などの子育て支援施策を強化しました。また、子育て支援施設と農商工連携施設を一体的に整備することによって、子育て環境の整備と利用客の増加といった、相互の相乗効果を図りました。
画像引用元:内閣府地方創生推進事務局『平成30年度版 地方創生関係交付金の活用事例集』
その結果、住民の満足度向上のほか、複合施設における利用者・入館料収入の増加がみられました。課題を明確にしてから事業計画に取組んだことで、事業を円滑に推進できたとのことです。
出典:内閣府地方創生推進事務局『平成30年度版 地方創生関係交付金の活用事例集』
まとめ
この記事では、交付金について以下の内容を解説しました。
- 交付金とは
- 交付金のメリット・デメリット
- 交付金の種類
- 交付金の活用例
各地域で住みよい環境を確保して、活力ある日本社会を維持することが求められている現在、その実現に向けて、各自治体の特色を活かした取組みが必要とされています。しかし、地域事業推進に関する財源確保の課題があるケースも少なくありません。
財源確保の課題を抱える自治体においては、国や都道府県による交付金を活用することが有効です。交付金によって対象者や要件などが異なるため、申請の際は事前に確認することが重要です。
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