ADL利得とは?ADL維持等加算の算定に必要な評価指標
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目次[非表示]
ADL利得の定義と介護報酬における重要性
ADL利得とは、通所介護事業所において利用者の日常生活動作(ADL)の維持・改善度を数値化した指標です。具体的には、評価対象利用開始月から6か月後のADL値と初月のADL値の差に、利用者の初月ADL値に応じた調整値を加えて算出される数値を指します。
2021年度の介護報酬改定により、ADL維持等加算の単位数が大幅に引き上げられ、ADL利得1以上で加算(Ⅰ)30単位/月、ADL利得2以上で加算(Ⅱ)60単位/月の算定が可能となりました。さらに2024年度改定では、加算(Ⅱ)の基準がADL利得3以上に変更され、より高い水準での機能維持・改善が求められるようになりました。
この加算は事業所単位で算定するため、個々の利用者ではなく事業所全体のケアの質が評価される仕組みとなっています。科学的介護の推進という国の方針に沿って、LIFEへのデータ提出とPDCAサイクルの実践が必須要件となっており、エビデンスに基づいた介護サービスの提供が求められています。
ADL利得の計算方法|バーセルインデックスを用いた評価手順
バーセルインデックス(BI)の10項目と配点基準
ADL利得の算出には、国際的に標準化されたADL評価法であるバーセルインデックス(Barthel Index)を使用します。バーセルインデックスは以下の10項目で構成され、各項目の自立度に応じて0点から15点の配点がなされ、合計100点満点で評価します。
評価項目と配点は以下の通りです。
- 食事(10点・5点・0点)
- 移乗(15点・10点・5点・0点)
- 整容(5点・0点)
- トイレ動作(10点・5点・0点)
- 入浴(5点・0点)
- 移動(15点・10点・5点・0点)
- 階段昇降(10点・5点・0点)
- 更衣(10点・5点・0点)
- 排便コントロール(10点・5点・0点)
- 排尿コントロール(10点・5点・0点)
合計点数による自立度の目安は、100点で完全自立、85点以下で軽度介助、60点以下で中等度介助、40点以下で重度介助、20点以下で全介助と判定されます。評価の際は、実際の生活場面での動作能力を基準とし、できる動作ではなく「している動作」を評価することが重要です。
ADL利得の具体的な計算式と調整値の適用方法
ADL利得の計算は、単純な差分計算ではなく、利用者の初月ADL値に応じた調整値を加える必要があります。計算手順は以下の通りです。
まず、各利用者のADL変化値を算出します: (6か月後のADL値)-(初月のADL値)+ 調整値
調整値は初月ADL値により以下のように設定されています。
- ADL値が0以上25以下:調整値1
- ADL値が30以上50以下:調整値1
- ADL値が55以上75以下:調整値2
- ADL値が80以上100以下:調整値3
次に、全利用者のADL利得を算出後、上位10%と下位10%の利用者を除外します。端数が生じた場合は切り捨てとなります。例えば、評価対象者が25名の場合、上位2名(2.5名の切り捨て)と下位2名を除外し、残り21名で平均値を算出します。
この仕組みにより、極端に改善した利用者や悪化した利用者の影響を排除し、事業所全体の標準的なケアの質を適正に評価できるようになっています。
ADL利得の測定からLIFE提出までの実務手順
評価対象期間の設定と初月・6か月後の測定タイミング
ADL維持等加算の評価対象期間は、原則として加算算定開始月の前年同月から12か月間となります。例えば、2025年4月から算定を開始する場合、2024年4月から2025年3月までが評価対象期間となります。
測定のタイミングは以下の要件を満たす必要があります。
- 評価対象利用者は、利用期間が6か月を超える者
- 初月(評価対象利用開始月)にADL値を測定
- 初月の翌月から起算して6か月目に再度測定
- 6か月目にサービス利用がない場合は、最終利用月に測定
測定は一定の研修を受けた者が行い、事業所内で評価基準を統一することが重要です。複数の評価者がいる場合は、定期的に評価の擦り合わせを行い、評価のばらつきを防ぐ必要があります。
LIFEシステムへの入力方法とADL利得の自動計算機能
LIFEへの情報提出は、バーセルインデックスの10項目それぞれの点数を個別に入力する形式となっています。提出期限は、評価対象利用開始月および6か月後の翌月10日までです。
▼LIFEシステムの操作手順
- LIFEにログイン後、該当利用者を選択
- バーセルインデックスの各項目の点数を入力
- 初月と6か月後の両データ入力完了後、システムが自動でADL利得を計算
- 事業所全体のADL利得平均値が画面上に表示
LIFEの自動計算機能により、調整値の適用や上位・下位10%の除外計算も自動で行われるため、手計算によるミスを防ぐことができます。算定可否の判定も画面上で確認でき、ADL利得が1以上で加算(Ⅰ)、3以上で加算(Ⅱ)の算定が可能であることが一目で分かるようになっています。
また、LIFEから提供されるフィードバック情報を活用し、個別機能訓練計画の見直しや改善に活用することで、PDCAサイクルを回すことが求められています。
ADL利得に関するよくある質問(Q&A)
Q1:ADL利得の計算で上位・下位10%を除外する理由は?
A:極端な値による影響を排除し、事業所全体の適正な評価を行うためです。少数の利用者の著しい改善や悪化が全体の評価に過度な影響を与えることを防ぎ、公平性を保つ仕組みとなっています。これにより、事業所の標準的なケアの質が適切に反映される評価となります。
Q2:バーセルインデックスの評価は誰が行うべきですか?
A:一定の研修を受けた者が評価を行う必要があります。専門職でなくても評価は可能ですが、評価の統一性を保つため、事業所内で評価基準を共有し、複数名で確認することが推奨されています。定期的な勉強会や事例検討を通じて、評価者間の判断基準を統一することが重要です。
Q3:ADL利得が1未満の場合、改善方法はありますか?
A:個別機能訓練の見直し、多職種連携の強化、PDCAサイクルの活用が効果的です。LIFEフィードバックを活用し、利用者個々の状態に応じた計画の最適化を図ることが重要です。特に、初月ADL値が低い利用者には手厚い支援を行い、調整値を考慮した戦略的なアプローチが必要となります。
Q4:他施設のリハビリを併用している利用者の扱いは?
A:他施設と連携してサービスを実施している場合に限り、ADL利得の評価対象に含めることができます。ただし、連携の記録や情報共有の体制整備が必要となります。連携先との定期的なカンファレンスや、リハビリ内容の共有など、実質的な連携が求められます。
ADL維持等加算は、科学的介護の推進において重要な位置づけとなっています。適切な評価とLIFEへの確実なデータ提出により、利用者の自立支援と事業所の収益向上の両立を目指すことができます。定期的な研修や体制整備を通じて、質の高いケアサービスの提供を継続していくことが求められています。
まとめ
ADL利得の理解は、ADL維持等加算の適切な算定に欠かせません。一方で、加算要件の全体像やADL評価の実務には、さらに多くのポイントがあります。制度の基本から運用まで詳しく知りたい方は、こちらで解説しています。
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