ADL維持等加算とは。算定要件や加算を取得するポイント
ADLとは、人間が毎日の生活を送るための基本的動作です。日常生活動作とも呼ばれ、食事・更衣・トイレ・入浴・移動などさまざまな動作が該当します。
介護施設・サービスにおいては、さまざまな介護報酬における加算要件があり、ADLの維持・改善の支援についても対象となります。
介護施設の担当者のなかには、「ADL維持等の算定要件はどのようなものなのか」「ADL等維持加算を算定するためのポイントを知りたい」などとお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ADL等維持加算の概要や算定要件、算定するためのポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.ADL維持等加算とは
- 2.ADL維持等加算の算定要件
- 3.ADL維持等加算を取得するためのポイント
- 3.1.①運動プログラムを実施する
- 3.2.②利用者に生活行為の目標を立ててもらう
- 3.3.③社会における役割の創出を行う
- 4.まとめ
ADL維持等加算とは
ADL維持等加算とは、介護報酬における加算の一つです。
介護施設や介護サービスにおいて、利用者のADLを良好に維持・改善していると評価された場合に算定されます。評価の対象期間は、加算の算定を開始する月の前年の同月から一年間です。
ADL維持等加算の対象となる施設・サービスは以下のとおりです。
▼ADL維持等加算の対象施設・サービス
- 通所介護
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 特定施設入居者生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 介護老人福祉施設
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
出典:厚生労働省『LIFE 操作説明書(令和6年ADL維持等加算)』/内閣府『介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進(その1)(令和3年度介護報酬改定)』
ADL維持等加算の算定要件
ADL等維持加算には、30単位のADL維持等加算(Ⅰ)と60単位のADL維持等加算(Ⅱ)が存在し、算定要件が異なります。
▼ADL維持等加算の算定要件
ADL等維持加算 |
算定要件 |
単位数 |
ADL維持等加算(Ⅰ) |
1.評価対象利用期間が6ヶ月を超える利用者の総数が10人以上
2.利用者全員について、利用開始月と当該月の翌月から起算して6月目において、Barthel Indexを適切に評価できる者がADL値を測定し、測定した日が属する月ごとに厚生労働省に提出している(LIFEを活用して提出する)
3.評価対象利用者の調整済ADL利得を平均して得た値が1以上
|
30単位 |
ADL維持等加算(Ⅱ) |
1.ADL維持等加算(Ⅰ)の要件1と2を満たしている
2.評価対象利用者等の調整済ADL利得を平均して得た値が3以上
|
60単位 |
厚生労働省『令和6年度介護報酬改定の主な事項について』を基に作成
調整済ADL利得とは、評価対象利用開始月の翌月から起算して6月目の月に測定したADL値から、利用開始月に測定したADL値を控除し、初月のADL値や要介護認定の状況等に応じた値を加えて得た値です。
▼調整済ADL利得の算出
算定要件における評価対象利用者には、サービスの利用者のうち、調整済ADL利得の上位および下位それぞれ1割の者を除いた者が該当します。対象利用者の平均値が1以上3未満であればADL維持等加算(Ⅰ)、3以上であればADL維持等加算(Ⅱ)が算定されます。
▼ADL利得の平均からADL維持等加算を算定する例
厚生労働省にADL値を提出する際に利用されるLIFEとは、厚生労働省が提供している科学的情報システムを指します。
また、ADL維持等加算(Ⅱ)における調整済ADL利得の要件は、2024年度の介護報酬改定において2から3へと引き上げられました。
出典:厚生労働省『令和6年度介護報酬改定の主な事項について』『科学的介護情報システム(LIFE)について』
ADL維持等加算を取得するためのポイント
介護施設においてADL維持等加算を算定するためには、利用者のADLを維持・向上させるための取り組みによって成果を出す必要があります。
①運動プログラムを実施する
筋力トレーニングや体操などの運動プログラムを行うことで、日常動作に必要な運動能力の維持・向上を図れます。
また、運動は心のケアにも効果が期待できるため、心身の機能に同時にアプローチできます。
▼運動プログラムの例
- 筋力トレーニング・ストレッチ
- ウォーキング
- バランス運動を含む体操 など
②利用者に生活行為の目標を立ててもらう
利用者のADLを維持・向上するには、利用者本人に生活行為の目標を立ててもらうことが有効です。
利用者にとって興味・関心がある生活行為を目標に掲げることで、その行為を行うための能力について維持・向上を図りやすくなります。
▼生活目標の例
- 自分の足で買い物に行く
- 自分で料理を作る
- 一人で入浴を行う など
③社会における役割の創出を行う
利用者が生きがい・役割を持って生活できるような居場所の創出を支援することもポイントの一つです。
社会における実践的な活動を通じて、心身機能の維持が期待できます。
▼社会参加の例
- ボランティアに参加する
- 趣味のグループに所属する
- 複数人でのスポーツを行う など
まとめ
この記事では、ADL維持等加算について以下の内容を解説しました。
- ADL維持等加算とは
- ADL維持等加算の算定要件
- ADL維持等加算を取得するためのポイント
ADL維持等加算とは、介護報酬における加算の一つです。利用者のADLを良好に維持・改善している介護施設・サービスが算出できます。
ADL維持等加算を算定するには、運動プログラムの実施や利用者の目標づくり、社会における役割の創出などがポイントです。
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