口腔機能向上加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は何が違う? 算定する際の流れとは

口腔機能向上加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は何が違う? 算定する際の流れとは


口腔機能向上加算とは、介護報酬における加算の一つです。デイサービスやデイケアで、利用者に対して口腔機能の向上を図る取り組みを行った際に算定することができる加算です。

2021年度の介護報酬改定において、これまであった口腔機能向上加算が口腔機能向上加算(Ⅰ)となり、新たに口腔機能向上加算(Ⅱ)の区分が設けられました。

介護施設の担当者のなかには、「口腔機能向上加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は何が違うのか」「口腔機能向上加算を算定するにはどうすればよいのか」などと気になる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、口腔機能向上加算について、(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いや算定の流れ、注意点を解説します。


目次[非表示]

  1. 1.口腔機能向上加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い
  2. 2.口腔機能向上加算を算定する流れ
    1. 2.1.①算定要件を把握して体制を整える
    2. 2.2.②算定対象者を選出する
    3. 2.3.③行政への申請を行う
    4. 2.4.④計画書・プログラムを作成する
    5. 2.5.⑤サービスを提供して評価する
  3. 3.口腔機能向上加算を算定する際の注意点
    1. 3.1.要件を満たしていても算定の対象者にならない場合がある
    2. 3.2.LIFEとの連携に時間や労力がかかる
  4. 4.まとめ


口腔機能向上加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い

口腔機能向上加算(Ⅱ)は、算定するために科学的介護情報システム(以下、LIFE)への情報の提出を行うことが求められる点で(Ⅰ)と異なります。

LIFEの活用によってデータを基にしたフィードバックが受けられるため、PDCAを回してケアの質を向上させやすくなると期待できます。


▼LIFEで提供する情報項目

  • 評価日
  • 要介護度・病名など
  • 日常生活自立度
  • 現在の歯科受診について
  • 義歯の使用
  • 栄養補給法
  • 食事形態
  • 誤嚥性肺炎の発症・既往歴
  • 口腔の健康状態の評価・再評価
  • 口腔機能改善管理指導計画・実施記録


出典:厚生労働省『口腔・栄養(自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進)



口腔機能向上加算を算定する流れ

口腔機能向上加算を取得する際は、(Ⅰ)と(Ⅱ)ともに以下の流れで行います。


①算定要件を把握して体制を整える

口腔機能向上加算の算定を目指すには、算定要件を把握しておくことが重要です。


▼口腔機能向上加算の算定要件

加算の種類
算定要件
口腔機能向上加算(Ⅰ)
  • 言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員のいずれかを1名以上配置する
  • 口腔機能向上改善指導計画を作成する
  • 計画に基づく専門職によるサービス提供と定期的な記録の作成を行う
  • 計画の進捗について定期的な評価を行う
口腔機能向上加算(Ⅱ)
  • 口腔機能向上加算(Ⅰ)の要件を満たす
  • LIFEへの情報提供を行う


人員配置基準をはじめ、算定要件を満たせるように組織の体制を整える必要があります。


出典:厚生労働省『口腔機能向上マニュアル~高齢者が一生おいしく、楽しく、 安全な食生活を営むために~ (改訂版)』『口腔・栄養(自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進)


②算定対象者を選出する

口腔機能向上加算を算定する対象者を選定します。ただし、口腔機能向上加算の対象者は、以下のいずれかに該当する必要があります。


▼口腔機能向上加算の対象者

①認定調査票における嚥下、食事摂取、口腔清潔の三項目のいずれかの項目において「1」以外に該当する者
②基本チェックリストの口腔機能に関連する(13)、(14)、(15)の三項目のうち、二項目以上が「1」に該当する者
③その他、口腔機能の低下している者又はそのおそれのある者

引用元:厚生労働省『口腔機能向上マニュアル~高齢者が一生おいしく、楽しく、 安全な食生活を営むために~ (改訂版)


認定調査票における“1以外”とは、各項目について見守りもしくは介助が必要な状態を示します。また、基本チェックリストの該当項目は以下のとおりです。


▼基本チェックリストの口腔に関する項目

内容
チェック
半年前に比べて固いものが食べにくくなった


お茶や汁物などでむせることがある


口の渇きが気になる


厚生労働省『口腔機能向上マニュアル~高齢者が一生おいしく、楽しく、 安全な食生活を営むために~ (改訂版)』を基に作成


出典:厚生労働省『口腔機能向上マニュアル~高齢者が一生おいしく、楽しく、 安全な食生活を営むために~ (改訂版)


③行政への申請を行う

算定要件を整えたら、行政への申請を行います。この際、自治体ごとの申請期限に間に合うように必要書類を準備する必要があります。


▼行政への申請に必要な書類

  • 勤務の体制・勤務形態の一覧表
  • 言語聴覚士・歯科衛生士などの資格証の写し


その月の申請期限を過ぎて提出した場合、加算の算定は翌々月からになります。


④計画書・プログラムを作成する

算定を開始するための計画書・プログラムを作成します。この際、計画書は専門職の手で作成する必要があります。


▼口腔機能向上の指導管理計画に記載する項目

  • 専門職実施項目
  • 関連職種実施項目
  • 本人の家庭での実施項目


また、作成した計画・プログラムの内容について、利用者本人の同意を取得することが求められます。


⑤サービスを提供して評価する

計画書に沿ってサービスの提供を行ったうえで、以下の評価を行います。


▼サービス提供開始後の評価

評価の種類
概要
改善状況の把握
口腔機能の改善状況について、関連職種が適宜把握する
モニタリング
計画どおりの介護サービスが提供されているかについて、専門職種が月1回確認する
事後アセスメント
専門職種が目標の達成および口腔清掃状況を把握する


また、口腔機能向上加算(Ⅱ)を算定する場合はLIFEへの情報提供も行う必要があります。



口腔機能向上加算を算定する際の注意点

口腔機能向上加算を算定する際は、以下の点に気をつける必要があります。


要件を満たしていても算定の対象者にならない場合がある

認定調査票や基本チェックリストなどの要件を満たしていても、以下に該当する場合には口腔機能向上加算の対象となりません。


▼口腔機能向上加算の対象にならないケース

  • 医療保険において歯科診療報酬点数表に掲げる摂食機能療法を算定している
  • ほかの事業所で口腔機能向上加算を算定している


口腔機能向上加算の算定対象者を選出する際は、利用者の加算算定状況を確認しておくことが重要です。


出典:厚生労働省『口腔機能向上マニュアル~高齢者が一生おいしく、楽しく、 安全な食生活を営むために~ (改訂版)』『介護保険最新情報 Vol.952


LIFEとの連携に時間や労力がかかる

口腔機能向上加算(Ⅱ)を算定する場合、LIFEとの連携作業にかかる時間・労力を考慮する必要があります。

口腔機能向上加算(Ⅱ)の算定に当たっては、少なくとも3ヶ月に一度の高い頻度でLIFEへの情報提供が求められます。特にアナログ管理で行うと、利用者一人ひとりのデータを手作業で入力するために時間や労力がかかりやすくなります。

LIFEとの連携を効率よく行うには、システムの導入が有効です。CSVデータでのデータ連携が可能なシステムであれば、算定に必要な工数の削減につながります。


出典:厚生労働省『科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について



まとめ

この記事では、口腔機能向上加算について以下の内容を解説しました。


  • 口腔機能向上加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い
  • 口腔機能向上加算を算定する流れ
  • 口腔機能向上加算を算定する際の注意点


口腔機能向上加算には、従来と同様の口腔機能向上加算(Ⅰ)に加えて、LIFEへの情報提供を伴う口腔機能向上加算(Ⅱ)が新設されました。

ただし、口腔機能向上加算(Ⅱ)を取得する場合には、少なくとも3ヶ月に一度LIFEへの情報提供が求められます。

LIFEとの連携を効率的に行うには、システムの導入が有効です。

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