【2024年度】介護報酬改定によるデイサービスへの影響とは? 主な改定ポイントと対策
介護報酬改定を含めた介護保険制度の見直しは3年に一度行われており、次の改定は2024年となります。新型コロナウイルス感染症や物価高騰、賃上げによる人手不足などの影響で苦境に立たされているデイサービス事業者にとって、介護報酬改定による影響は大きいと考えられます。
デイサービス施設の管理者においては「2024年度の介護報酬改定によってどのような影響があるのか」「介護報酬改定後に選ばれるデイサービスになるためにはどのような対策が必要なのか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、2024年度の介護報酬改定によるデイサービス施設への影響と利用者に選ばれるための対策について解説します。
出典:厚生労働省『令和6年度介護報酬改定に向けた要望』
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目次[非表示]
デイサービスの現状
厚生労働省の『介護サービス施設・事業所調査』によると、通所介護・通所リハビリテーションの事業所数は、2017~2021年までの5年間で以下のように推移しています。
▼通所介護施設
西暦 |
事業所数 |
2021年 |
24,428 |
2020年 |
24,087 |
2019年 |
24,035 |
2018年 |
23,861 |
2017年 |
23,597 |
▼通所リハビリテーション施設
西暦 |
事業所数 |
2021年 |
8,308 |
2020年 |
8,349 |
2019年 |
8,318 |
2018年 |
8,142 |
2017年 |
7,915 |
事業所数は2017~2021年の5年間で計831事業所が増加していますが、2020年から2021年にかけては通所リハビリテーション施設において41事業所が減少しています。
特に近年では、新型コロナウイルス感染症による介護福祉サービスの利用控えや物価高騰の影響、人手不足の深刻化などによって経営の厳しさが増している状況です。
実際に、2021年の介護福祉施設の決算値では、通所介護における赤字施設の割合は46.8%となっています。経営努力だけでは介護事業を継続することが難しく、今後休止・廃止する事業者が増えることも懸念されています。
このような厳しい経営状況に置かれる地域の介護福祉事業者に追い打ちをかけるように、2024年度の介護報酬改定ではさまざまな制度の見直しが検討されています。
出典:厚生労働省『介護サービス施設・事業所調査:結果の概要』『令和6年度介護報酬改定に向けた要望』
2024年度の介護報酬改定による影響
2024年度の介護報酬改定では、介護保険に関する利用者の自己負担割合が見直されることが検討されています。
現行の介護保険制度では、特に所得が高い人が3割、一定以上の所得がある人が2割の負担とされています。今後は、原則として2割の負担になることに加えて、所得の判断基準についても見直しが検討されています。
▼介護保険における利用者の自己負担割合
画像引用元:財務省『介護の改革の必要性』
今回、介護保険の利用者負担が見直された背景には、後期高齢者医療制度において所得上位30%に対して2割負担が設けられたことが挙げられます。
改定によって利用者負担が増えることによって、介護サービスの利用頻度を減らす人が出てくる可能性が懸念されています。
出典:財務省『介護の改革の必要性』
2024年度の介護報酬改定の4つの基本的な視点
2024年度の介護報酬改定は、人口構造や社会経済の変化に対応し、以下の4つの基本的視点を重視して行われます。
- 地域包括ケアシステムの深化・推進
- 自立支援・重度化防止への対応
- 良質な介護サービスの効率的提供と働きやすい職場づくり
- 介護保険制度の安定性・持続可能性の確保
この改定では、地域包括ケアの推進により、自立支援と重度化防止の取り組みが一層重要視されます。同時に、働きやすい職場環境の整備とサービスの効率化を図り、介護保険制度の持続可能性を確保するための対策も強化されます。これにより、介護サービスの質向上と持続可能な制度運営が期待されます。
出典:厚生労働省『令和6年度介護報酬改定の主な事項について』
2024年度の介護報酬改定で何が変わる? 6つの改定ポイント
2024年度の介護報酬改定では、介護保険の利用者負担の見直しのほかに、地域包括でのケアシステムの推進や介護人材の確保、介護現場の生産性向上を行うためのさまざまな措置が検討されています。
▼介護報酬改定により検討されているポイント
- 訪問介護と通所介護を組み合わせた複合型サービスを創設する
- 多様な拠点で保険給付による介護予防支援を受けられるように事業所を拡大する
- ITやデータ活用による質の高い介護サービスを拡充する
- 介護職員の処遇改善を図るための加算を一本化する
- 経営の大規模化・協同化によって職員不足の解消や安定したサービスの提供を図る
- 経営に関する情報の公開を事業者に義務づけて国民に公開する
以下では、それぞれの内容について解説します。
①訪問介護・通所介護の複合型サービスの創設
利用者の介護ニーズに柔軟に対応できるように、訪問介護と通所介護を組み合わせて提供する複合型サービスの類型を設けることが検討されています。
訪問介護と通所介護の併用には、事務所間での情報共有や連絡調整が難しいという課題がありましたが、複合型サービスの創設によって課題の解消が期待されます。
出典:厚生労働省『介護保険制度の見直しに関する参考資料』『新しい複合型サービス (地域包括ケアシステムの深化・推進)』
②介護予防支援を行う事業所の拡大
現在、保険給付として行う介護予防支援については、地域包括支援センターが担当しています。今回の改定では、居宅介護支援事業所をはじめとする多様な拠点を活用して、介護予防支援を行えるような取り組みが推進されています。
介護予防支援を行う事業所が増えると、家族の介護者への相談支援機能をはじめとする、地域包括支援センターが行うほかの業務の活性化につながることが期待されます。
出典:厚生労働省『介護保険制度の見直しについて』
③科学的介護の推進
介護保険制度の見直しに伴って、科学的介護情報システムの“LIFE”を活用した、科学的な根拠に基づいた介護が推進されています。
LIFEは、介護施設・事務所が利用者の状態やケアの計画・内容などを入力すると厚生労働省によって入力内容が集計・分析されて、当該施設と利用者にフィードバックされる情報システムです。
▼LIFEの仕組み
画像引用元:厚生労働省『科学的介護情報システム(LIFE)による科学的介護の推進について』
LIFEは2021年度から運用が開始されていますが、データを提出する施設や事業所を増やすことで、より信頼性の高いエビデンスに基づいた質の高い介護が可能になると期待されています。
なお、科学的介護情報システム(LIFE)についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
出典:厚生労働省『介護保険制度の見直しについて』/厚生労働省『科学的介護情報システム(LIFE)による科学的介護の推進について』
④処遇改善加算の一本化
今回の改定によって、介護職員の処遇改善を図るための加算が一本化されることが検討されています。
加算を一本化することによって、介護福祉事業者による手続きの負担を削減するとともに、職種の対象を広げて柔軟な運用につながると期待されます。
出典:厚生労働省『令和6年度介護報酬改定に向けた要望』
⑤経営の大規模化・協同化
介護業界の人手不足に対応して安定的なサービスを提供するために、経営の大規模化・協同化を図ることが推進されています。
介護福祉事業の経営を大規模化・協同化することで、事業所間での人材や資源の有効活用が促進されて、サービス品質の向上・安定化につながると期待されています。
出典:厚生労働省『介護保険制度の見直しについて』
⑥財務状況の見える化
介護福祉サービスを提供する事業者に対して、財務諸表をはじめとする経営に関する情報をデータベースで公表することが義務化されます。
データベースに蓄積された情報は、国による介護事業への支援策の検討に役立てられるほか、国民に公開されることで介護を受ける人が介護サービスを選ぶ際の判断材料に利用できるようになります。
利用者の課題に寄り添い、他社と差別化することで“選ばれる”デイサービスへ
介護保険の利用者負担が増加することや、介護施設における情報の見える化によって、デイサービスは利用者に選ばれる時代になると考えられます。
選ばれる事業所となるためには、デイサービスの利用者が持つ多様な課題を解決して、質の高い介護福祉サービスを提供することが求められます。
デイサービスの利用者が持つ課題には、以下が挙げられます。
▼デイサービスの利用者が抱える課題
- また歩けるようになって、趣味を以前のように行いたい
- ムセが増えたことで好きな物を食べられなくなり、友達との会食の頻度も減ってしまった
- 気軽に話ができる関係をデイサービスで築きたい
- 入浴を介助してほしい など
このような課題を解決して、質の高い介護福祉サービスを提供するためのカギとなるのが、改正ポイントの一つに含まれる“ITを活用した科学的介護”の推進や業務の効率化です。
『ルネサンス』では、通所介護施設向けの加算取得支援サービス『R-Smart』を提供しております。口腔機能加算を取得するための届出や帳票作成、LIFEと連携した運用管理などのサポートによって、デイサービスの業務効率化を支援いたします。
また、口腔嚥下機能に特化したプログラムの提供と効果測定の実施によって、利用者の満足度の向上を図ります。
デイサービスでR-Smartを導入した事例については、こちらをご覧ください。
まとめ
この記事では、介護報酬改定によるデイサービス施設への影響について以下の内容を解説しました。
- デイサービスの現状
- 2024年度の介護報酬改定による影響
- 2024年度の介護報酬改定における6つの改定ポイント
- 選ばれるデイサービスになるための取り組み
2024年度の介護報酬改定では、介護保険による利用者負担の見直しや介護施設における財務情報の公開などのさまざまな措置が検討されています。
選ばれるデイサービスになるためには、利用者が持つ課題を解消するとともに、ITをうまく活用しながらプログラムの質や施設環境の面で付加価値を創出することが重要です。
『ルネサンス』では、デイサービスを含む介護福祉事業者の加算算定業務や利用者に提供するプログラムの策定などを支援するさまざまなサービス・システムを用意しております。
「職員の不足が深刻化しており、加算算定業務の負担が大きい」「システムやデータを活用して、より質の高い介護福祉サービスを提供したい」とお考えの方は、こちらからサービス内容をご確認ください。